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神様の端末としてのんびりまったり縁を結びます  作者: 愚true
第2章 幼少期編
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(33)  教導院(3)


 ヴァルトたちが教導院の中に入り玄関から近い部屋へと足を進めると、10数名の子どもたちがその部屋の中で読み書きの練習をしているところだった。そんな子どもたちのうちの数人が人の気配を感じたのか文字を書く手を止めて部屋の入口の方を振り返り、ヴァルトたちの姿を見つけると「あっ!」という驚きの声を挙げる。その数人の子らの声に反応して他の子どもたちもヴァルトたちのほうへ振り返ると、それぞれがびっくりしたような表情で驚きの声を挙げた後、読み書きを止めて全員が部屋の入口へと駆け出してきた。


「ヴァルトだ!」

「ミルカさまもいるよ!」

「久しぶりだなぁ、ヴァルト!どうしてたんだよ!!」

「ヴァルヴァルだぁ~」

「ミルカお姉さま~!」


子どもたちは次々にヴァルトたちの傍へと駆け寄ると、思い思いにヴァルトやミルカに向けて話しかけてくる。ヴァルトとミルカがそれぞれに対応していたが、やがてそのうちに子どもたちの視線は、見知らぬ人物であるティアナへと自然と集中していった。


「ヴァルト、この子は?」


しばらくして子どもたちの中の一人、少しやんちゃな雰囲気を持つ男の子が子どもたちを代表してヴァルトにそう問いかけてくる。

その問いかけにヴァルトは小さく頷いてティアナに合図をだしてから、


「この子は、いまウチで預かってる女の子で、ティアナっていうんだ。

 ティアナ、ここにいる子たちが教導院で僕と一緒に学んでいる子たちだよ」


と、両者に互いのことを紹介する。そうするとティアナもわきまえたもので、小さく会釈をして彼らに向けて挨拶し、柔らかく微笑んだ。

整った顔立ちであるティアナから、そんな表情で微笑まれたことで、何名かの男の子たちがどぎまぎとした様子を見せたり、顔を赤く染めていく。


「お、俺はリク!よ、よろしくな!!」


頬を若干紅く染めた男の子たちの中の一人、ヴァルトに子どもたちを代表してティアナのことを尋ねてきたやんちゃな雰囲気の男の子が、そう言って真っ先にティアナに自己紹介を行い、ティアナに向けて手を差し出す。


「はい、こちらこそよろしくおねがいします」


ティアナがそう言って微笑みながら差し出された手を握り返して握手すると、途端にボンっと音がしそうなくらいにリクが顔全体を真っ赤にする。

そしてそれを皮切りに「あたしはアンナ!」「ボクはヨハルトだよっ!」「オレはリックスだぜ!」と、他の子どもたちも口々にティアナに向けて自己紹介をし始める。

わらわらとティアナを囲むようにしながら子どもたちがティアナに話しかけ、彼女がそれにひとりひとりきちんと対応している様子を、ヴァルトがその輪から少し離れて眺めていると、部屋の奥から初老の男性が近寄り、声をかけてきた。


「ふぉふぉふぉ……ヴァルトくん、元気にしておったようじゃの」


「これはミッシェル導師、ご無沙汰しておりました」


ヴァルトの傍へとやってきたのは、この教導院で読み書きや計算、道徳などを教えているミッシェル導師であった。


「なに、先日の事件のことは聞いておるよ。そうとなればキミの立場ではここまでの外出を禁じられても仕方があるまい。こう言っては何じゃが、警戒を厳しくしなければならない時には、身分のある者の外出なぞ警護で動かねばならぬ者が常以上に多くなってしまうのじゃから、そういう立場の者の行動に制限をかけることで、警護の者らが他で動けるようにしたほうが良い場合というのはあるものじゃからの」


じゃからお主が気にする必要はないのじゃぞ、とこの老師は穏やかに微笑む。


「それに、そういう状況であったはずのお主がここに来たのじゃ。これで当面の安全を領主殿の方で確認できたということなのじゃろう」


「ええ、それに関してはだいじょうぶだと父も言っておりました。なのでこれからまたよろしくお願いします」


「ふぉふぉ、こちらこそじゃ」


「ちなみにこの1ヵ月、みんなの様子はどうでしたか?」


「ふむ、あの子らの様子か。子どもらはあの騒ぎのあった後の数日こそ、外を怖がったり大きな音に身体を強張らせる者もおったがの、それも二、三日もすれば収まって今ではもう以前と同じようにしておるよ。ただ、そうじゃの……ほかの(みな)もそうじゃが、特にリクとエミナなんぞはヴァルトくんが来ないことをつまらなさそうに、また心配そうにしておったというのが、言及しておくべきことくらいじゃろうかの」


「リクとエミナがですか?」


ティアナをチラチラと見ては顔を紅くしているリクを見て、少し驚いた。リクという少年はヴァルトと同い年なのだが、ヴァルトとはどちらかというと物事の判断の際に衝突することも多く、またいたずらっ子な面もある少年であるが快活的な性格の少年であるため、いまいち想像がつかなかったためであった。

また、話に出てきたエミナという少女は、そんなリクの幼馴染の女の子で年下の子らへの面倒見が良く、ヴァルトとリクとエミナの三人がこの教導院で他の子らの面倒をみたり指導を補助したりすることこそ多かったものの、少し引っ込み思案な性格のために距離が若干ある付き合いでしかなかった女の子である。


「うむ、二人ともじゃよ。特にあの二人はあの事件の日にそれぞれが家の用事やらでいなかった子らじゃったからの。……恐らくはそのせいで余計に気がかりに思っていたのじゃろうて。まぁその分を補おうとするかのように、他の子らの面倒をみてくれておったがの」


ヴァルトはそうだったのか、と老師の話を聞きながら、少し離れた位置にいるリクのことをむず痒いような感じを覚えながら見つめていた。

そして、ふと気づいてミッシェル導師に問いかける。


「あ、そういえばエミナは今日はきていないのですか?」


ティアナやミルカの周りで彼女たちと話している子どもたちの中にエミナの姿が見受けられなかったのでミッシェル導師に問いかけると、彼女は今日は家の仕事の手伝いをしていて休みであるとのことだった。


「ところでヴァルトくん、あの娘のことじゃが……」


そう言ったミッシェル導師の視線から、ティアナのことだと判る。


「ティアナと申します。いま、子爵家の方で保護していまして……」


「うむ、その事については、グレウスより儂も事情(・・)は聞いておる。保護者がお主であることもの」


事情という部分を強調されたことで、ティアナについてのほとんどの話が回っていることがヴァルトにも理解できた。


「聞きたいのは、あの娘の人となりじゃよ。ヴァルトくんから見てあの子はどんな感じの子かの?」


穏やかな雰囲気で問いかける老人ではあったが、その眼には、ヴァルトにも分かる程度の興味心が見え隠れしていた。


「ティアナですか?

 そうですね……性格は理知深く、誇り高いといった感じでしょうか。物事に対する理解能力は高いのですが、ジッとしていたりすることは若干苦手で、身体を動かしたりといった活動的な行動の方を好む傾向が強いですね」


ヴァルトはどう答えるか少し考え込んでから、自分なりに観たティアナについての特徴をそう伝えてみる。すると、ミッシェル導師は「ほぅ」と小さく声を驚きの声を挙げてから、ふぉふぉ、と笑い声を小さく出しながら頷いた。


「ふむ……どうやら聞いていた通りのようじゃの。そうか、そうか……」


そう独り言ちて何やら納得した様子のミッシェル導師であったが、うむうむと頷いた後にパンパンと両手を叩いてその場にいた全員の視線を自分へと誘導すると、


「ふぉふぉ、皆、久々に来たヴァルトくんやミルカ嬢、それに新しく来たティアナ嬢に夢中になってもしょうがないところじゃが、今は読み書きの時間じゃぞい。まずは今日の書き取りの課題を終わらせんとの」


と、子どもたちに優しく声をかける。その言葉にそれまでティアナやミルカの周りに集っていた子どもたちも、「はーい」と素直に返事をして各自の席へと戻っていった。


「さて、それではヴァルトくんとティアナ嬢もどうじゃ、書き取りをやってみるかの?」


子どもたちが各自の席でそれぞれに割り当てられた課題を再開し始めたのを見て、ミッシェル導師がそう尋ねてくる。それにヴァルトたちも頷き、穏やかな老師から課題を与えられてほかの子どもたちと一緒になって読み書きの勉強をし始めた。




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