30 死霧の渓谷
「私も地元に、と言いたいところだけど遠いからね。また後かな」
「これからどうしようか」
「モンスターラインより強い魔物が住む場所でさらなる強化を考えているわ。この国だと1箇所知っている。「死霧の渓谷」ってところなんだけど、そこの調査をしたいわね。それから他にもそういった場所がないか探してみましょ」
死霧の渓谷はエルダードラゴンよりも強い魔物が出現するという。強いという以外はどんな魔物が出るかは不明。
酸の霧、火山活動による有毒ガスが絶えず蔓延していて狩場までの道のりが非常に険しいようだ。他の場所はとりあえず情報屋からでも聞いてみようという話になった。
まずはアクリミガにいる情報屋と話を。何人か当たって、有益そうな情報を持つ人にあたった。お金を渡し、彼から情報を。
「死霧の渓谷は正に「死の霧」が立ち込めていて、正規の道では狩場にはいけないだろう。直接行ける抜け道があるようだが国家機密で教えてくれないようだ。国が管理している土地だから無理に侵入した場合は捕まるだろうな。それからそうだな、モンスターライン以上となると俺が知っているところでは「精霊の大樹」ってのがある」
精霊の大樹は、地図で見てこの国の真ん中あたり、森に囲まれたところにあるという。かなり巨大な木で、その大きさは雲に届いているとも。
しかし、この国に来てそんなに大きな木は見たことがない。そこまで大きいのなら天気が良かったりした日は見えるのでは? と率直な疑問を投げかけると、精霊の力を使って見えないように細工をしているのでは、詳しく知りたければ現地に行けと言われた。
情報を得た俺たちは、近い方、死霧の渓谷へ向かうことにした。渓谷は前に落ち合った川の街、ファインから近い。
アクリミガの街を出発、馬車に揺られること2日、ファインの街に到着。そこから川を超え、一泊。一応情報収集をしてみたがあの情報屋以上の情報は得られなかった。
朝になり死霧の渓谷への行き方を探す。そこへは馬車が通っていないようで、徒歩で行くことに。
キャンプしながら3日、立派な隧道、トンネルが見えてきた。その前には数人の兵士が、近くには兵士が住んでいると思われる建物、それから馬車があった。国の馬車だな。
「冒険者かな。渓谷の狩場へ行きたいと?」
「はい」
「先にこれだけは言っておく。狩場への侵入は国で禁止している。もしたどり着いたとしても罪となる。では、少し待て」
そう言うと兵士は倉庫へ入っていった。
戻っできた兵士は大きなランタンを荷車に積んで運んできた。特殊な作りで、外部の空気に触れない構造になっているらしい。
「トンネルの中は火気厳禁だ。それから布で鼻、口を覆っておけ。では行こうか」
すんなり通れるとは意外だった。しかも兵士さんの案内付き。話を聞いた所、昔は厳しく通行止めにしていたが、稀に無理矢理通ろうとする者たちがいた。そして出口付近、死霧の渓谷では火をつけていると爆発するらしい。松明、ランタンを持ってトンネルを進んだ者たちの運命は……。
それなら実際見れば諦めもつくし、兵士も安全だろう、ということで狩場目当ての者は案内することになっているとか。途中、変な匂いが。これが可燃性のガスなのだろうな。
トンネルの奥から明かりが見えてきた。進んでトンネルを抜ける。防柵がありそこから先へは進めないようになっていた。その上には屋根が。そして、そこの光景は霧のみ。これしか見えない。
兵士の1人が魔物の死骸を長い棒の先端に突き刺し霧の中へ。少ししてこちらに戻すと、すごい悪臭を放ちながら少しづつ溶けていっている魔物の死骸が。
これで火も使えないわけか。ここから狩場へ行くのは無理そうだな。トンネルの入口へと戻る。
「どうだい? 危険なのはわかったろう。無理に行こうとはしないことだ」
「隠し通路があると聞きましたが」
「我々は知らない。だが例えあったとしてもその狩場は国の土地。先程も言ったように無理矢理行ってたどり着いたところで罪となる。そうだな、国のお偉いさんならなんとかしてくれるかもしれないがその人達と会話するのがまず大変だな。現実的なのはその知り合いから攻めるとかかね。いずれにせよ今すぐ狩場へはいけないだろうよ」
うーん、お偉いさんに口通しができそうな知り合いか。そうだな、ギマさん、ツルギさんなら何とかしてもらえるかも。あーでもややこしくなりそうだな。
とりあえず距離的に精霊の大樹の方が近いから先にそちらへ行くとしよう。死霧の渓谷の件は一旦保留に。
兵士と別れ、ファインの街へ戻った。そこから馬車で精霊の大樹が近くにあると言う話の「ナイゾラ」の村へ向かった。




