43 棍棒に見えなくもない
黒い翼を持ったローブの男、ルアンについては現在調査中とのこと。行方はわかっていないようだ。本来ならまだまだ復活は先なのだが、不完全ながらもルアンは魔王を蘇らせた。彼は今後最重要人物になると見て世界中に捜索の依頼を飛ばしているとのこと。エツノに色々教えていたようだからな。嘘が多かったようだが。
ここで秘密の話は終わり。王子の部下が部屋の中に戻ってきた。
俺は伝説の剣を持っていることを思い出す。そのことを王子に話すとそれを探していたと目を輝かせながら俺に話した。この剣は神が人間に授けた武器の1つ、とのこと。
王子が行った時、すでに伝説の剣はなく、そこの女店主もいなかった。誰が伝説の剣を持っていったか調べるため女店主を探す王子。だが女店主はすぐに土地を売り、誰にも行き先を告げずその場を去った。各所に多額の借金があり、それも踏み倒して逃げたようだった。そのため家族、親族のところにも連絡はなく。そんなこんなで足取りがつかめず、伝説の剣は行方不明となった。
ここで取り出すとややこしくなりそうなのでこの後持ってくることに。
「ここで見た、聞いたことは秘密にしてくれ、以上だ。それでだ。このまま自由にしてくれても問題は無いんだが出来れば1つ仕事をお願いしたい」
「内容次第ですね」
この王子、正直曲者だ。無理難題をふっかけられたらたまったものではない。もしかしたらこちらが「メイン」の可能性もあるからな、慎重に。
「俺の弟、第3王子のブルウのことなんだが。やんちゃな奴でな。まったく、俺の弟とは思えないくらい」
「アルベル様もやんちゃでしたよ?」
「それは置いておいてだ。良い仲間ができればなと思ってな。良ければかまってやってくれないか」
仲間の冒険者がすかさずアルベル王子につっこみを。でもそうだね、人で人が変わることはよくあること。
そして、やはり。かなり厄介な話を持ってきてくれた。王族の人間と付き合うのなら国に組みしたとほぼ同じだろう。ここは断ろう、そう考えていたが。
「よし! これだけ条件にする」
なんと無茶を。仮面の下では嫌そうな顔をしていたが、それが雰囲気で伝わってしまったかな。
「最悪名前捨てて逃げても後は追わないから! 会うだけあって、お願い!」
あーもう。仕方がない。王子にここまで言われたら断れないな。てか名前捨て逃げはバレているか。
ここは王子の申し出を受けた。
それから一旦宿屋に戻り、大きな袋を用意、そこに伝説の剣とその土台を入れ運んだ。
「そ、そうか。先程聞いたばかりだが実際に土台ごと引き抜いたんだな。そこはいいや。では引き抜いてみようかな!」
柄を握り剣を思いっきり引っ張る王子。
抜けない。
王子も選ばれしものではないのか。王子の仲間たちも挑戦、だが誰も剣を引き抜くことはできなかった。
「残念。昔は駄目だったが、力をつけた今なら抜けるかと思ったんだがな」
強さは関係ないのかな、わからない。俺ももう1回挑戦してみようと剣の柄を握る。
すると、どうにもしっくり来る。これはもしかして。剣から手を離し、もう1度剣を握る。やはり。
「装備、出来ちゃいました」
「えーー!」
周囲の人は皆驚く。がすぐに納得と行った表情を見せた。
「そうだね、よくよく考えなくても、サイゴなら装備してもおかしくはないか」
戦闘時は土台部分を的に殴りつける感じかな。剣と土台部分が合体しているこの状態なら遠くから見れば棍棒に見えなくもない。そういうことで、伝説の剣を貰った。しかし普段使いには目立ちすぎる。とりあえず魔法膜の杖をまた作ってもらおうかな。
5日後またここで会うことを約束し、俺は開放された。王子と別れ店の外へ。そこへナキとリリが。
「ありがとうございました、サイゴさん。あなたがいなければナキは」
「いえいえ」
「これをお受取りください」
大きな袋に何かがいっぱい入っている。なんだろう。中身を見る、全てお金だった。
「なっ、こんなに受け取れないよ」
「いえ、いいんです。またこうして生活できるだけでも夢みたいなもので。それからここから人生が始まるといったスタート地点にしようかと。ですからこれまで稼いだお金は全てサイゴさんに」
見るだけでもわかる。幸せオーラがこちらに漂ってきている。なら無理やり突き返すのは野暮ってものだな。
「わかった、受け取ろう。2人とも、お幸せに」
「はい」
ナキたちと別れ宿屋に戻りリクに着替え、ミアたちを探す。ナキを助けに行く時何も言わずに飛び出していったからな。彼女らはギルドにいた。一言謝り更に厄介事を頼まれたことを伝える。
「待ってるわ、そんなに時間はとらなそうだし」
そして5日後。前回と同じお店へ。
奥の部屋に通される。アルベル王子、隣に男の子、年の頃は15くらいか? その2人が椅子に座って待っていた。この子はアルベル王子が言っていた第3王子かな。




