28 有翼人族
一夜明けミアと別れ、俺たちはイリスの故郷へ向かうことに。
イリスの故郷は俺が最初に訪れた街、ランクスから比較的近いという話を聞いた。ランクスに寄っていく聞かれたが、ギマさんたちは冒険者をやめさせようとしてたしな。なんとなく気まずいし、まだ俺の強さは隠しておいたほうがいいだろう、ということで行くのはやめておいた。
モンスターラインに居るときは、人目につくところではおとなしくしていた。俺の強さはバレていないはず。やれやれ、訳ありだから色々面倒だな。
馬車がランクスの街を通り過ぎていく。またいつか。
それにしてもあれからもう1年以上過ぎているのか。ここまで生き残っているし、なんとかなって良かった。
仲間にも恵まれているな。彼女たちには感謝の気持ちでいっぱいだ。
「ランクスか。出会ってから、あれから1年以上経つんだな」
「そうだな。これまで非常に充実した毎日を送れている。バトルタウンで腕試し、自分の現在の力を知ってからロマロだ要塞で修行。強いて言えば、馬車旅は動けないから少々退屈だ。まあ、リクが居るから楽しくはあるが」
「ここで動き回るわけにはいかないしな」
イリスらしい。
ロマロダ要塞を出発してから17日、後方に山脈を連ねる街、エイロワタに到着。宿を取り、街に繰り出す。鉱山が近くにあるらしく、鉱石を運ぶ人達の姿が多々見えた。鍛冶場も多いのかな、金属を叩く音があちらこちらから聞こえてくる。
イリスが地図を出し、これから向かう場所を指し示した。
「道がないように見えるけど」
「道はない。ここから先は山と崖だらけだ」
その方向を見る。山、山、山。ミアでも行けたし俺でもいけるだろうとイリスが言う。ステータス的には問題ないと思うけど。実際の実力だったら無理だろうな。
「俺を持ち上げて飛んでいくのは無理だよな?」
「無理だな。スキルで軽く出来る重量を超えてしまう」
彼女はかなり特殊なスキルを持っている。「ウエイトミッシング」、これは自分の体重を約10分の1まで減らしてしまうスキル。手持ちのアイテムと装備もある程度の重量までは軽く出来る。いつでも使えて、消費SP0というかなり特殊なスキル。
人でも軽ければ運べるようだ。例えば赤ちゃんなんかは運ぶことが出来ると言っていた。俺は重量オーバーで運べない。
そして飛ぶスキル「スカイブレード」。翼から魔力を放出し飛ぶスキル。このスキルは常にSPを消費する。だから局部鎧とは非常に相性が悪い。ミアもSP少なめだし、2人共常用は厳しいだろうな。
登山用にいくつかアイテムを購入。急勾配になっているところで岩に突き刺しながら進むアイテムだ。
「出発は明日にしよう」
一夜明け、街から出発。少しして山に突きあたった。登山開始。
最初のうちは緩やかな坂だったが徐々に傾斜がきつくなり、今ではほぼ垂直、ひどいときには岩がこちらに突き出していたりする。まあ、ステータスが高いから無理矢理進めるけど。登り方は簡単、右手で道具を岩に突き刺す、身体を引っ張り上げて今度は左手の道具を岩に突き刺す。これを繰り返すだけ。
しばらく進み、水場に到着。少し休憩を取る。
「これなら予定よりもはやく着きそうだ」
水を飲んでいると魔物が現れた。イリスは武器を取り戦闘態勢をとる。
「スティングレイン」
こちらに向かって飛んできた魔物を、連続して突きをおこなう剣術スキルで迎撃。
彼女はオーソドックスな剣技を扱う。それから他有翼人族が持つ独特なスキルをいくつか持っている。
「今日の晩御飯ができたな」
そのままここでキャンプをすることにした。先程魔物を調理して食す。
街を出発してから7日、大きな盆地が見えてきた。そしてそこには街が。
「あれが私達有翼人族が住む街、イエタルだ」
かなりの規模だ。セブンエデンの半分くらいあるだろうか。
険しい山中、急に文明的な街が見えてくるとは、なかなかに不思議な光景であった。有翼人族と思われる人たちが空から街へ自由に出入りしている。これまた幻想的な光景だった。
街に到着。他の街とは少々格好が違う。「違う」ではないか。皆武器防具を所持している。
「これが私達の街の私服さ。何かと争っているからこの格好ということではない」
さすが戦闘種族。街に入って一言目からか少し不安な気持ちにさせてくれる。
それからどうにもこの街に入ってから、住人たちの視線を感じていた。
「強いかな」
「あいつ強いだろうか」
強いかどうか値踏みしているようだ。イリスはそれに気がついたのか、住人たちに向かって何やらジェスチャーをおくり始めた。住人はそれを見て納得したのか、普段の生活、行動に戻る。
「皆リクが強いかどうか気になっていたようだな。訳ありだから誰とも戦わないと伝えておいた」
そうだな。イリスたちは新しい街に行くたびに喧嘩を売ってまわっていたんだ。ここの住人も同じなわけだな。
ははは、もう慣れたもの。いつもイリスたちの行動を見ていたからな。
「おねーちゃーん!」
イリスを知っている子だろうか。7歳くらいの少年がこちらに駆け寄ってきた。この子も剣と盾を所持。
武器防具を所持していると言ってもそこは子供、可愛いものだ。
少年はある程度近づいたところで地面の砂を蹴り上げ、イリスに浴びせかけた。
「もらった!」
彼女に向かって鋭い突きを放つ少年。これを軽くいなし、優しく頭を撫でるイリス。
「いい目つぶしだ、それに強くなった。が、まだまだだな」
「おねーちゃん強ーい!」
俺は2人のやりとりを真顔で眺めていた。




