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神様の端末としてのんびりまったり縁を結びます  作者: 愚true
第2章 幼少期編
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(24)  勉強は生きていく上で大切です。


 あれから2時間ほど経過したところで、ティアナとの模擬戦を終える。

 途中で休憩を挟んではいたが、さすがに2時間近く身体を動かし続けていたからかティアナも十分に満足したようだった。


(けど、前はこんなに動いたら疲労困憊で倒れてたよな……これも加護の一覧にあった戦闘能力の向上や、体力向上のおかげか……)


 ヴァルトは表面には出さないものの、内心では自分の身体とは思えないほど以前より疲労を感じず息切れもほとんど起こさない自身の身体能力に驚いていた。


「ヴァルト、やっぱりすごいね。里でも同い年くらいの子でこんなにも立ち合い続けられる子は少なかったよ」


そんなヴァルトに対しさすがに少し動き疲れた様子のティアナが、少し上気して赤くなった顔で声をかけてきた。

午前のストレスは解消できたようで、すごくスッキリした様子で笑顔を見せるティアナに、ヴァルトも微笑み返しながら返事をする。

 

「いや、ティアナこそすごかったよ。ちょっとでも油断すると一気に間合いを詰めてくるんだもの。

 おかげで負け越しちゃたからね」


そう、ティアナの戦闘能力は十分に高い練度のものであった。

特に移動速度が素早く、5~6歩分程度の距離なら一瞬で踏み込まれてしまう。

そうして一気に相手の懐に踏み込んだ上で、小回りの利く短刀による連撃や糸を使って引っかけたり絞め技を仕掛けてこようとするのだ。そのため、ヴァルトとしては模擬戦中、ずっと気が休まることがなかった。


「ふふっ、でもギリギリの勝利ばっかりだったよ。

 ヴァルトのほうはまだ余力がありそうだし、これからもまだ楽しめそう」


「……まぁ、また今度ね。少し休憩したら、僕はそろそろ午後の講義を受けないといけないから」


「むぅ……それにしても、ヴァルトは午前も午後も勉強の時間があるってことで大変だね」


 ヴァルトが模擬戦について断りを告げると、ティアナは心底同情するかのような目でヴァルトにそう話してくる。

だが、これはヴァルトにとってはティアナの誤解であった」


「そうでもないよ。たしかに礼儀作法や社交の授業は大変だけどね。地理や交渉術の講義なんかは面白かったりするよ」


 ヴァルトの一日は、午前は魔法に関する講義か剣術の訓練、もしくは教導院で町の子どもたちと一緒に教えを受け、午後は食後の自由時間の後に日替わりで礼法や語学、地理、法学や算学、交渉術などの講義が休日を除いて行われるように定められている。もっとも、先の事件以降、当面の間については教導院に行くことは止められてしまっているため、午前は魔法に関する講義か剣術の訓練だけになってしまっているが。

 なお、本来こういった教育については、後継者である長男とその予備である次男までしか行われないのがこのあたりの貴族では一般的であった。よほど裕福な貴族家や伯爵以上の家柄でもない限り、三男以降はそこまで大した教育を与えられたりしないものなのだ。だが、アルシュタイン家では三男であるヴァルトに対してもきちんと教育係をつけて指導を受けられるようになっていた。


「ヴァルトは勉強するのは嫌いじゃないの?」


そう不思議そうに尋ねてくるティアナの頭に、ヴァルトはぽんぽんと撫でるように手を置いて問いかけへの返事を行った。


「そうだね、押し付けられてだとか、暗記するだけの勉強は僕もあまり好きじゃないよ。

 だけど、生きていくのに必要だと思えることを学ぶのは大切だし、正しい知識や技術は生きていく上で役にたつものだからね。それに自分が知らないこと、理解していなかったことを、知ったり理解したりするのは面白いと思うよ」


ヴァルトがそう言っても、いまいちよくわからない、といった顔をするティアナに思わず苦笑してしまう。


「ま、ティアナもそのうち学ぶことの面白さを実感することもあるさ。それに僕の方は勉強だけど、ティアナもこの後は母様とのお茶会の時間でしょ。がんばってね」


ヴァルトがそう言うと、ティアナが若干目を逸らしてしまう。


「お茶会……美味しいの食べれるのはいいし、アイナ様も優しいのだけど……ドレス、あれを着てジッと座ってたりしなきゃならないのは大変……けど、美味しいお菓子食べれるし……」


そう言ってティアナが、はぁ、と大きなため息を吐き出した。

この娘は本当に体を動かすことは好きだが、ジッとしているのが苦手なようである。

それに身体を動かすことについてであっても、決まり事や規定に従って動いたりするというのは、あまり性に合わない様子であった。


「ま、母様はティアナのことが可愛くて仕方ないだけだから。

 以前は母様の相手として姉様が居たけど、姉様が結婚して家を出てからは侍女やミルカしか話し相手がいなかったみたいで、どうしても彼女たち相手だと主従の関係がある以上、一定の距離ができてしまう状態だったんだ。だけど、ティアナの場合は母様とはそういう関係じゃないから、いろいろと気兼ねせず接せられるということですごく嬉しいみたいだしね。

 礼儀作法は今後のことを考えると、ウチの賓客として外部に紹介しなきゃいけない時があるかもしれないから、そういった時に必要なことだとして身に着けておいたほうが後で困らなくてすむよ」


そういった会話をヴァルトはティアナと行いながら領主館まで戻る。

そしてメイドに声をかけて濡れタオルとお湯の張られた(たらい)を持ってきてくれるように頼んだうえで、それぞれに割り当てられた部屋へと別れた。


 ヴァルトは勉強のために、ティアナはお茶会のために領主館へと戻ってきたとはいえ、まずは模擬戦でかいた汗や、汚れのついた服を脱いで、軽く濡らした布などで拭うなどして着替えないといけないのである。


(そういや、お風呂も作っておきたいものだな……)


 ヴァルトが知っている範囲内では、この国周辺での一般的な身体の清め方は、日々の基本は濡らしたり蒸したりしたタオル状の布で身体や髪を拭う程度が基本であった。

そのうえで一週間や十日に一度、大きな盥や桶に水かお湯を溜めて行水をするか、川や泉で沐浴をすることで身を清めるというのが一般的な身の清め方である。

前世の日本のようにお風呂があってそれに毎日入る、などというようなことは、よほどの資産家や王族か伯爵とかでもない限り、行う者は少なかった。なぜなら薪代や水を用意する手間がかかりすぎてしまうからである。

魔法が使えれば薪や水の用意が無くても準備することは可能ではあるのだが、魔法をうまく安定して扱うには才覚の有無や術式陣を学ぶ必要があるし、魔法を使うために必要な触媒や発動体などの道具は庶民にとってはやや高価な買い物となってしまうため、薪や水を用意するのとあまり変わらない負担になってしまう。そのうえ気候も穏やかで乾燥しており、日常的生活では汗をそれほどかかないため、湿ったタオルで身体を拭くだけで事足りてしまうのである。


(まぁ、前世の西洋と同じで、その代わりとして香水や香油の文化が発達してるみたいだしなぁ)


気候もおだやかな上、あまり湿度も高くないためか、汗をあまりかかない。なので入浴の習慣が少ない代わりに、香油や香水によって体臭はごまかすようになっているようだった。とはいえ、ヴァルトは慎弥の記憶からお風呂の快楽を思い出してしまうと、やはりどうしてもお湯を張ったお風呂に入りたいと考えてしまう。いままでのヴァルトであれば訓練の後は身体を拭うだけで十分であったのだが、慎弥としての記憶や意識が混ざってしまった後の身ととしては、汗をかいた後はやっぱり石鹸で身体を洗い、湯船に浸かりたくなってしまうのだ。


(ま、そのあたりのことは今後の課題かな)


ひとまず今は、身体の汗をしっかりぬぐいとり、もうすぐに迫った午後の講義に向けての準備をしなければならない。なので、ヴァルトはそういった研究はおいおいしていくことにしようとひとまずは心のメモに書き込んでおくだけにするのだった。



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