(21) 魔法師と魔法士
「……それにしても学園ですか。学園には、ヴァルトも後3年もすれば行くことになるでしょうから、それまでにしっかりと基礎を学んでおく必要がありますよ」
アーノルドとアイギスの姿が見えなくなったところで、グレウス兄がそう話しかけてきた。
「王都の学園っていうと、たしか10歳から入学なんですよね」
「ええ。10歳になって初めての春に入学し、5年間通うことになります。
最も、基礎的な知識や技術はその前に身に着けていることが前提であり、基本的に入学時点の能力や学力でその後の指導方針や受講資格が区分けされてしまいます。そして入学前に最低限の段階まで知識や技術が届いていなければ、その時点で弾かれ、そもそも通うこと自体ができなくなってしまいますね」
つまりは、義務教育というより高校や大学みたいなものか。
「初代学園長を兼ねた王祖の遺志により、学園では貴族も平民も関係なく通えますが、本人の能力によって指導が受けられるかどうかが分けられてしまいます。入学前からしっかりと勉強をしておかないと、いざ学びたいと思う講義があったとしても、受講資格がないということにもなりかねません」
「むぅ」
「まぁ、ヴァルトの場合は三男ですからね。学園では勉学よりも、しがらみなく付き合える友人や仲間をつくることを目的として通うというのも一つの手ではありますが。……まぁ、私やアイギスがいろいろと在学中にやらかしてしまってますから、ヴァルトにはちょっと苦労をかけることになるかもしれませんので、能力は高く鍛えておいたほうがいいかと思います」
グレウスの後半のセリフに、思わずジト目で質問をしてしまう。
「……何をやらかしたんですか?」
「ひとつひとつはそれほどたいしたことじゃないはずなんですけどね。まぁ、それは行ってみれば自然と聞こえてくることになるかもしれません。もしも聞こえてこなければ、気にしなくていい程度のことばかりです」
すごく不安にさせられる。いったい何をしてきたんだ兄上たちは。
「ところで、午前はやたらと爆発音がしていましたが、勉強の方ははかどっているのですか?」
ツッコミを入れる前に、するりと話題を切り替えられてしまう。
そのまま問われるままに、午前のエスメファルティナとの講義内容について説明すると、グレウス兄は頭痛を抑えるように手で自らの頭を抑えてしまった。
「あの娘はまったく、魔法のこととなると研究バカというか……あとでお説教が必要ですね。
ティアナさんもまだ慣れない環境で大変だとは思いますが、がんばってください。ヴァルトも、しっかりと支えてあげてくださいね」
「「あはは、お手柔らかに……」」
グレウスが一瞬出した黒いオーラに、ヴァルトとティアナは二人で声を揃えて若干引いてしまう。
「……それにしても、魔法式を魔法式で包んで実行させる、ですか。よくそんな方法をヴァルトは思いつきましたね」
「あー、うん。魔法の構造式ってのも事象の一つと思えば、それを魔法で制御するのは別にできないことなんじゃないかと思って」
ヴァルトがそういうと、グレウスが大きく頷いた。
「たしかに、そう考えてみれば可能な事柄かもしれませんね」
しかし、そこでグレウスの言葉は終わらなかった。食事を摂る手を停めて、ジッとヴァルトのことを見つめてくると、
「ただ、エスファは気づいていなかったようですが、ひとつ疑問があります。
魔法を魔法式で包み込むという行為を行うとすれば、そのために必要となる制御用の魔法構文は未発見のものになるはずです。ヴァルトはその魔法構文をいったいどうやって発見したのですか?」
しまった、と思ってしまう。
かといって女神アスファリアのこととかを話すわけにもいかない。
「ゆ……」
「ゆ?」
「……夢で見て、試してみたんだ」
結果、ヴァルトとしても苦しすぎると思うしかない答えを返すことしか、ヴァルトにはできなかった。
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