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神様の端末としてのんびりまったり縁を結びます  作者: 愚true
第2章 幼少期編
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(60)   商会



――商会。


 要は会社だ。それを設立しろとディカルトはヴァルトに言っている。

 この世界では行商人や個人が茣蓙(ござ)を敷いて突発的に露店を開いたり、自宅の前でゲリラ販売したりすることは普通に行われている。それらの場合、よほど連日で行われていない限り統治者も商業ギルドも目こぼしすることが多いが、決められた日に行われる市に場所を確保して参加したりする場合には、きちんと使用料を商業ギルドに納めなければならない。

 では、店舗を持つなどして常日頃から商売を行うにはどうすればいいのか、というと、商会を作り、それを商業ギルドに登録し、税として売り上げの一部を納めることで許されるのだ。そしてその際、問屋の利用や他都市でも商売をする上での通商許可を得るためには、ギルドが販売する毎年高額の許認可証を購入するか、商業ギルド員として登録され商業ギルドカードを得ている必要があるのだという。なお、商業ギルド員の場合は許認可証の購入は必要ないが、毎年一定額のギルド会員費の徴収と、ギルドカードを用いた売買支払い時に、取引額の100分の1の額が自動的に徴収されるのが"税"に当たるようになっているのだという。


 ディカルトは、ギルド内に設置されている食堂へと移動しながらヴァルトにそういったことを説明してくれる。その上で、ヴァルトがこのままいろいろと商売になりそうなものを出していくというのであれば、独自の商会を設立しきちんと利益を独自で確保・回収できるようにしたほうがいい、ということを助言してくれた。

 先ほどは自分の時間の確保のため、などといってはいたが、本当はそれが商業ギルドにヴァルトを登録させた理由なのだろうとヴァルトは感じ取る。そして同時にディカルトの言っていることの妥当性にも納得がいった。


 世の中は金が全てではないが、世の中の大半の事柄は金でやり取りしたり手に入れたりすることができる。そしてその金をヴァルトが得るためには、たしかに商会を興すことが手っ取り早く確実なのだ。

 それに将来、ティアナの故郷を探す旅に出るのだ。その時の路銀を用意するためにも、商会を起こしておいて損は無い。ある程度規模が大きくなって利益がしっかり出ていれば、その時には兄か信用のおける人に商会の運営権を譲ればいいのだ。なんだったら、その商会そのものをヴァルトが旅に出る時に許可を得るための交渉材料にしてもいいのだ。

 もちろん、大金があればそれを目当てに狙ってくる相手などにより、トラブルが向こうから近寄ってくる危険性が発生する。けれど、お金が無いことでトラブルや危険を回避したり防いだり対処したりといったことができなくなるよりは、対処として取れる手段を持っているほうがいい。対処できる手段が自分の手札になければ、それだけいざという時に困ってしまうのだ。そしてお金では解決できないような直接的なトラブル、暴力に対してはヴァルトはあの神様から与えられた加護の強さにより、大抵のことには対抗できるはずだ。


「……そうですね。ディカルトの言うことには一理あります」


「おう、理解してもらえたようでなによりだ」


「ですが商人としてのディカルトはそれでいいのですか?

 僕が商会を立ち上げ、直接商売をしていくのなら、大きな利益を挙げれる商売を商人としてのディカルトが見逃してしまうことになりませんか?」


ヴァルトがそう言うと、ディカルトがにやり、と笑みを浮かべる。


「あぁ、そのことなんだがな。

 ヴァルト、さっきの試験でおまえが作ったあの契約書の方法、あれを実際に俺に売ってみる気は無いか?」


「さっきの契約書の方法……あぁ、株式のことですか?」


「"株式"っていうのか、アレは。ふぅん……あっさり仕組みの名前を言ったことからして、やっぱあれも最初から仕組みをどっかで知った上で出してきたわけか。あぁ、詮索する気はねぇし、別にこれは引っ掛けた訳でもねぇからそんな風に顔を顰めたりすんな。さっき商会を立ち上げろ、とは言ったが、そうして商会を立ち上げて商売してくには元手となる資金が要るだろ?」


その言葉にヴァルトが頷く。


「けど、おまえの親父さんや兄貴たちにその金を出してくれと言って要求するには、商売してくってのなら、いくら貴族の子っても、子どもの小遣いって額じゃまず無理だろ。だから俺が元手となる金を出してやる。どうせ元々、ある程度の額は商業ギルドの規則上、初期保証者として登録した俺が面倒みることになってるんだ。その予定だった金にあの手法でやるのなら少し上乗せした額にしてやる。そうすりゃ、おまえの商売がうまく行けば俺は『配当』って形でおまえの商会が挙げた利益のいくらかを受け取れるってんだからな。商人としての俺が利益を見過ごすってことにゃならねぇさ」


 そう言ってにやにやと笑うディカルトに、ヴァルトはあきれた思いを吐き出した。

 ディカルトによると、商業ギルドでは新たに商人が登録された場合、推薦者から初期保証者というのが選ばれ、推薦された者の商売が上手く行かず初期の3ヵ月以内に商業ギルドやギルド員に対して大規模な損害を発生させた場合、その初期保証者が代わりにその損害への賠償義務を負うことになっているのだという。

 なので商業ギルドに登録して商人となるには、それを踏まえて紹介してもかまわない、とギルド員か貴族に思わせられるだけの信用を相手から、丁稚奉公や実際の商売などで見極めを受けてなければ本来はあり得ないということだった。

 詳しく言うと、次の条件を満たさないとギルド員にはなれないのだという。


 1、ギルド員またはギルドの所属する都市に在住している貴族による紹介。また、その中の1名以上が初期保証者となってくれること。


 2、資本金となる金額のギルドへの入金(1金貨以上の額を入金すること)。


 3、算術・語学の筆記試験。


 4、複数のギルド職員による面接試験。


 5、取り扱う商品の種類と販売地域の計画書の提出。


 これら5つの条件が、ギルド員になるために抑えておかなければならない条件なのだという。そしてそれぞれの条件には、きちんとそれが設定されているだけの理由があった。


 1の条件はギルド員や所属する都市の貴族の信用を得られるだけの積み重ねや縁を持てるというだけの人格を見極めるため。

 2の条件は、ギルドに預け、ギルドカードに入れておけるだけの商売の元手資金をある程度確保できるかの見極めである(たいていの場合はそれだけの資金を貯められるだけの商才をみせるか、もしくは初期保証者=親や保護者であるため、その相手からの援助でその金額を確保しているとのことだった)。

 3は商人としての最低限の計算能力や文章理解能力があるのかの見極めのための条件である。

 4は紹介者だけでなく、ギルド側から、ギルドに参加させるにふさわしくない者でないかという見極めをするために付けられた条件だ。

 5は既存の商業ギルド所属者と商売でぶつかり合い、ギルド員同士での大きな揉め事が発生しづらいようにギルドが調整するために設定されている条件なのだという。


「ま、1つめから4つめまではもう終えてあるからな。あとは5つめの取り扱う商品の種類と販売計画だが、商品の種類に関しては昨日の話し合いでのを提出してある。販売計画については、これから考えてけばいい。んじゃ、お嬢ちゃんが待ちきれなくなってるみたいだし、話はここまでにしてメシでも食うとするか」


 と言って、ディカルトが食堂の扉を開く。

 ヴァルトは最初から手のひらで転がされた……と感じながらも、まぁ今回はいいか、と思いながらその後に続いてディカルトとの話を終えたのだった。



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