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神様の端末としてのんびりまったり縁を結びます  作者: 愚true
第2章 幼少期編
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(25)  地理(領内)について



「それでは本日の講義を始めるにあたって……ヴァルト、今日の講義の内容は何にするって言ってたか憶えてるか?」


 本日の午後の講義は地理歴史の内容である。地理歴史の内容についてヴァルトに師事してくれるのはヴァルトの下の兄であるアイギスであった。

 これは法学や語学、礼儀作法、交渉術と異なり、算学や地理歴史については兄たちも学んできたことであり、教科書もきちんと用意できるため、彼らでも教えやすい内容であるからだ。さらにこうしてアイギスなどがヴァルトに教えることで、彼は彼で他人に情報を解りやすく伝えたり、噛み砕いて説明する技術を身につけられるため、そういう訓練の一種として課せられているとのことだった。


「はい、アイギス兄様。今回の内容はこのアルシュタイン領とその周辺地域についてだって言ってましたね」


「そうだ。ではまずはこのアルシュタイン領についての地理的特性について説明してみろ」


「はい。まずアルシュタイン領の地理的特徴ですが、領の東西両側から南部に向けてが山に囲まれた平野部となっています。領の平野部に関しては北西部にあるリヴァン山脈内のルーテス湖から南南東にかけてシヴァル河が流れているため、この河の水を利用する形で田園地帯が南西部に配されています。この田園地帯がアルシュタイン領の穀物庫であり、現在開発に力が注がれている部分でしたね」


「そうだ。では領の東部についてはどうなっていた?」


「領の東部に関しては、広大な森林地帯がカイバル山脈に向けて丘陵状に少しずつ傾斜しながら広がっています。この森林地帯は茸や山菜、果実や薬草など山の恵みが豊富なため、森林地帯の浅い地域に関してのみ、領民にも食卓を彩るさまざまな食材の採取が認められていますね」


「そうだな。よし、では次に、何故『森林地帯の浅い地域に関してのみ』であるのか、その理由を答えてみろ」


「森林地帯の奥地では野生の獣の他に、魔物が発生することがあり得るからです」


「そうだ。その他に先日のように犯罪者や他領から流れ込んできた賊などが根城を作っていたりすることがある危険地帯だからだったな。森林地帯の浅い地域に関しては、騎士の巡回経路にもなっているためそういった魔物や賊の被害に合う危険度は低いが奥地に関してはあまり手つかずなのが現状だ」


そこまで言ったところで、アイギスがニヤッと笑っていたずらっぽい笑みをヴァルトに向けた。


「じゃあ、そういった奥地で発生する魔物や賊については、どのように対処をしているか答えられるか?」


「――そういった森の奥地で発生する事柄に関しては、冒険者に討伐を任せたり彼らからの発見報告を受けて騎士団で対処しているはずですね」


ヴァルトが冷静にそう答えると、アイギスはきちんと答えられるとは思ってなかったのか、ちょっとつまらなさそうにしながらも頷いた。


「そうだ。冒険者ギルドに所属する彼らに依頼したり、彼らからギルドを通して挙がってくる情報により騎士団が殲滅に動いたりする。あとは先日、ヴァルトたちが出会ったような賊の情報を直接得ることで動くことがあるくらいだな。

 東の森は広大ゆえにどうしても騎士団だけでは目が届きにくい。なので冒険者と呼ばれる彼らの力を借りるしかないんだ。もっとも、冒険者も冒険者で彼らは依頼により様々なものを採取したりするついでに、魔物を狩って魔物たちの核、魔核を手に入れてきて町に売るなどして利益を得ているが、魔物が強大だったりした場合は彼らには対処できなくて通報されてこっちが動くってこともあるから、正確にはお互いに協力し合ってるといったほうが良いんだろうけどな」


つまりは膨大な雑魚は冒険者が、数は少ないが強力な魔物は騎士団が対応に動くというWIN-WINの関係で対応しているようだった。


「そういえば、魔核というのは何のために町では購入してるのですか?

 それに森が広大だから管理し辛いというのなら、東の森の中に駐屯地を置いたりはしないのですか?」


ヴァルトがそう尋ねると、アイギスは顎に手を置いて少し考え込む


「魔核か?……基本的には町の獣除け・魔物除けの結界の維持魔力や粉にして魔法を使う際の触媒とかに利用してるって聞くな。魔核は魔力が魔物や魔獣の中で結晶化したものだそうだから、あれを使うことでいろんな術式陣を魔法士が傍に常駐してなくても稼働させられるって利点があるからな。なので冒険者からギルドを通して購入してたりするわけだ」


どうやら魔核というのは、様々な動力源・エネルギー源としてこの世界では使われているらしい。

ヴァルトがそのように理解しているうちに、アイギスはもう一つの方の質問についてどのように答えるべきか悩んでいるかのようで、頭を片方の手で軽く掻きながら言葉を濁らせていた。


「あ~……もう一つの駐屯地についての方だが……あぁ、うん、その……ゆくゆくは作りたいってのはオヤジたちも思ってるとは思うんだが……駐屯地を置くには騎士と兵士をもっと増やさなきゃ無理だからなぁ。……けど、そうするには金と人がウチには不足してるみたいだし、まだまだ先のことになるしかないだろうなぁ」


「……お金も人も、ウチは足りてないんですか?」


ヴァルトがちょっと残念そうな口調でさらにそう尋ねてみると、アイギスが慌てて両手を顔の前でぱたぱたと振る。


「いやいや、いまの町やその周辺を守護するってことだけなら十分に保有してるぞ?

 ただ、新たに開墾していくとなれば、他の事や場所への対応が手薄にならざるを得ないっていうような感じなだけだ。

 ……ま、その辺の対処については兄貴と親父が考える領分だから、そのうちなんとかなるだろ」


そこまでいうとアイギスは、いままでヴァルトが答えた内容について、簡潔に書いた図を紙に書き表す。

そして、若干ザラザラした感触のケント紙に描いたその図で、まだ未記入の領域について指で指示しながらヴァルトに問いかけてきた。


「まぁ森の開発とかに関しては置いといて、っと。……ヴァルト、じゃあ後のこの空白地帯になってる北側の領域はどんな様相が広がっているか説明できるか?」


わかりやすい話題そらしの様子ではあったが、アイギスのその問いかけにヴァルトは乗ってあげることにした。


「領の北側ですか……領の北側は、たしか穏やかな平野部になっており、王都や他領と繋がる主要街道がこの街を通って南部まで繋がっていますよね。

 あとは、この町から北側ではその主要街道からやや西側に、町から南側では主要街道から東側にシヴァル河の流れに沿う形でいくつかの村落があったと思います」


ヴァルトがその記憶を頼りにそう答えると、アイギスが大きく頷いた。どうやら兄の満足を得られる回答だったらしい。


「そうだ。

 ヴァルトが今言ったように、ウチの領の北側には広大な平野部が広がっていて、主要街道が通っているわけだ。そのため、主要街道にほど近いシヴァル河沿いに村々が開拓され、その中でも領全土からみて中央気味の場所であるこの街が領都として発展していったわけだな。

 じゃあ、次の質問だが、なぜ北西部には村があっても、北東部には村が作られなかったと思う?」


この質問は立地条件を考えてみれば簡単なことである。


「北東部の平原地帯では水の確保が難しかったからですね」


ヴァルトがあっさりとそう答えるとアイギスがにやりと笑う。


「水の確保か。たしかに良い点をついているが、それなら井戸を掘るなどして対処することができるんじゃないか?」


にやにやとしたアイギスの問いかけに、ヴァルトは一瞬考え込んではみたものの、情報が足りないと思い、アイギスに尋ね返してみることにした。


「それは……でも、そういうことをしていない、作っていないということは、何かできなかった理由があるということですよね?」

 

「お、気づいたか。

 そうだ、たしかに井戸を掘ることで水の問題は解決できるだろうと開拓当初は思われたらしい。

 だが、掘ってみるとすぐに硬い岩盤にぶち当たってしまったらしくてな。どうにか水が出ても大して水量が出ずにすぐに枯れ井戸になってしまうらしい。

 それに東部の森林地帯から出てくる獣害にも悩まされることが多くてな。仕方ないので現在では放牧の場や騎士団の演習で活用してる程度になってるってわけだ」


「しかし、こうして学んでみると、かなり条件のいい土地ですよね、ウチの領地って」


アイギスが書き込んだアルシュタイン領の各方面の特性を見据えてヴァルトがそう言うとアイギスもほぼ同様の感想なのか腕を頭の後ろで組んでリラックスしながら、笑顔で同意する。


「まぁなー。他のとこに比べて住みやすい環境かどうかってことで言えば、確実に住みやすい良い土地だと思うぜ。

 この国の北東部の方じゃ冬は雪害がひどい、寒さが過酷な土地柄だって俺の学園時代の同級生が言ってたりしたけど、ここは気候も一年を通して穏やかだからな。ただ、だからこそウチの領にも難点がないってわけじゃないぞ。

 それが何か今までのことから解るか?」


アイギスの問いかけにヴァルトは考え込む。

生きていく上でいままでの内容から判りそうな問題点といえば…………





読んでくださっている皆さまがどのような感想を持っていただいているか、些細なことでも結構ですので感想・レビュー等いただけると執筆の励み・参考になります。よろしくお願いいたします。



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