44 東
それにしても珍しい武器を持っている。日本刀だな。となると彼のスキルは大体予想できる。
「ようこそ、サイゴ。紹介しよう、彼はエニス国第3王子ブルウだ」
「サイゴです、よろしくおねがいします」
「兄さん、何度も言っているが僕は自由に生きたいんだ、放っておいてくれないか」
「挨拶くらいはなさい」
渋々こちらに挨拶をするブルウ王子。これは話す前から交渉決裂か!
兄さんも昔はそうだったと必死にブルウ王子を諭すアルベル王子。曲者ではあるが弟には優しいんだな。そう考えるとなんだか心和んだ。
「わかったよ兄さん。でも、少しの間だけだからね」
「それで構わないさ」
こうして10日ほどブルウ王子と組むことに。それから自己紹介を。自己紹介と言ってもほとんどアルベル王子の解説だったけど。ブルウ王子は俺の予想通り「極東」の剣術スキルを使うようだった。簡単に言えば日本刀を使うクラス。ゲームではその国はすでになく、スキルだけが生き残っているという設定、この世界でもそこは同じだった。
「では頼んだよ、サイゴ。それから敬語は使わないようにしたほうが良いな。そのほうが仲良く慣れる」
「はい」
(あー、まったく兄さんときたら。これで何人目の紹介だったっけな。フン、いつものように暴れてさっさとお別れするとしよう)
満面の笑みで送り出すアルベル王子。ふー、こいつは大きな厄介事を背負ってしまったな。まあ、10日我慢すれば良いわけだから。2人でギルドへ。特に話すこともなく、無言で移動。いきなり辛くなってきた。
とりあえずギルドの空いている席に座る。ブルウ王子は周りを見渡している。動き出した。どうやら喧嘩をふっかけにいったようだ。言い争いを始めた。あー、これはわざとだな。もう無……。
あれ? 別にそんなに大したことをやっていない気がするぞ? そうだ、ミア、イリスも似たようなことしていたっけ。うん、いつものこといつものこと。
最近では彼女らも強くなってしまいあまりバトルを売らなくなってしまった。そういったこともあり、むしろ懐かしい光景を見ている気がして、1人うなずいた。
(な、なんだあいつ。まったく動こうとしないし動じない。それどころかもっとやれと言っている気さえする。何という肝が座った、懐の広いやつなんだ。こんなやつ今まで見たことがない。いや、こんなことで折れてどうする。今度は実力行使だ)
喧嘩はギルドの人が出てきて止められた。闘技場で汗を流さないかと提案するブルウ王子。ふむ、「極東」の技、見ておきたい。彼に従い闘技場へ。
彼は刀を俺は杖を持ち向かい合う。
「はじめようか(さっさと気絶させて帰るか。こう見えてエルダードラゴンを1撃で倒せるほどの強さがある、悪いなサイゴ)」
「おう」
徐々に間合いを詰めてくるブルウ王子。なんだか剣術ドラマを見ているようだ。
先に動いたのはブルウ王子。上段に構えた剣を俺に向かって振り下ろしてきた。刀を逆に持っているな。みねうち狙いかな、なんだかんだで優しいところはあるじゃない。いや、それよりも俺のことを知らないのかな?
杖で剣を受け止めた。
「本気でどうぞ」
「なっ」
やはり、俺のことは知らないようだ。その後しばらく彼の技を見る。いいね日本刀、やっぱりカッコいい!
(コイツは一体。化け物か)
宿をとって、食事をすることに。
彼に聞くとやはり俺のことを知らないようだった。隣国ニドウで修行に明け暮れていたと。情報が届いたのはすべてが終わってからだったらしい。
「強いね。それに流儀は? 棍棒術の使い手?」
「魔術士だ」
「冗談だよね?」
彼とはその後、普通に会話をするように。拳と拳をかわして仲良くなったわけだ。男ってのはそういうものだ。翌日、狩りに行こうというのでギルドで依頼を受け街の外へ。
「いくぞ」
近くの森の中を魔物を狩りながら進んでいく。しばらく進むと湖に到着。水が澄んでいて大きな魚が泳いでいる。飲めるということで顔をつけ飲水。うまい。
魚もうまいぞ、冒険しながらこういった場所を探すのが好きなんだ、と王子。
ふむ、良い冒険の楽しみ方だ。彼となら楽しく。いや、落ち着けリク。彼とともに行動ってことは国が関与するってことだ。まま、仕方がない。最終的には断らねばな。
「ところでスクア国はアルベル王子が王になると聞いたけど、エニスは誰が王に? もしかしてブルウ王子が?」
「いや、僕は王にはならないよ。アルベル兄さんの影に隠れがちだけど第2王子のサマトリ兄さんもかなり優秀な人物なんだ」
アルベル王子が何でもできすぎたってわけだ。
ああ、そういえばエニスの国の人達はかなりの人が「アルベル王子が王になる」に賭けていたな。ははは、自分とこの王を賭けの対象になんてしたから天罰が下ったのかも。




