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神様の端末としてのんびりまったり縁を結びます  作者: 愚true
第2章 幼少期編
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(51)  指摘の理由と助言



「ヴァルト、おまえ大規模な戦争を引き起こしたいって思ってるのか?」


 ディカルトの唐突な、それでいてなぜそんな質問になったのかという展開がよくわからない質問にヴァルトがきょとんとした顔になって固まっていると、ディカルトがハァ、とため息を吐き出す。


「ヴァルト、悪いことは言わん。戦争を起こしたいと思ってるんじゃなければ、できれば瓶詰もだが、レトルト麺の方は確実に売るのはあきらめて封印しとけ。もしくは今後も作るとしても、身内だけに振舞って他人には製法は教えるな。おっと、俺もまだ作り方は聞いてないからな。教えなくていいぞ」


「え、あ、なんで」と思わず尋ねるヴァルトに、ディカルトが真剣な顔をして説明しはじめる。


「はっきり言うと、だ。ヴァルト、戦争で一番問題になるのは何だと思う? それは兵站、つまり武器や兵器のほかに、食料の輸送や保存がどれだけできるか、ってことだ」


 ディカルトのその言葉に、ヴァルトは「あ゛」と気づいてしまう。


「気づいたか。そうだ、普通ならいくら大規模な戦争でも、食料の確保ができなきゃ戦は続けられなくなる。だから、国と国との戦争が起きるってのも、小規模な衝突を除けば収穫期の頃かその前後の、現地で食料調達可能な時だけの一時期的なものばかりだ。けどな、ヴァルトが出したあの瓶詰とレトルト麺ってのは、長期間保存が効くんだろ。そうなりゃ、時季外れでも長期間でも戦争ができるようになっちまう。そういう危険性が、あの二つの保存食にはあるんだ」


 前世の史実でもそうだ。瓶詰や缶詰といった保存食はナポレオンによる遠征のために発明された。


「瓶詰ならまだいい。瓶は一つ一つならそれほどでもないが、数が増えれば重くなるからな。そうなるとそこまで量を運べないし、輸送中に割れてしまう可能性もある。長距離長期間の移動にはそこまで向いてるとは思えないから、多少、戦争を長期化しかねないが対抗する手はいくらでもあるだろう。けど、"レトルト麺"の方はダメだ。あれはそれだけで一つの料理になるし、あれに焼いたり茹でた野菜や肉を適当に放り込めばそれだけで十分豪勢な食事になるだろう。そうなると調理のお手軽さは圧倒的に楽になる。長い時間をかけて煮込まなくても十分な味のスープが出るってことも、軍隊とかが行動する際には時間が取られないってことで利点になる。そうだな、それこそ一食分ごとに最初から干し野菜とか干し肉とまとめて器に入れておき、輸送先でお湯だけ注げばいいとかにすれば、さらに軍隊には便利な食料になることだろうよ」


 ヴァルトが説明しなくても、ディカルトはすぐにカップラーメンの概念にまで思考を発展させたようである。


「おまえがそういうことを望んでいるとは思わん。だが、俺でだってすぐに気づくんだ。国のお偉いさんや軍隊や騎士団の現場の人間なんかは、すぐにこのことに気づくことだろうな。そうなるとすぐに量を集めだして、他国が油断してる時期に攻め込むことになる可能性が十分に生まれる。だからやめとけ。これの製法はお前の中にしまっといたほうがいい」


 ディカルトのその言葉に、ヴァルトは黙考した後、静かに頷いた。


「保存食関係は、そもそも俺だとあまり接点のある商人はいなかったしな。ひとまずはヴァルト自身だけでつくっとけ。で、親父さんや兄貴たちへのプレゼントにするなり、そのうちおまえも王都にお披露目式で行くんだろ。その時に貴族ならお披露目式で王に目通りすることになるんだから、その際に時季外れの果実の献上品として出してみるように親たちに話してみたらいいんじゃねぇか?」


 え、とヴァルトは思ってもみなかった意見にびっくりする。


「お披露目式って何?」


 思わずヴァルトが尋ねると、逆にディカルトに驚かれてしまう。


「は? おいおい、おまえさん、たしか春になって年が明けたら、数えで9歳になるんだろ??

 数えで9歳になる春に、普通の民衆は身近な教導院でだが、貴族は王都に上がって王に目通りするってのは俺でも知ってる話だぜ。それにそのためにお前の下の方の兄さんがやたらはりきって……あ、もしかして聞かせちゃマズかった話か、これ?!」


 しまったー、やっちまったかー!?と慌てだす様子に、ヴァルトは素直に知らなかった、聞いたことがなかった、と答えると、ディカルトは両手で頭を抱えてしゃがみこんだ。


「……聞かなかったことにしといてくれるか?」


 ディカルトのその問いかけに、ヴァルトは人差し指を顎に当ててから、少し上を向いて考え込んだ後、


「保存食以外の商品の販売に協力してくれるのなら」


と答えるのだった。




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