29 イリス
男の子が帰り、俺たちは街の中を歩く。会話をしながら歩いていると、「この家だ」と彼女は1件の家に入っていった。
どうやら彼女の生家らしい。中には男性1人、女性1人、イリスの親御さんかな。
「父さん母さんただいま」
「おかえり、久しぶりだね。おや、そちらの方は」
「旅仲間のリクだ」
俺は2人に挨拶をした。優しい笑顔で返してくれる2人。当然、家の中でも武器防具は装着していた。うんうん、わかるよ。
イリスはミアとしばしのお別れをしていると説明した。家族としばらくお話を。
「今夜はここに?」
「ああ。それから長のところへ行ってくる」
「わかった。行ってらっしゃい」
家を出て街へ。街を眺めながら歩いていると他の家よりも立派な建物が見えてきた。どうやらそこに長、この街を治める人が住んでいるようだ。建物の中に入り奥に行くと王座に座っている人が俺たちを迎えてくれた。
「イリスか。久しいな」
「今の長はノクレスか」
「3日前になったばかりだがな」
1番強い者がここの長になるとのこと。有翼人族らしい。権力はほとんどなく、少々の給金と名誉だけとか。
それからこの国がなぜ戦闘種族になったのかを教えてくれた。
とにかく力が弱い、種族が抱える悩みを打破すべく、大昔の有翼人族の人が常に戦いの場所に身を置くようにしたらしい。こうして今の文化が形成されたようだ。力が弱いのは克服できなかったがそれを補って余りある技術等を手に入れたため、ずっとこの方針を貫いている、という話を聞かせてもらった。
僻地に住んでいるのは大昔から、文献等もなく、なぜここに暮らしていたかはわからないらしい。長ノクレスの考えとしては、弱かったから逃げてきたのではという話を。
「腕を上げたろう? どうだ、勝負するか」
「まだ旅の途中でな。またいつか」
「そいつは残念だ」
とは言ってもそこは有翼人族、長の座ををかけないという条件で戦いがおこなわれることになった。結果はイリスの勝利。大きな歓声がイリスたちにおくられた。
戦いが終わり俺たちはイリスの生家へ。
丁度夕時、食事を振る舞ってくれた。バーベキューのようにして食べる食事はとても美味しかった。
「今日はいい天気だね。星が綺麗だ」
「そうだ、私のお気に入りの場所にいかないか。とても景色が良いところなんだ」
食後彼女と共に山へ。
イリスおすすめの場所は、星空とイエタルの夜景を楽しめるとても素晴らしい場所だった。
「始めはイエタルの長になるために強くなる、それが旅の目的だった。だからモンスターラインを旅の終着点と考えていたのだが。旅が楽しくてね。それにもっと強くなるという欲が出てきた」
「そうか」
「これからもよろしく」
そう言ってこちらを向いた彼女は、いつも見せる精悍な顔つきではなく、とても楽しそうで、子供のように無邪気な表情をしていた。
「もちろん」
それからこの街で10日ほど過ごす。
「ミアのところへ行こうか」
移動日数を考えるとそろそろかな。俺たちは街を出てアクリミガへ向かった。
途中エステンの街に寄る。兵士が多いが住民たちは普通の生活を送っているようだった。むしろ人が増えたことにより商売が盛んになったようだ。商魂たくましい。
イエタルから出発して20日、アクリミガの街に到着。早速ミアを探しに100位以内の街へ。街をうろつきながら探したがなかなか見つからない。闘技場の方にもいないようだ。更に街をさまよってミアを探していると、後ろから声をかけられた。
「来てたのね、2人とも」
挨拶を交わし、今の状況を聞く。
現在1位、2回1位を取った、次回審査は3日後、最近は誰も戦ってくれなくなったと言うミア。チャンピオンファイトの挑戦権はほぼ確実に手に入りそうだ。
「では私も参加するとしよう」
会話後、イリスは受付へと向かった。俺もイリスと一緒に受付へ。
手続きをして、次回審査の日に復帰が決まった。前回の順位からスタート、最初の10日間は仮復帰という形で参加することになる。通常通りだが適正ではないとみなされた場合は順位が落とされるとこがあるようだ。適正、それ以上の実力であっても順位が上がることはないらしい。途中参加だから多少のペナルティのようなもの、と受付の人は説明していた。
その後、ミアは無事に挑戦権を手に入れた。そして入れ替わるようにイリスが復帰。順位を落とされることはなく、そのままの順位で。
100の街でミアと合流。とても嬉しそうにしていた。
「やったわ。1位よ!」
「おめでとう」




