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神様の端末としてのんびりまったり縁を結びます  作者: 愚true
第2章 幼少期編
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(28)  お出かけ(2)

「で、どうだい。なにか気に入ってもらえたのがあれば買ってみないか?」


 店主であり放浪の芸術家、ディカルトの言葉に促されるように、ヴァルトは彼の露店の品々を再度じっくりと眺めてみる。

ヴァルトと同じようにティアナもいろいろと露店の商品を見ているようで、時折いくつかの作品を手にとっては試しに首元に近づけてみたり、手に嵌めてみたりしていた。

 そんなティアナの様子を見ていたりしたうちに、ヴァルトはふと、そういえばティアナとは契約を交わしたけれど、その証とするような何かを渡したりとかはしてなかったなぁ、と気が付いた。そして気が付いてしまうと、何も渡していないのもなんだし、どうせだからこのディカルトの品をそれにするのも一つの手かな、とヴァルトは思い立った。なにせ、一つ一つが彼の手作りな上に、どれもこれもがワンオフの品々なのだ。

 けれど、そうするとなると指輪かペンダントがいいかとは思うのだが、どちらにしようかでヴァルトは少し悩んだ。前世と異なり、この世界では指輪を異性に贈ることなどには特に意味合いなどはないのだが、前世の記憶があることから『契約の証として』で贈るのだとすると、少しヴァルト的に気恥ずかしさが起きてしまう。

 しばらくしてヴァルトは、ティアナにプレゼントするのはペンダントにしておくことにした。よくよく考えると指輪だと鍛錬をしたりするのが好きなティアナには邪魔になってしまいそうだし、付け外しが簡単な分、紛失したりしてしまいやすい。それに本体が木工であることを考えると、指輪だと耐久性が少し弱そうに思えてしまったからだった。

 そうしてペンダントにすると決めて候補をいくつか見繕ってみると、その中に黒壇や檜など複数の木材を幾何学的に組み合わせ、黒と白のコントラストを中心に作られた品の良い半球状のペンダントトップが印象的なペンダントが目についた。


「お、そいつは俺の作品の中でも上位の出来栄えの品だぜ。作ったのは最近なんだが、素材がそろうのに3年かけた品だからな」


「へぇ……複雑に組み合わせてるのに継ぎ目がほとんど見えないし、これはなにを主題としてつくったの?」


「ん、そいつの主題か? それならたしか……"永遠"を主題にしたんだったかな。白が昼、黒が夜、色の薄いのが夜明けと黄昏で、座になってる円盤状のところが世界って感じだ」


ティアナとディカルトの会話を聞いて、このペンダントの主題もいい感じだな、とヴァルトは思った。なのでディカルトに尋ねてみる。


「ねぇ、これって幾らするのかな?」


ヴァルトがそう尋ねると、ディカルトは少し言いづらそうにしながら答えを返す。


「あー……それは上位の出来栄えのだからなぁ……悪ぃが、安くしてやるにしても2鉄貨になっちまうんだわ。そっちのあたりのだと5銅貨くらいにしてやれるんで……」


値段を聞いてヴァルトはディカルトが言いづらそうにしながら答えた理由がわかった。鉄貨といえば1枚で前世でいうところの1万円だ。銅貨なら1枚で100円程度である。まだまだ子どもであるヴァルトやティアナが買うには、高い価格になってしまうと思われてしまったのだろう。

ちなみにこの世界の貨幣価値は、


 1銅貨=  100円

1大銅貨=  500円

 1銀貨= 1000円

1大銀貨= 5000円

 1鉄貨=   1万円

1大鉄貨=  10万円

 1金貨= 100万円

1大金貨=1000万円

1聖銀貨=   1億円


といった形で扱われている。

銀より鉄のほうが貨幣として価値があるのは、銀の方が加工がしやすく鉄より燃料となる槇を消費せずに加工できるからだ。

さらに鉄は武器などにも多用されるため、市場での流出量を各国が制限しているせいもあり、銀よりも価値が高く認知されているのだ。


閑話休題、さてディカルトにそう勘違いされてしまって安いのを進めてくれたところだが、ヴァルトは仮にも子爵家の子どもである。さすがにポンポンといくつも買うことはできないが、2鉄貨くらいなら十分に支払うことはできた。

 それにそうでなくても、今回はティアナのための小物や身の回りの品を買うために町に出てきたということもあり、予算はしっかりと持っている。


「あぁ、だいじょうぶ。2鉄貨でいいのでしたら買えますので、このペンダントをお願いできますか?」


ヴァルトがそう言って貨幣袋から2鉄貨を取り出してディカルトにそう答えると、彼は少しびっくりした様子で、


「うぉ!ちょ、坊主どうしたんだそんな金!!」


と、慌てて引き寄せて周りからヴァルトの手元が見えないようにしてから、周りを警戒し、声を潜めて尋ねてくる。その様子でヴァルトは、ディカルトが悪い人間ではないということを確信した。ディカルトの様子や行動は、ヴァルトが大金を持っていることが周りに知れて、後で狙われたりしないようにという思いから取ってくれた行動のようであったからだ。


「だいじょうぶ、家がこの町の名士なんだ。今日はこの娘の身の回りの物を買ったりするのに出かけてるんでお金持ってるだけだよ。ほら、あそこ見てよ、ちゃんと騎士団の人が警備についてるでしょ」


ヴァルトがそう説明し、視線で誘導すると、ディカルトもその視線の先へと目をやり、物陰に隠れるようにしてこちらの様子を伺っている騎士たちが幾人もいることに気が付いたようだった。ちなみにその警備の騎士たちについて気付いていたのはヴァルトだけで、ティアナのほうは今もまだ気が付いていない様子である。


「うお……そっか、なるほどな。そういうことならまぁ、納得つーか安心だが……たしかに割といい仕立ての服着てるたぁ思ったが、子どもがそうホイホイ金だしてるといろいろ狙われやすいから気をつけろよ」


納得したのか、ディカルトがホッとした様子を見せながら気を緩める。そんな彼にヴァルトは「心配してくれてありがとう」と、その誠意に感謝を口にした。


「んや、いいんだいいんだ。なら、普通に売らせてもらうが……まぁ、2鉄貨といったん言っちまったからには、そのペンダントの価格は2鉄貨だな。どうする?」


「じゃあ……と言いたいところですが、ちなみに本来なら幾らで売るつもりだったのですか?」


「んー、まぁ本来なら2鉄貨と1大銀貨ってとこで売りたいつもりだったなー。とはいえ、きちんと目が効いてて気に入ってくれてるんだし、一度言っちまった値段があるから、2鉄貨でいいぞ」


どうせその娘に挙げる品なんだろ?と、ティアナの方へ視線を送りながらディカルトがそう言うので、ヴァルトは苦笑する。


「それなら、適正価格で買いますよ。大銀貨くらいなら追加で出しても痛くないですし、彼女に長く使ってもらうつもりなのにそれを値切ったなんて記憶されるのもなんですから」


「おいおい、いいのかよ。せっかく安くしてやるって言ってんのに」


「良いんですよ。それに正直、貴方の作品はこの金額でも安いと思う出来栄えですし」


そう言いながらヴァルトが3鉄貨(・・・)を手渡すと、ディカルトは「まいど」と言いながら1大銀貨を渡して来ようとする。

けれどヴァルトはそれを受け取らず、


「言ったでしょう、適正価格で買います(・・・・・・・・・)って」


と言って、ディカルトに向けてにっこりと微笑んだ。その笑みを向けられたディカルトの方は、途中まで差し出したお釣りの大銀貨とヴァルトの顔を困ったように交互に見ながら、


「いや、だがなぁ……」


と困った様子でどうしたものかと思案し始める。

そんなディカルトに向けて、ヴァルトは微笑みを浮かべたままで、


「もしどうしてもその大銀貨分をそのまま受け取るのが気にかかるというのであれば、一つ、ちょっとした"お願い"を聞いてもらえますか?」


と、提案を投げかけた。


「お願いって何だ?」


一瞬いぶかしげそうな顔をしたディカルトに、ヴァルトは手招きして顔を寄せさせると、彼の耳元で外に漏れないよう、小さな声でその"お願い"の内容を伝える。ヴァルトからお願いの内容を聞いたディカルトは「かはっ!」と笑いを堪えきれずに爆笑すると、パンっ!とヴァルトの背を叩いた。


「ははっ!たくっ……まぁいいぜ、やったことはないが、そんなことなら数日で済むだろうしな。材料と寝床を用意してくれるってのなら引き受けてもいいぜ」


「ええ、それらはきちんと用意します。それじゃあお願いしてもいいんですね」


「了解だ了解。どうせふらふらと旅してるだけで目的地とかあるわけでもねーからな。とりあえずあと2~3日はどうせここで露店する予定だったからな、3日後までに親御さんの許可をちゃんと得て、さっき言ったように寝床と材料を用意して案内してくれるなら、引き受けてやるよ」


「では、そちらに関しては後で使いの者を案内に出すと思います。その者について来てくださいね」


「わかったわかった。じゃ、とりあえずそっちのほうは後で来るのを楽しみにしとくとして……ほら、嬢ちゃん。坊主からのプレゼントだってさ」


露店の商品を一つ一つ見ながら、ヴァルトとディカルトが話している様子をチラチラと見ていたティアナは、突然ディカルトからそう声をかけられて、さっきまでヴァルトが手にしていたペンダントを渡されたことにビックリしてしまった様子だった。

え、えっ?と状況がよくわかってない様子で渡されたペンダントとヴァルトやディカルトの顔の間で視線を行ったり来たりさせている様子に、ヴァルトが思わず苦笑を漏らしてしまう。


「初めて会った日に、ティアナのことを護ってあげるって契約したでしょ。それはその契約を結んだ証ってことでティアナにあげるよ。ティアナがそのペンダントを自分から手放さない限り、あの契約は効果を持ち続けるってことでどうかな?」


ヴァルトがそう言うと、ティアナは顔を真っ赤に染めながら、コクコクと頷き、


「う、うん。じゃあこのペンダントは……これからずっと大切にするね」


と言って、大切そうに渡されたペンダントを受け取ったのだった。





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