第53話『危ない西部戦線異常ありにほえろ』
広場から離れ、街のスラムに拠点を置いた丘小人達、お祭り巡礼隊のメンバーは、そのいのしし型戦車を中心にテントを張り、明日の決闘へ向けた作戦行動に移っていた。
所々に見張りを置き、無関係の者を近付けない様にしているが、人々の好奇の目はこれを遠巻きにしている。
すると。
「どいたどいたどいたーっ!!」
人垣を割って、次々飛び出す丘小人達。一直線に本陣であるいのししの元へ。
「ダンチョー!! ガダルの野郎共のヤサが割れましたぜ!!」
二十名からの丘小人達が、一斉にその声の方を向く。その中央に、ダンチョーの姿があった。
「そうか! で、どこだ?」
慌しく駆け込んだ丘小人の一人が、羊皮紙に描かれた街の簡易的な地図の一点を指差す。
「街の西部! 笑う大釜亭の裏でさあ!」
「どんな店だ?」
もう一人が間に飛び込み、さも得意気に大げさな身振り手振りで答えた。
「とんでもねえ要塞みてぇな店だったぜ!! 何でもノームのやり手ババアと大男が経営してるらしく、もともと連中の定宿になってるってぇ~話だ!!」
「しかもその地下には、大滑車であの馬鹿でっかい戦車が上り下りする大部屋がある!!」
「連中、よっぽど悔しかったんだろうさ。もしかしたら、あの掘削機・・・ダンチョー、もしかしたらこの街は・・・」
二人、三人と台詞を継ぐ様に、割って入る。
これに、ダンチョーは眉間に深いしわを刻み、眼光鋭く、短く頷いた。
「おそらく、この街自体が奴らの罠・・・」
ダンチョーの言葉に、丘小人達に戦慄が走る。
「他にも出口らしき場所が無いか探ります! おい、行くぞ!」
「手分けして探そう!」
「二人一組だ! エリアを割り当てるぞ!」
ガタガタと一斉に動き出す丘小人達。
声高に地図を指差しては飛び出していく。
そんな騒ぎの渦中にあって、ダンチョーは変わらぬ表情で、腕を組んだまま、ただ街の地図をじぃっと睨む。
急激に小人達はいなくなり、それまで立ち込めていた熱気が嘘の様にひいていく。
カタリ。
「ダンチョーさん。まだ何か気になる事でも?」
その手元に、銅のカップを置いたハーリー老人が、のんびりとした口調で尋ねた。
「いや。ハーリーさん。まだあのびかびかした、ルーとか言う男達の行方がな・・・」
「また、消えてしまったと・・・」
小さく頷くダンチョー。
「ガダルの動機は良く判る。どうやら、この何年ものあいだ、うちの隊とこの祭りで争い、煮え湯を飲まされて来たと言う事です。去年などは、キャタピラに横から木を突っ込まれ、動けなくなった所を横からラムで・・・」
バチンと左の掌に、右の拳をぶつけて見せた。
「なるほど・・・それで今回は、あんな大きな車輪で・・・しかし、あれだと重心が高くなって横転しやすくなるのでは?」
「その点、あのドリルの大仕掛けです。おそらく相当重い筈。だから・・・」
「ふ~む・・・相当の大喰らい。じゃから早々に引き上げて見せたと?」
ハーリーの回答に、我が意を得たりとダンチョーは更に頷いて見せた。
「マシンの方も、相当腹が減ったんでしょう。もしかしたら、実戦では複数台用意して、入れ代わり立ち代わり。なんて事をやって来るかも知れません」
「それは卑怯ですなぁ~・・・」
「しかし、こっちも1台同士で決闘だとは言ってません」
妙な間があいた。
「それは~・・・あの人間にも言える事ですな。まぁ、あんなに派手な物は、そうそう何台も用意出来るとは思えませんが」
そこで、ダンチョーは話の筋を変えた。
「問題は、動機です」
「因縁は無いと・・・」
「ありません。連中は、この街の人間では無いらしい。一体、何者なのか・・・」
ここで、ようやくハーリーはダンチョーのカップに、ワインを注いだ。
「ありがとう」
「いえいえ・・・それにしても弱りましたなぁ~・・・どちらも敵視している様ではありましたが・・・」
「あれは性質の悪い人買いだそうですよ。つまりは、奴隷商人・・・しかもよそ者!」
ひょいと、ハーリーが注いだばかりのカップを、横からかっさらい、ホークはそれを美味そうに飲み干した。
「ご馳走様」
「ああ・・・それは・・・」
そう言い掛けて、空のカップを受け取ったハーリーに、ダンチョーは苦笑いで首を横に振った。
「良いんです。それより何か判ったのか? ホーク」
「いえね」
頭を少し掻きながら、ニヒルな笑いを浮かべるホーク。
「聞いた話なんですけどね。決闘の前に、処刑される凶悪犯が何人か居るらしい。この中に、うまく逃がしたい奴がいるんじゃないかと思いましてね。そこで確かめに、俺達は砦の牢屋にしのんでみようと思うんですが・・・」
「なるほど。山小人と丘小人の因縁を利用して、騒ぎを起こした隙に、街から脱出か・・・」
「ありそうな話ですね?」
「ここまで盛り上がっては、兵士もおいそれと手出し出来ない・・・」
ダンチョーとハーリーは、二人してホークの話にうんうんと頷く。
「うわ~、凄い悪党」
「でたらめもイーとこ」
アーリアとシルフーは、そんなホークを、少し離れた所から、めんたままん丸にして眺めてた。
そして、そんな二人の後ろで、吟遊詩人のルイスはにこやかに。
「いえいえ。なかなかに面白いストーリー仕立てじゃないですか?」
「そうかな~?」
「ネ~・・・」
二人して目を合わせ、変な顔をしてると、意気揚々とホークが戻ってくるのであった。
「よっ! お・ま・た・せ!」
バッチリさ!とばかりに右手の親指と人差し指でOKサイン。
軽くウィンクなんかして見せるホークだった。
ここまで読んで戴き、ありがとうございます
今回は、ちょっと刑事ドラマっぽくまとめてみました
タイトルからも判る様に、アレがアレでアレアレアレレです(笑)
この度、52話目にして初めて感想を戴きました
TRPGシステムに関するちょっとしたお話だったのですがとても嬉しく思いました
宜しければ、お気付きの点などございましたら、お気軽にお声かけ戴ければ幸いです
引き続き「アーリア」にてお付き合い願えます様、宜しくお願い申し上げます




