36 イナルーツ奪還作戦
「今から3日後、魔物たちを殲滅、イナルーツを奪還しようと思う。それから叫びの森から魔物の流入を防ぐために森の入口付近にも部隊を送る」
今この場を取り仕切っているのは冒険者集団「星屑の大海団」の団長、ラファンさん。この国に冒険者たちの集団はいくつかあり、その最大派閥がこの団である。
「イナルーツ奪還部隊は我々星屑の大海団の精鋭、リラオガとそのパーティ、サワス兄妹、チナンメンとそのパーティ。それから――」
「覇炎リラオガにエニスの盾チナンメン、有名人はまだまだ居るな、そうそうたる顔ぶれだ」
国にいる強者がかなり集まってきているようだった。まあ、国のピンチだからね。
「それからサイゴ、君もイナルーツ奪還組に。他は叫びの森へ。そちらのリーダーはヴァン、君にお願いする」
「サイゴ! あのシードを倒したという」
どうやら有名になっているようだな、気恥ずかしい。
3日経ち、予定通りイナルーツ奪還作戦を実行。前部隊イナルーツに向かって進行、途中叫びの森に部隊を送る。ミア、イリスは奪還部隊の方に居る。
進行中、魔物はほとんど現れなかった。叫びの森からも魔物が現れそうな様子はなかった。ここまででかなりの数の魔物を倒したから流石に品切れか。移動は順調、そしてイナルーツの街が見えてきた。街の前には多数の魔物が。中にも相当数居るだろうな。
ラファンさんがこちらに近づいてきて小声で話しかけてきた。
(ところでサイゴ君。君の実力を疑うわけではないのだがその、シードとの戦いは誰も見ていないんだ。もちろん2位までの戦いだけでも強いってのはわかるんだけど、よければここでその実力を見せてもらえないだろうか? 正直皆気になっているんだ)
(いいですよ)
(そうかい、頼むよ)
見ていたのはイリスだけだったな。ミアに言ったくらいと話していた。周りに話しても信じてもらえないだろうとも。
ラファンさんが大きく手を振り皆を止める。
「今からサイゴ君が景気づけに一発かましてくれるそうだ!」
「いいぞー!」
「やれやれー!」
歓声が上がる。ふむ、俺の力を見つつ士気も上げる、大きな集団を束ねるだけあってラファンさんはやり手のようだ。
俺だけ前へ進む。どうせなら本気でやろうかな、部隊からかなりの距離をとった。武器を変える、潰してしまう可能性が高いからな。適当な魔物へ向かって石を投げた。命中、「レッドファング」オオカミ型の魔物がこちらに。エルダードラゴンと同じくらいの強さ。おっと3匹も来てしまったか。まあ問題なし。
ラファンさんが「手伝おうか」と声をかけてきたが大丈夫ですと断った。
杖を強く握り、近づいてきたレッドファングに気合の一撃を。衝撃波が発生、地面は大きく陥没、着ている服が吹っ飛び、武器も吹っ飛んでしまった。念のために変えといて良かった。シード戦の頃より威力が上がっているな。1年も修行して成長しているんだ、当然か。
派手にやれたと思う、これなら士気も爆上がりだろう。得意げに後ろを振り返ったが、盛り上がるどころか皆、静まり返っていた。
「隕石でも落としたのかよ……」
やりすぎ、か。頭をかきつつ人目のないところへ行き、着替えを。
着替えを終え皆のところに戻ると、街側から雷が落ちた音が聞こえた。街の中ではないな、こちらとは反対側の外側で。となると。
「今の雷、もしかして雷神カイネか」
「雷神?」
「スクア国の強い冒険者さ」
「雷を連発している、雷神カイネで間違いないだろう。それからスクア国の有志たちも集まっている。今のが引き金になり攻撃を開始したようだ」
飛べる人たちが空から確認、降りてきて俺たちに伝えた。
「よし行くぞ野郎ども! まずは街の前にいる魔物共を片付けるぞ!」
街の前の魔物に向かって、全員突撃。魔物は大量にいるが、こちらの攻撃でみるみるその数を減らしていった。
戦闘をしながらラファンさんに中の様子を見てきてもらえるかと頼まれた。俺はこれを承諾、ここの魔物は彼らに任せ街へと走っていった。
魔物の襲撃を受けたからだろう、街は荒れていた。街の門は半壊、簡単に侵入できた。次々と湧くように現れる魔物を倒し街を一望できる場所を探す。今の所人の死体は無い。避難はうまくいったのだろう。
魔物は情報通りオーガドラゴンクラスが何体も、しかしそれだけではなくその1段上の魔物まで数体いるようだった。
高い塔のようなものが遠くに見えた。それに登って周りを見渡そうと塔に近づく俺。
急に地響きが鳴り響き、同時に塔が動き出した。塔だと思っていたそれは魔物の「アイロンジャイアント」。金属でできた魔物、ゴーレムに近い形状かな。そしてデカイ。
アルティメットキマイラクラスの強敵だ。思っていた、聞いていた以上に厄介な状況だった。




