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神様の端末としてのんびりまったり縁を結びます  作者: 愚true
第2章 幼少期編
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(55)   問題:白紙の紙を高値で売りなさい



「では、わたくしからの質問です。

 ……ここに一枚の白紙の紙があります。この紙の正規の値段は1銅貨です。これを1金貨で売る方法を考えてみてください」


 なるほどな。とヴァルトは考える。

 最初の質問は商売についてどう考えているかというスタンスを問われ、次の質問は金の本質をどう捉えているかを問うものだった。

 そしてここで問われているのは、ヴァルト自身の商売センスと、無理難題を前にした時にヴァルトがパニックに陥らないのかどうかということの観察なのだろう。

 ヴァルトは前世でインフラ関係の会社の面接官をしているという人から聞いた話を、この時、ふと思い出したのだ。その面接官が言うには、採用試験を受けに来た学生たちに対して、必ず一度はサッと正しい答えにくい質問を投げかけるのだという。それはその学生の学習レベルより高い知識を必要とする技術知識を説明してください、と問いかけてみたりだとか、トンデモ的なシチュエーションや無理難題を言って、そこでどのように反応したりパニックを起こさないかどうかといった、「とっさの際の反応」をこそ観察しようとして出される問いであるのだという。なお、この時パニックに陥ったり、黙り込んで答えられなくなるような者は、その会社では不採用とするそうだ。それよりはわからないなら「わかりません」と言ったように正直に答えて状況を説明できる者の方がいいのだという。無論、最善はとっさのそういう質問にもきちんと答えられたり機転を利かせた答えを出せる者の方が良いとのことではあったりするのだが。


 さて、どうしよう。要はこの問いは「付加価値をつけて売る」という商売の基本を理解してるかどうかを問う問いかけでもある。混乱した様子をみせることは最大の悪手であるが、それと同時に「わかりません」と答えるのも、取引相手として、商人として相対するに未熟な相手、と観られることになるだけだろう。とはいえ、有名人のサインをつけて売るとかいうよくありそうな解答も、そんなのは誰が有名人なのかもよく知らないヴァルトとしては、候補の名を挙げることができない時点でアウトだ。かといって父や兄たちの名前も出す気はない。

 なので、ヴァルトはちょっとした悪戯を込めた解答をだすことにした。さて、そのためにはまずいくつかの確認と把握が重要だ。


「まずはその紙をまずは触らせてもらってかまいませんか?」


 ヴァルトがそう問いかけると、女性は「ええ、どうぞ」と言ってヴァルトに手にしていた紙を差し出す。

 ヴァルトは渡された紙を触ったり、その大きさを検分したりしながら、さらに追加で問いかける。


「これは、このギルド内で一般的に使われてる紙ですよね?」


 ヴァルトがそう問いかけると、女性が頷く。


「ええ。ギルドの事務で一般的に使われている、そこらにありふれてる紙ですわ。

 なので特に希少価値もめずらしさもありません。だれか有名人が何か書いたとしても、それはただのメモ書き程度でものめずらしさも生まれないことでしょう」


 ……答えの一つを自然と潰してこられた。

 そしてそのことは彼らの間でも打ち合わせになかったのか、慌てた様子で中年男性が「クラリッサ!」と慌てた声を上げる。

 それに彼女は返事をせず、ただジッとヴァルトがどう反応しようとするのか見定めようとするように視線を送り続けてきている。


 そんな視線を受け止めながら、ヴァルトはさてどの答えを使おうか(・・・・・・・・・)と考えてみる。

使える手はいくつか考えついてはいるが……まぁ、ここは偶然にもこの女性の名前が知れたのだ。どうせならそれを用いた解答にするというのが面白そうだろう。


 数秒の間にそう考えたヴァルトは、わざと眉をひそめさせながらクラリッサという女性に向けて口を開いた。


「確認ですが、この用紙を1金貨で売る方法なんですよね?」


「ええ、そうですよ。こんなただの紙を1金貨で売るなんて難しいですか?」


 にこりと微笑みながら、クラリッサがヴァルトへ問う。それに対し、ヴァルトは首を振りながら答える。


「いえ、別に。ところで、この紙に何かを書き込んだりすることは可能ですか?」


「……ええ、問題ありません」


 その答えに、ヴァルトは内心でホッとする。これで行おうとした方法が無事に取れる。

 なので、ヴァルトは少し爆弾を投げ込んでみることにした。


「ちなみに、売る値段は別に1大金貨とかだったりしてもかまいませんか?」


 そのヴァルトの言葉は、クラリッサという女性には予想外だったようだ。それまで余裕を持って微笑みを浮かべていた顔が、「え?」と呟くと同時、ぴしり、と固まった感じになる。


「え、ええ…………はい、かまいませんが……それ、価値はわかってますよね?

 ただの事務用、そこらにありふれているような紙なのですよ??」


「いえ、だからこそ価値があるんですけどね。

 それと、もう一つ確認したいのですが、売る相手はあなた方……ええっとクラリッサさんたち以外にであっても構わないですよね?」


「……え、ええ。わたしやそこのロイドにでも構いませんし、この場にいないだれかを想定しての解答でも構いません。

 ただし、そうである以上、販売する手段や内容についてはその内容が客観的にもその金額で取引されたとしても合理的であること、またその手段が脅迫や強要などといった犯罪によらないものとなるものでなければなりませんが」


「つまり、合法的手段かつ売る相手が進んでお金をだしたくなるような方法でっていうことですね?」


「はい、そうなりますね……」


 クラリッサの返答は打てば響くようにすぐに返ってはくるものの、その表情はいぶかし気だ。

 そしてその様子はロイドと呼ばれた中年男性も同じであり、老爺とディカルトが両者共にどのような答えが出てくるのかを楽しみにしているのか、興味深そうな顔をしているのと対照的であった。なお、ここまでずっと静かにディカルトの傍で待機してくれているティアナは、興味もなさそうにあくびを噛み殺している。


 そんな彼ら彼女らの前でヴァルトはペンを執ると手元の白紙の用紙に必要な文章を書き込んでいく。そして最後に自分の署名を行うとにやにやと笑っているディカルトへと近づき、話を持ち掛けた。


「ということで、ディカルト。これを1大金貨で買ってみませんか?」



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