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神様の端末としてのんびりまったり縁を結びます  作者: 愚true
第2章 幼少期編
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(48)  ディカルトへの相談




 ヴァルトとティアナが出会って半年が経過した。その半年の間にアルシュタイン領では手押しポンプが開発されたり、戸籍や福祉といった政策、それに伴う税制改革などが行われたりといった多少の出来事はあったものの、全体的にはのんびりとして穏やかな日々が続いていた。ヴァルトとしても早急な変化は今のところまだ望んではおらず、むしろ今の自分を取り巻く環境や状況を把握することに注力し、情報を集めては整理することに力を注いでいた。

 そしてそれと同時に、この世界には未だ存在していないらしい物で、前世ではわりとありふれており作るのが簡単だが便利なモノについての資料やレシピをいろいろとまとめることにも力を注いでいた。

 そんな資料やレシピを、一冊の冊子にある程度書き写した雪待月の終わりの日、ヴァルトはこれからの行動に向けた第一歩を踏み出すべく、ディカルトの居る離れへと足を運んでいた。


(さて、ディカルトはこれらを目にして、どのように反応することだろうかな)


 ここ数か月のディカルトは、父や兄からの要望により鍛冶師や職人への手押しポンプについての説明や指導役、技術指導などに引っ張りまわされながらも、ヴァルトが教えた透明ガラスの作り方や、カットガラスの加工技術に夢中になって取り組み、最近ではそこそこな見栄えの物を作り出すようになってきていた。そうして作った細工品はいくつもあるものの、今のところはヴァルトの指示に素直に従い、ヴァルトとティアナ以外の第三者にはそれらの作品や技術を見せないようには気を配ってくれている。

 ちなみにガラスの小物を作るために必要とする高温の炉は、離れにつくるわけにもいかず、前世の電気炉のように稼働する熱を魔法陣で制御する小さな炉を用意してディカルトには貸し出した。初めてそれを渡して作り方を実践させた日などは、ディカルトが狂喜乱舞してヴァルトに抱き着いてまで来たので、思わず反射的にアッパーカットを食らわせてしまったのはいい思い出である。


(けれど、作った作品を日の目を見させずに仕舞い込み続けさせるのも、そろそろディカルトの我慢の限界でしょうし……それを許可することと引き換えに、ということで交渉がうまく行くといいのですが)


 ディカルトの住む離れの前へとやってきたヴァルトは、寒さで白くなる吐息を小さく吐き出してから、その玄関の扉に備えられた呼び紐を引っ張って来訪を中へと知らせる。チリンチリン、という鈴の音が離れの中に響き渡ってしばらくすると、ガタゴトという荷物を移動させる音がしばらく続いてから、ディカルトが扉の覗き窓から来訪者を確認し、ガチャガチャと鍵を外す音が続いた。そうしてヴァルトが呼び紐を引っ張って来訪を知らせてから5分ほどがして、やっと離れの扉が開きディカルトがヴァルトの前に姿を見せる。


「雪の中、待たせちまったな。ほら、寒かっただろ。早く中に入れ」


 玄関の扉を開けるとすぐに、ディカルトがそう言ってヴァルトを離れの中へと招き寄せる。彼の言葉通り、少し雪が降ってきているため、少々肌寒い時期であることから、ヴァルトも素直に招かれるまま、さっさと離れの中へと足を踏み入れた。そして外套に軽く乗っている雪を片手でパッパッと払い落とす。


「やぁ、ディカルト。その様子だと今日もやってたみたいだね」


 そうして雪を落とした外套を外しながらヴァルトがディカルトにそう声をかけると、上半身は肌着でいるというのにわずかに汗をかいている様子のディカルトが「あぁ」と頷く。


「ちょうど、ついさっきまでな。つってもガラスの取り出しは終わってて、ちょうど切子を入れようとしてたとこだ。最近になってやっと狙った深さの切子を入れられるようになってきたぜ」


「へぇ。それじゃその作品は後で見せていただくことにしましょう」


「ん、すぐじゃなくていいのか?

 ……ってことは、なにか話があるってわけか」


 ヴァルトの返事と態度、そしてヴァルトがずっと手に持ったまま離さない木箱から、なんらかの話をしに来たのだろうとあたりをつけた様子のディカルトが少し身構えた様子をとる。


「嬢ちゃんは一緒じゃない、か。面倒な話になりそうだな」


「いえいえ、そんな大した話じゃないですから。ちょっと相談に乗っていただきたいだけで」


「まぁいい、とりあえずここで立ち話ってのもなんだ。白湯でも入れるから中で座ってろ」


 そう言って奥に入っていくディカルトの後を、ヴァルトはついていき、入り口を入ってすぐの部屋に備え付けられた椅子に腰を下ろした。

少ししてディカルトが奥から湯気の立つ白湯を運んできたので受け取り、少し冷ましてから口をつけて、その温かさにほんわかする。


「さて、それで相談って一体なんだ?

 正直、俺が貴族さまの相談に乗れるようなことなんて、ほとんど無ぇと思うんだが」


「そうでもないと思うけどね。それに、相談したいことというのは、ディカルトのお仕事に関係してる系統の話なんだし」


 ヴァルトがそう言った途端、それまで面倒そうにしていたディカルトが纏う気配が一変し、座った目つきでヴァルトのことをジッと見据えてくる。そのまま続きを話せ、というディカルトの無言の意思を感じ取りながらヴァルトは続きを口にする。


「ちょっとばかり、いろいろな物を作ってあってね。ディカルトには僕の代わりにそれらを売るか、もしくはそういったものを売ってくれる人を商業ギルドで紹介してもらいたいんだ」


 ヴァルトはそういいながら、ここまで持ってきたまま手放さなかった木箱を開梱していった。



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