第90話『ちっさくなっちゃった』
気付いたら5年経ってましたw
仕事が忙しくなり、体を壊し、入院から自宅療養へ。そこでアニメが終わった艦隊これくしょんの騒ぎに、どれどれとブラウザゲームに手を出したのが運のつき。すっかりお話を書くパターンから、生活のリズムが狂ってしまいました><
今回のシーンは、前回に書いた後に書きかけていたものを、全部書き直したものです。
以前は、仕事から帰り、寝て、起きてから会社へ行くまでの時間を使って無理無理1話分を「女勇者」と合わせて毎日1話投稿していたもので、今読み返してみると文体も荒く、読まれる方の事を余り考えていなかったなあ~と反省しています。
今はリハビリがてらパートをしていますが、そろそろフルタイムで働いてみようかと動き出した所。
生活のパターンが変わると、またペースが掴めるまで時間がかかるかも知れません。
これからは無理しないで、てきと~なペースでいこうかな?
それにしても、今はスマフォのゲームが忙しいのですが><;
全身から何かがすーっと抜けていき、眩暈の様に世界がくらくらと揺れ動いた。
アーリアは、先ほどまで深く暗かった群青の空が、今正に鮮やかな朱や金色の輝きに染め上げられつつあるのと、滑稽なまでに取り乱したオーク鬼達が、小さな悲鳴を上げ、てんでばらばらに木々や藪の間を駆け抜けて行く様を一枚絵に眺めながら、ああ魔法が解けるのかと思った。
「ふふ・・・」
すうっと吸い込む朝の冷気が、まるで違って思える。それ位に新鮮さが鮮烈だった。
それに伴い、視界が、視点が徐々に下へと下がっていく。
魔法が解けて、小さくなっていくのだ。
同時に、背後にある村の外壁からの、人々の熱気が、その圧が急激に膨らんで行く。否、アーリアの耳が、背が、縮まっただけの事。
これはびっくり。
人々の雄叫びがわんと響きアーリアの背を叩いた。そして大勢の足音が、まるで地響きの様にアーリアの体を大地から揺さぶるのだ。
「こ、これはヤバイのでは~」
変な顔をしている。その自覚があった。
一応、うら若い乙女なので、どんな顔で振り向こうかとの迷いを、迫り来る気配らは一瞬で刈り取った。
暴風の如き人の波が、いや肉の塊がアーリアの肉体を混沌の渦へと放り込んだのだ。
「うにゃあああああっ!!?」
「うおお「あんだ「すげえよ!!」ってば!!」わ「んだって「あああああ!!!」はははは「わっしょい!! わっしょい!!」っしょい!!!」いっ!!!!」
たちまち空を舞うアーリア。
落ちるや人々の腕がそれを受け止め、再度空へと放り上げた。
こうなると、手足からしてどう動けばいいのか判らないから、端から見るとまるでボロ人形の様。
(止めて止めて止めてぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!)
さしもの鍛えた喉も、この時ばかりはアーリアの心の声を反映せず、あられもない悲鳴を漏らすのみ。
「わーい、楽しー♪」
そんな上空を、シルフーはにこにこと回遊していた。
◇
アーリア、守った村人に良い様にされてしまうの図。エロじゃないよ!
◇
「おい・・・」
「ん?」
開放された村の門扉を前に、ロイとグルドがその光景を遠目に眺めていた。
「良いのかよ?」
「大丈夫大丈夫・・・だと思うが、そろそろ助けに行くか・・・」
ロイの問いかけにやれやれと、首をコキリと鳴らして歩みだすグルド。その足元には、オーク鬼達が投げ捨てて行った武具が、所狭しと転がっている。
「ちっ、この分じゃハイそれではと村を出て行く訳には行かねえだろ?」
旅を急ぐ二人にとって、これは忌々しい事だ。この分だと、何日も引き留められる危険性がある。それは御免だ。
短く舌打ち。ロイはその内の一つを手に取ってはバランスを見た。
柄は粗末にぼろ布が巻かれ、何かの脂でべたべたしていて嫌な匂いがする。それはロイが使う小剣と同じくらいのサイズだが、刀身は刃こぼれや錆も酷く見るからに切れ味も悪そうだ。
「ひでえ拵えの武器だぜ・・・おいっ、お前ら! 下手にべたべた触ってると、変な病気が移るぞっ!」
その声にびくっと振り返ったのは、両腕いっぱい手に取れるだけの武器防具を抱きかかえた二人の少年。ジミーとアルだった。
がしゃがしゃん。
慌てて取り落とした武具が跳ね、飛び退く二人はばつの悪そうな顔でロイの事を見返した。
「でもさあ~・・・」
そんな二人の足元に、小さな歓声を上げ村の女や子供達がサッと飛びついては取り合いになる。
「あ~あ・・・」
さもがっかりするジミーと、軽く肩を竦めるアル。
「仕方ないよ」
そう言って、アルはジミーの肩をぽんぽんと叩いて慰めた。少し嬉しそうに。
「ジミー、がっつくんじゃねえ・・・質の悪い武器を使ってると、変なくせが付くぜ」
手にした小剣をぽいと捨て、ロイはジミーの元へと歩み寄った。
「お前にはあの短剣があるだろ? 先ずはあれを自分のものにしろ。自分の指先と同じくらい扱える様になってみろ。次はそれからだ。判るな?」
次・・・それは殺しのテクニックの事だ。ジミーは、その事を思い小さく身を震わせた。
それでも、アーリアを守る為には、覚えなきゃいけない事だ。生きて行くには覚えなきゃいけない事だ。だがしかし、ロイが目指しているものはそれと少し違う気がしてならなかった。
「・・・判った・・・」
ロイのプレッシャーに押し負けまいと、ぐっと見上げ返すジミー。その眼を、じっと見据えるロイ。アルはそんな二人を、一歩下がった位置で少し楽しそうに眺める。
数日前、アーリアはオーク鬼をジミーの目の前で殺してみせた。それはいつかはと覚悟していた事だったが、ロイやグルドと合流してから、そんなに日が経ってはいない。むしろ、二人が合流した時から、決定的に何かが変わってしまったのだ。
伊達にジミーもスラムで生まれ育った訳じゃない。ある日を境に、人は変わってしまうものだ。突然おかしくなってしまう者も少なくない。むしろ、まだ全然良い。
アーリアのジミーに対する態度は何ら変わらなかった。一足飛びにグルドが飛び越えてしまっただけの筈だった。
元々、姐さんはそういう事が躊躇無く出来る人だったのかも知れない。
俺も、いざとなったら・・・
ジミーはそっと懐の短剣に指を這わせた。
ひやり、冷たい柄の感触が指先に。
「俺は・・・」
「あっ!? ようやく引き返して来たよ!」
ぽんとアルに肩を叩かれ、ジミーはようやくこの緊張感から解き放たれた。
「ちっ・・・まったくデレデレしちまいやがって・・・」
忌々しく、ロイは戻ってくる二人を睨む。
それは大柄なグルドに軽々とお姫様だっこされ、涙や涎の跡が変な風に残りながらも笑顔で笑い合い、まるで村人全員から祝福されているかのアーリア達であった。
「あ~あ・・・ぞろぞろと・・・こりゃ、今夜はここで宴会だな・・・」
さも頭が痛いと顔をしかめて頭に手をやるロイは、天を仰ぐ。
そこには、不思議生物であるシルフーが、巨大な空気袋を膨らませ、楽しそうに泳いでいた。




