40 危険な言葉
円の上に溜まった白い霊体のようなモノが黒い霧に変換され像に向かって飛んでいく。それらを像が吸収。どこからともなく鼓動音が聞こえた。像の禍々しさが増したような気がした。
イマイチ状況がつかめないが、エツノとかいう奴は外道だってのはわかった。今まで自分を守ってきた兵たちを生贄に捧げるなんてどういう神経しているんだ。
鉄仮面をとりナキがエツノに怒り声を上げる。
「何をするかは知らんがここで死んでもらうぞ、エツノ!」
「フン、裏切り者のナキか。後で殺そうと思っていたから手間が省けて助かる。フフフ、それに相変わらず物を知らないな。まあ、俺とこのローブの男しか知らないわけだが。いいだろう、冥土の土産に俺が何をやっているか教えてやろう!」
こ、これは! ゲームで敵役になったら言いたくないセリフナンバー1、「冥土の土産に教えてやろう」!
敵役が自分が有利のときに調子に乗って言うセリフ。その後大体の作品で殺されたり、良くて逃げていったりする。アチラ側には最悪のフラグだ。
「暗黒時代の支配者の1人を蘇らせるのだ。しかも私が操れるかたちでな」
「なっ、暗黒時代だと!?」
うーん、わからないことだらけだな。魔物を操る、暗黒時代、その支配者たち。しかし詳しく聞いている時間はなさそうだ。
再度像から鼓動音が聞こえた。今度は連続して。
「さあ甦れ! 魔竜王、「タイラントドラゴン」!」
黒い霧が溢れ出し、像を中心に何かを形作っていく。際限なく霧が湧き出し、この地下を突き破って更に成長。この上は王座があるところかな? 俺たちも天井を突き破り、王座の間へ。
黒い霧から肉体が現れ始める。最終的に巨大で黄金のドラゴンが出来上がる。
ドラゴンは天に向かって大きな咆哮を。空気、地面が振動、城の一部がその咆哮で崩れる。
「はーっはっは! これで貴様らは終わりだ!」
「……失敗だな。タイラントドラゴン様はこんな程度ではない」
ローブの男がつぶやく。失敗?
「そんな馬鹿な、確実に成功すると貴様は言ったではないか!」
「ククク、俺の言うことを真に受けるとは。人が良いことで。さて、これでどれだけ集めればいいかわかったな」
「ぬぐ、それでも強いことには変わらないだろう。コイツラを片付けろ、タイラントドラゴン!」
タイラントは耳をつんざく鳴き声を放つと、城を破壊しながら尻尾を振り回した。
全員飛んでかわす。それから前足の爪でナキを攻撃。高速の斬撃がナキを襲う。一応攻撃を剣で受け直撃は免れたが凄まじい力により吹き飛ばされ、城の入口付近の壁に叩きつけられた。
次に攻撃されたら死ぬな。ナキの元へ駆けつけ、守りの体勢を。
「ハッハー、いいぞ、タイラント! くっくっく、仲良くあの世へ行くが良い! さあやれ!」
タイラントはエツノの指示を聞かずその場に留まりエツノを睨みつけた。「どうした、やれ!」と言われようやく動き出したタイラント。
その爪をエツノの腹部に突き立てた。
「んぐ、な、なぜ!?」
「あーっはっは。操れるってのも嘘に決まっているだろう」
「ルアン、貴様! ぐぁっ!」
上半身と下半身が分断、エツノはそのまま絶命した。嘘と裏切りで上り詰め、嘘と裏切りにより殺される。因果応報ってやつだな。奴の場合はやりすぎて、全く同情はできるところがないが。
「このまま暴れてもらえばかなり集まるかな。放って帰るか」
ローブの男は背中から黒い翼を出し、そのまま飛んでいった。
放っていくのか。しかしとんでもないものを置いていってくれたな。ナキには逃げるように指示を。相手は飛べそうだ。もし逃がすと厄介なことになるな、ここで片をつける。
タイラントが金色でレーザーのような炎を吐く。
通常のドラゴンたちとは比べ物にならない威力だ。地をえぐり、当たれば燃え尽き、そんな炎が街の端まで飛んでいった。これははやく片付けなくてはな。
「ポイズンブラッド」
ガラス窓を割ったような音が辺りに響く。これはまさか。続いてスタンショック、同じく異音が。タイラントは何事もなかったように動いている。
やはり、「完全耐性」か。ゲームでもボスがよく持っているやつだ。となると他のデバフも全部ダメだろうな。一応試すけど。いくつかスキルを放つ。その間もタイラントは大暴れ、レーザーを何発か俺に向かって放ってきた。
「アーマーバニッシュ」
気の抜ける音がタイラントから聞こえた。あ、効いた、この音はアーマーバニッシュがはいった音だ。ゲームでは難しくなりすぎないように抜け道があったりする。今回の場合、タイラントの場合はアーマーバニッシュに耐性なしってところだろうか。しかしよりにもよってここに耐性がなしか。それともローブの奴が失敗と言っていたな、その影響か? 速く片付いてくれるからありがたいけど。
杖に魔力を通し、柔らかくなった頭部へ思い切り杖を叩きつける。手加減なしの本気で。インパクトの瞬間、衝撃波が発生。そしてに光が爆発するような状態に。
少しして周りが見えてきた時、タイラントドラゴンの頭部が吹っ飛んでいるのが見えた。力なく倒れるタイラント。身体は徐々に黒霧となり蒸発、最後に像だけが残った。




