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追放賢者ジーンの、知識チート開拓記  作者: あけちともあき
第三部 王都で騒動

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67話 王都への旅路、再び

「やあやあ、お待ちしておりましたよビブリオス卿!」


 相変わらず、全体的にひょろりとした、のっぺり顔な騎士イールスが駆け寄ってきた。

 そしてまた、息が上がってしばらく喋れなくなる。


「いや、王都にいると、あまり体を動かす機会がありませんのでね。馬上なら幾らでもいられるが、自分の足で歩くとなるとこれです」


「ああ。無理に話さなくていい。お待たせしてしまったね」


「お気になさらず! ここまでの片道で半月掛かっているのです。今更、数日ばかり増えたところで陛下も気にされますまい。して、こちらの方々が今回同道されるので?」


「そうなる。紹介しよう。私の第一の家臣であるナオ」


「どうもです!」


 ナオを紹介すると、イールスは首を傾げた。


「……奥様ではないので?」


「みょ!?」


 ナオが妙な声を上げた。


「ナオが私の妻だと、どうして思ったのかな」


「王都では、既にそういう評判ですよ。ホムンクルスに命を与え、人に変えた辺境賢者ジーンは、彼女を妻に娶って魔境のワイルドエルフと結び、未踏の大地に新たな領地を作り上げた、と」


「大仰に過ぎる。私がやったことなど、ほんの僅かだよ。せいぜい、マルコシアスの脅威を森から取り除き、現れた神を倒しただけだ」


「それは僅かとは言いませんな! ともかく、ナオ嬢は国ではそのような目で見られております。それに、賢者の塔から彼女への、いらぬ手出しを防ぐため、立場の上でも騎士爵夫人としておくことは、利点しか無いかと思いますが?」


 イールスの言葉を受けて、私は唸った。

 なるほど、ぐうの音も出ないほどの正論だ。

 よくよく考えれば、ナオを妻の位置に置いて、私が困ることは一切無い。

 問題は、彼女の心情であろう。


「どうかね、ナオ」


「どどど、どうって何がですか先輩」


「ふむ。イールス卿。ありがたい話だが、私にとってもナオにとっても、寝耳に水の提案だ。前向きに善処するとして、この場は棚上げさせてもらいたい」


「そ、そ、そうですね。先輩って呼べなくなっちゃうし」


 ナオがこくこくと頷く。

 すると、後ろで女性陣の溜め息が聞こえた。

 なんだ……?


「話を続けよう。次に、ワイルドエルフのトーガとシーア。我が開拓地の相談役として、とても頼りにさせてもらっている」


「また人間の村に行くのか。臭くてかなわん」


「今度はちゃんと、エルフ向きの食事を用意しておいてよね。人間の餌は下品でだめ」


 極めて人当たりが悪い、エルフ兄妹。

 この開拓地の者以外には、このような対応である。彼らの歴史を思えば仕方あるまい。

 イールスは、引きつり笑いをしている。


「そして、ダークドワーフのオブ。ファイアリザードマンのクロクロ」


「よろしくのう! 人間の里に行くのか。何か新しい物を作るためのインスピレーションが得られるといいのう!」


「人間の巣にハ、クロクロや炎の部族ではなイ、別のリザードマンもいるそうだナ。楽しみにしていル」


 白髪に白い肌、目玉ばかりがぎらぎら輝く異相のドワーフと、巨体に炎のごとく赤く輝く鱗のリザードマン。

 イールスは圧倒され、後退る。


「以上の人員で……」


「待った! 兄貴、あたしも行くから! ほら、人手が足りなくなったりしそうだろ? 人里慣れしてるのが、実質兄貴一人じゃん」


 アマーリアが飛び出してきた。

 言われてみればそうだ。ナオは賢者の塔を出てすぐ、この開拓地にやって来た。

 他は人間嫌いのワイルドエルフに、地底世界の住人たちである。

 アマーリアの申し出はありがたい。


「よし、私からも同行を頼んでいいだろうか、アマーリア」


「もちろん! 地底ではあんま大したことできなかったけど、役立つってところ見せてやるよ!」


「ということで、以上の七名だ」


「は、はい。凄い顔ぶれですなあ……」


「誰一人として欠かす事ができぬ仲間たちだよ。ところで問題があってだね。この人数を乗せられる乗り物が無い」


「ああ……。私が乗ってきた馬車も、せいぜいあと三人ですし」


 ここに来て、問題が発生か。さて、どうしたものか……。


「簡単ですよ先輩!」


「そうじゃ。わしらに任せよ!」


 ナオとオブが、並んで胸を張る。


「君たち二人が……。そうか!! 作るのだね!?」


「その通りです!」


「その通りじゃ!」


 そう、ここは開拓地なのである。

 足りないものや、無いものは、作ってしまえばいいのだ。

 以前はそれを可能とする技術者が、ナオしかいなかった。

 今は、ダークドワーフがいる。ドワーフのボルボの手も借りようではないか。


「イールス卿、あと一日待ってくれたまえ。馬車を仕上げる」


「そ、それは構いませんがね……」


「よし、作業開始だ! ……ということは、あと一日レイアスを調査する余裕があるということだな……。ちょっと行ってきていいかね」


「先輩だめです!! オブさんはこっちのお手伝いなので、ドワーフの通り道はありませんから! あと、イールスさんと色々相談とかすることあるでしょ!」


「ぐぬぬ」


 ナオがしっかりしている……!?

 私は大変な衝撃を受けた。

 かくして、空いた一日で地底世界を調査に行く事は叶わず、私は王都への旅路の計画を立てることになったのである。


 ダークドワーフとドワーフは、驚くべき速度で意気投合し、建築談義を交わし始めた。

 そこに平然とホムンクルスの娘が混じり、大人数を運搬できる馬車の作成を話し合う。

 家を増やすために置いてあった、予備の建材も潤沢にある。

 この三名が角を突き合わせ、設計図をあっという間に書き上げていく。


「意見のぶつかり合いなどは無いのかね?」


「みんな専門分野が違いますから。わたしが建築、オブさんは細工や道具作り、ボルボさんは広く浅くなので」


 全体の設計図をナオが作り、これをオブが細部においてブラッシュアップし、ボルボが双方について、突っ込みどころを探すと。

 なるほど、いいチームワークなのかも知れない。

 さらに、ナオは錬金術の技を使い、ゴーレムをコントロールすることに長けている。

 建材そのものをゴーレムとしてしまえば、命令するだけで勝手に組み上がるのだ。


「ゴーレム、汝に命を与える! そして命令を与える! がったーい!」


 ナオの指示に従って、形状を整えられた建材ゴーレムが集合していく。

 それらはあっという間に組み合わさり……大型の荷馬車が完成してしまった。


「おお……! 本当に一日で……!」


 イールスの驚愕する気持ちはよく分かる。

 私とて、驚いているのだ。

 ナオ一人なら、随分時間が掛かったことだろう。

 だが、今は彼女と肩を並べて仕事ができる者が増えている。

 彼らが手を取り合えば、仕事のペースは加速度的に増していくのだ。

 開拓地において、人材とは宝である。


「ね、先輩。レイアスに行ってる余裕はないでしょ? さあ、準備しましょう!」


 ナオは、とてもいい笑顔で私に告げたのだった。

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