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神様の端末としてのんびりまったり縁を結びます  作者: 愚true
第2章 幼少期編
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(23)  模擬戦

 はやくはやくと急かすティアナだったが、さすがに食後すぐに動くのは消化に悪いとヴァルトは言って、20分ほどの食休みを取るようにする。よほど身体を動かしたくて仕方ないのか、むずむずした様子のティアナも、食休みは重要だと理解しているのか、大人しく従った。

 そうしてきっちり20分の休憩を挟んだ後、二人が騎士団に行って訓練着に着替えてから訓練場へとたどり着くと(なお、ティアナの訓練着に関してはヴァルトの訓練着の予備を貸している)、そこではどん、がん、ごん、と、剣と剣がぶつかるというよりも分厚い鉄塊と鉄塊をぶつけ合うかのような重低音が、訓練場に響き渡っていた。


「ちょ、団長! そろそろ、休憩、くださ、いっ、ってば!!」


「ははは、何を言う!まだ腕も上がるし足も動くだろう。ほれっ!…ならば、だいじょうぶというものだっ!!」


音の発生源はいわずもがな、食堂から先に連れ出されて行っていたアイギスが、アーノルドによりひたすら攻撃され、それを盾や鎧で受けたり流したりしている場所からだ。


「……というか、アーノルドが振るってるのって、剣じゃなくてハンマーだもんなぁ……そりゃ、ああいう音、するよね」


ヴァルトの背丈と同じくらいの大きさの、巨大なハンマーをアーノルドは軽々と振り回してはアイギスに向けて叩きつけている。

とはいえ、さすがに理性までは失っていないのか、宣言通り訓練のつもりなのか、時折ダメ出しなどをして指導することも忘れてはいない。

そして、食堂で言及されていたからこそ、そういう目で見てみると、たしかにアイギスの防御は優れていた。相手が攻撃してくる際には、その腕が伸びきる前に自ら当たりに行って衝撃を小さくしたり、鎧の丸みを帯びた部分や籠手の部分をうまく使って相手の勢いを受け流したりしていたからだ。また、全身の筋肉を上手く使い、直接受け止めずに回転や膝のバネ、とっさに後ろに飛んで衝撃を逃がすなど、様々な技術も使いこなしていることに気が付いた。


「へぇ……言われて見てみると、ほんとにアイギス兄ってば防御の技すごいな……あ、いま打点を逸らさせた」


「そうなの?」


「ほら、アーノルド団長の肘が伸びきる前に自分から体当たりしにいってるだろ。あれだと振り切る勢いが殺されるから、当たっても衝撃のほとんどが殺されてる。それにアーノルド団長が振るってる武器は重量武器なので小回りが利かせづらいから、あそこまで内側に入られると追撃がし辛くなる」


そう説明すると、ティアナだけじゃなく傍に居た騎士たちも何人かが頷いていた。


「もっとも、アーノルド団長の場合、筋肉がすごいからいくら衝撃をほとんど殺してるといっても、自ら壁に体当たりしてるようなものだから衝撃は大きいだろうし、逆に誘い込まれて当たり負けしちゃった場合は、体勢が大きく崩れてしまい、致命的な隙になってしまうだけだと思うけどね。アイギス兄はその辺については、足を細かく使って全身のばねを使って避けてるみたいだ」


「単に真似するだけじゃ同じようにはできないってこと?」


「うん。ひとつひとつの技術はやらないよりはやったほうが良い防御になるだろうけど、使う場面や瞬間の判断を間違えれば隙にしかならないし、効率的に効果出そうと思えば、やっぱり組み合わせも考えないとダメだろうから、単純な物まねはやめたほうがいいと思う」


「……ちなみにヴァルトがアイギスさんの立場だったら、騎士団長とどうやって戦う?」


ティアナにそう問いかけられて、少し考えてみる。


「……とりあえず、アイギス兄のように自分から当たりに行くのは無いな。体重差だけでも吹き飛ばされるだけだし。となると、避ける一択だな。なるべくアーノルド団長が攻撃してくる方向を制限するために、姿勢を低くして身長差を利用する。あとは足元を狙って細かく攻撃し、苛立って大ぶりな攻撃してくることがあればそこを突く、って感じ」


「それで上手くいくと思う?」


即座に返された問いかけに、首を振って否定の意思を見せる。


「無理だろうね。アーノルドだって馬鹿じゃない。身長差で低い位置から超接近戦を仕掛けてくるのなら、蹴りや踏みつけで対処するだろう。足技じゃなくても武器の柄側を使って小回りを利かせた攻撃をしてくるだろうな」


「じゃあ、だめじゃない」


「そりゃそうだ。どんな相手にだって、単純な理屈とかだけで勝てる道理なんてない。

 だけど、手段を複数用意しておいてその中で悪手となるものは避けていくことで、有望な攻撃手段を選んでいくことはできるさ。

 それに、自分がどういう手法で攻撃し、それに相手がどう対処しようとするのか、そこを読みとれたのであればさらに、その相手の手段に自分がどう対処するのが良いか、というふうにどんどん思考を重ねていけば、勝てる確率をどんどん増やしていけるさ」


「そういうものかしら……」


「まぁ、でも、その読みあいをして動くためにも、重要になるのは体力や筋力、瞬発力などの肉体能力だろうね。

 いくらうまく読めても、身体がその理想通りに動かなかったり遅れてしか動けなかったりするとしたら、そこで終わりになっちゃうんだし」


そこまで言ったところで、ヴァルトはアーノルドとアイギスが試合をしている場所から離れた場所にあるスペースに向けて歩き出す。


「ま、とりあえずまずは体力と瞬発力つくりだね。今はまず、身体を自由に動かせるように訓練しないとね」


そしてそのままヴァルトが柔軟運動を始めると、ティアナも釣られるようにやってきて柔軟運動をし始める。

しばらくそのまま柔軟運動をし、互いの身体が温まったところで互いの得物を手にして5メートルほどの距離を取り、対峙する。

ヴァルトが選んだ獲物は長剣の形に樫の木から削り出した木剣であり、ティアナが選んだのは同じく樫の木から作られた短刀の二刀流だった。さらにティアナの持つ短刀は柄の部分から鋼を巻き込む形で細く編み込まれた糸が垂れ下がり、その糸は彼女の手首に余幅を巻きついている。


「とりあえず、相手の胸か腹部に有効打を斬りつけるか、頭か首か胸に刃先を突き付けるか接させたら勝負あり、ということで。

 もしくはどちらかが参ったと言ったら終了。それでいいかな?」


「ん、それでいい。

 他には何かある?」


「投げ技・組み技は在り。ただし頭から地面に叩きつけるといった投げ技は危険なので禁止。あと、目突きや股間への攻撃は禁止で」


確認としてヴァルトがそう言うと、ティアナはこくんと頷いて了解の意を示す。


「じゃ、開始ということで」


ヴァルトがそう言った瞬間、ティアナが勢いよく踏み込んでくる。

タ、タンッ!と軽快な足音をさせながら、まずは様子見とばかりに左手に持った短刀で、軽いが速さのある突きを3度繰り出してきた。


ヴァルトはそれを小刻みに動くことでどうにか躱してみせる。

ちなみに人攫いと戦った時やティアナと初めて会った時のように時間の流れを遅く感じるようになることについては、この3日の間の検証により最初から意識しておくことで発動させないようにすることができており、訓練時に関してはヴァルトは発動させないようにしていた。


「おっ、とっ」


3度目の突きを交わしたところで、ティアナが体勢をスイッチさせるように大きく踏み込み、右に持った短刀で袈裟切りを仕掛けてきた。ヴァルトはそれを木剣を斜めに傾かせて受け流すことで背後へと逸らさせる。そしてそのまま反撃とばかりに切り込んでみせたが、それはティアナが攻撃を受け流された瞬間に前方へ飛びこむように通り抜けたことで空振りに終わってしまった。


そのため、切り込んだ勢いそのままに、ぐるっと一回転することで反転し、追撃に移ろうとしたヴァルトではあったが……反転の途中でゾクッとした寒気を感じ、無理やりな姿勢であることを覚悟の上で大きく横へと飛びのくことに切り替えた。


「あ、残念」


間一髪のところで、ティアナが糸を引っ張って手元へと戻した短刀が、飛びのいたヴァルトの足首のすぐ横を通り去っていく。

ティアナは突きの後、右の切込みを行った際に左手に持っていた短刀を自身の背後に投げて隠し、ヴァルトの横を通り過ぎてから、ヴァルトが反転して攻撃するのを誘うと、その直後に糸を勢いよく引き戻すことでヴァルトの足を糸でひっかけて体勢を崩そうとしていたらしい。

おそらく、間一髪でヴァルトが飛び退いていなければ、引き戻された糸と短刀が足に絡まったヴァルトは、足をすくわれる形で転倒してしまい、そこに追撃を受ける形であっさりと勝負をつけられてしまっていたことだろう。


けれど、避けられたことについてティアナは残念と言いながらも、その口元は逆に楽しんでるとばかりに笑みが浮かんでいる。そして手元に戻ってきた短刀をつかみ取りながら、無理やりな姿勢で飛びのいたことでバランスを崩したヴァルトに向けて、さらに速度を上げながら右に左に、上から下へと、弾かれるのすらも計算に入れているかのような動きでヴァルトのことを切りつけてきた。


その連撃をヴァルトは、どうにか木剣の鍔と刃元の部分で弾くことにより、ギリギリ防ぐことに成功する。けれど、強く弾き返せば、ティアナは弾かれたその勢いを逆側からの攻撃の勢いに乗せてくるため、ほんのわずかな反撃の機会すら掴むことが難しかった。


おそらくそのままどんどんと激しさを増すティアナの連撃が続けば、ヴァルトは防戦一方のまま、美味しいところがない状態で負けてしまったかもしれなかった。だが、焦れたのかそれとも最初からの戦法だったのか、ティアナが唐突に短剣ではなく回し蹴りを仕掛けてきたことで好機(チャンス)が訪れた。


ティアナがヴァルトの頭を目掛け、振りぬくように出してきた右の回し蹴りを見た瞬間、ヴァルトも左足を軸にして右回りに身体を回転させながらしゃがみ込む。そしてその回転の勢いのまま、右足を大きく振り出した。

結果、ティアナが振りぬいた右足はヴァルトの頭上を通り抜け、一方、ヴァルトの右足はティアナの身体を唯一支えていた左の軸足を勢いよく刈り取った。


「きゃっ!」


右の回し蹴りを放ったことにより不安定になっていた軸足を大きく払われたことで、身体が宙に一瞬浮いたティアナが、お尻から地面につくように転倒し、地面にお尻を打ってしまった痛みから可愛い悲鳴を小さく漏らす。

そのティアナが見せた隙を逃さないように、ヴァルトは大きく跳ね上がるように身体を引き起こすと、木剣を勢いよく頭上から振り下ろし、彼女の眼前で寸止めにしようとした。


「……ありゃ、負けちゃったか」


けれど、木剣の刃先をティアナの頭上で寸止めにしたところで、そう呟いて負けを認めることになってしまったのはヴァルトだった。

なぜなら、ティアナが尻もちをついたところで攻撃したヴァルトではあったが、ティアナの頭にその木剣を振り下ろす前に彼女が回転蹴りに紛れさせて投げた短剣についていた糸がヴァルトの身体に蛇のように巻き付き、先端となる短剣の刃が彼の首に強く当たっていたからだ。


さらにティアナが尻もちをつきながらも突き出したもう一本の短刀の刃先が、ヴァルトの胸元を狙って突きつけられている。


「……最後のは誘いだったんだね」


ヴァルトが木刀を引いてティアナから離れながらそう確認すると、ティアナがお尻に手を当てながら立ち上がり、くすっと微笑んで正解だと伝えてくる。その笑みにヴァルトはちょっと焦りすぎたなぁ、と反省するしかなかった。


「一本目はわたしの勝ちだね、ヴァルトっ」


そんなヴァルトへ、にこにこと楽しそうな笑みを見せながらそう言うと、ティアナは再度最初の立ち位置まで移動していく。どうやら楽しくて仕方がないらしい。

そんな彼女の様子をみて、ティアナが満足するまでには長い時間付き合わされることになりそうだ、と思いながら、ヴァルトも立ち合い位置まで移動するのだった。



久々の戦闘描写。

動きの描写は筆が乗ります。



読んでくださっている皆さまがどのような感想を持っていただいているか、些細なことでも結構ですので感想・レビュー等いただけると執筆の励み・参考になります。よろしくお願いいたします。




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