42 この世界の秘密
「ナキ、君のことは調べさせてもらった。君の罪だが、そうだな。生い立ち、エツノに騙されたとはいえ2人殺しているのは大きいと言えよう。しかしここまでの行動で情状酌量の余地ありとし、今後も国に尽くすのなら今まで通り過ごすことができるようにしよう」
「は、はい。忠誠を誓います」
「あと話は聞いている、自決だけはいけない。罪を背負い生きていくのもまた罪滅ぼしになると思う」
「ありがたきお言葉……」
「よろしい。ではサイゴ、君の件だが、特に問題なく自由だ。できれば国についてもらいたかったが自由が良いといった意見はすでに聞いている。封じ込めはな、この国を救った英雄を縛りつけるわけにはいかない。それとこいつは謝礼だ」
おや、面倒なことになると思ったがそんなことはなかった。それどころかたんまり金の入った金貨袋を頂いた。
流れで国を救ったかたちになったが、これがうまく作用してくれたようだ。確かにそうだな、サイゴはどこ行った? 牢獄! では国民の不信感が募るだろう。
「それから今サイゴが持っている情報はかなり中途半端なはずだ。その情報をもとに国が悪とされ、我々と戦うことになったらたまらない。そこで、国家機密だが話しておこうと思う。これはサイゴだけにな」
サキは帰り、王子の配下も一旦外へ。皆出ていったのを確認して王子は話を始めた。
話は大昔の暗黒時代にまでさかのぼる。暗黒時代とは、7体の魔王と、それを束ねる魔神がこの世界を支配していた時代。当時は人が奴隷、食料として扱われていた、人類にとって地獄のような時代。
これを見た神は嘆き、人々に力を与えた。それがスキルと言われている。さらにいくつかの武器防具を授ける。しかし、長年奴隷生活をしてきた彼らは無気力で、力を手に入れたが動こうとはしなかった、動けなかった。それまで通りされるがままに生きていく人間たち。長くその状態が続いたが、遂に1人の勇者が立ち上がった。
「勇者ああああああ。彼が人々を叱咤激励し立ち上がらせた」
……すごく真面目な顔で語っている。茶化すどころではないな。そうだね、昔は入力4文字までだったらしいね。新しいバージョンのやつかな。
それでも下ネタや、好きな男の子、女の子の名前にしなかっただけでも良かったかもしれない。あ、好きな子の名前ならわからないか。
ある時人間たちは魔王と魔神に反乱を起こした。戦いは人側が優勢で進んでいく。そして、遂には魔神を討ち果たしたのだった。しかし魔神は完全には滅びておらず、いずれ復活すると呪いの言葉を残して消えていった。
このままではまた地獄の日々が戻って来てしまうと人間たちが行く末を憂えていると、神の使いと名乗る者が人間たちの前に現れる。
その者は復活させないようにするのは無理だが復活を先延ばしすることは可能、と人間たちに伝えた。人々は後世が少しでも楽になるのならばとその方法を授かり、実行することにした。
その方法とは、魔王像に「暗黒粒」をためさせないようにすること。暗黒粒とは像にまとわりついていた黒く禍々しい霧のこと。
実際のやり方としては魔王像から出ている暗黒粒を使って魔物を作る、こうやって暗黒粒を無理やり発散させてしまう。さらにある程度魔物を操れる方法も教えてもらった。
世界に散り散りになっておこなったほうが良いと神の使いからの助言を受ける。
魔神を倒した英雄たちは世界各地に飛び、国を興し、魔物を管理することにした。各国の王族全てが魔物の生産、操作が可能とのこと。
現在いる魔物は全て生産した魔物、ではなく自然発生した魔物と半々くらいという王子。それでもかなりの数だ。
これが国家機密、最高峰の機密になっているのは、人を襲い食い殺す魔物を国が生産している、そのことを国の人が知ったらどうなるか。もはや言うまでもあるまい。
ただ、魔物の生産は悪いことばかりでもない。もし平和な世界、魔物が少なく人々が幸せに暮らしている世界で魔王、魔神が復活したら。即刻支配されてしまうだろう。人が魔物と戦うことで力をつけ、いつか復活する魔神たちと対抗できる力を維持し続ける事ができる。これは後付の屁理屈だがな、と王子。世界を裏切り魔物を生産するわけだ、そうとでも考えなければ精神がもたないのだろう。
エニスの国で生産している場所は死霧の渓谷の奥だという。そのため、あの地域には人を近づけないよう様々な手を打ったとのこと。あのアルティメットキマイラもつまりはそういうことだろう。
更に実はモンスターラインと繋がっている。奥地に行くとモンスターラインにたどり着く。モンスターラインの魔物は9割生産した魔物だとか。ふむ、あそこだけ妙に魔物が多いと思ったけど国で管理された魔物だったんだな。
それから兵士たちを生贄にして魔王を復活させたプロセスについて。そんな方法は知らない、知っている知識から考えると人を暗黒粒に変えた? 等色々な考察がされたが結局はわからなかった模様。
王子も知らないことがあるわけだ。




