21、最高の我が人生よ、最高の作品に出会ったあぁ最高の我が人生よ
近頃、空前の手品ブームというので私はある無名手品師の卓へ座ってみた。テーブルに三枚のコインを並べて言う。
「まずこの右のコインなんですけど、もともとは普通のキモオタニートで、気付いたらコインになっていました」
「はあ?」
「ただ他のコインよりも経験値取得速度にブーストがあって、ちなみになんでブーストが掛かってるのかっていうのは、物語の根幹に関わる設定なんで今はチョット言えませんが終盤近くで必ず解明されますのでご安心を」
「・・・・・・」
「最初は順調にスキルアップしてたんですけど、だんだん孤独に疲れたっていうか作者がそろそろ新キャラ出したいなーとか思ったりしたんですけどってやばっメタ発言しちゃいましたね聞かなかったことにして下さいハハハ」
「はぁ」
「で、真ん中の二枚目のコインなんですけど、どう思います?」
「は?」
「あーやっぱ、描写不足ですかねえ、作者はまだ慣れてないんで批判はお手柔らかに。実は結構ひとから怖がられてたり、何を考えてるか分からない無愛想な印象なんですけど、気付きました?」
「あ、はぁ、コインですよね?」
「やっぱ描写力でしょうか、あー文章力ほしいわー。んでこのコイン、クールっぽく見られるんですけど、実は」
それから60分、3万字、経過後、コインの一枚を中空へ投げ上げ、落下してきた所を紙コップでキャッチした、しようとして失敗した。どうですか良かったら感想下さいと言った。私は乾燥していた。
手品ではなくジャグリング・大道芸だ。いや、失敗云々は兎も角も、大道芸ですらなかった。コインを投げて落下した所を紙コップでキャッチ。だ、か、ら、なんだ?
コイン一枚一枚のキャラ設定、だ、か、ら、cry なんだって言うんだ、夏。
結局、私の評価は10点中9点だった。だってそうだろ、一時間も使わされて、2点を付けてしまったら、俺の時間は、俺の能力は、何だったのかって事になっちまう。人間は支払ってしまったコストに応じて、その作品の評価が高くなる。
勿論、ゴミをゴミとして分別できる人もいる。けどそんなマトモな人に納得してもらうより、軽い人を騙していく方が、コストパフォーマンスって最強じゃない?
まずは時間を浪費させろ。品質は問われない、時間を無駄遣いさせろ。一文字でも多く書けば、読者のその分の時間は他の小説に奪われないですむ。そうしないと、他の奴と仲良さそうにお喋りするかもだよ? ともだち牧場




