20、裸婦
裸の女が布団の上で俺をじっとりと見詰めていた。俺は周囲を見回した。邪魔者がいるか、どういう状況か確認する為、いや違う。女の脱ぎ捨てたであろう下着を探した。俺は黒いのを拾い上げ、女を起立させ装着させた。ブラがフロントホックで自分でやらせるか逡巡したが、俺が留めてやった。白のブラウスを羽織らせてボタンを留める、とめにくい。黒いブラジャーはブラウスの上からもスケスケだった。紺色のスカートを、すげえ、白ブラウスに紺スカートに黒下着って、数十年前のエロ本に出て来る憧れのお姉さんスタイルじゃねえか、フュー渋いね。俺はそんな内面の動揺などチラとも見せず、ハードボイルドな不機嫌そうなしかめっ面でこう言った。
「男の部屋にのこのこ付いて来るなんざぁ、感心しねぇな」
「は?」
「分かってんのか、襲われちまうかも知れないんだぜ」
「ええよ?」
「けっ、やれやれだぜ」
俺は懐に隠していた薔薇を取り出した。
「やるよ」
「はあ?」
「バラ・・・・・・好きだろ?」
「うん、まぁそうやけど、うーん」
「ロシナンテ・・・・・・。ムッチャ、アモーレやで」
俺は彼女の耳へ口づけ、不器用な手つきで、白ブラウスのボタンを外し、はずしにくいぜ。途中もたついて少し笑われてたような気もしたけど、へへへ、丸裸にしてやったぜ、へへ。俺の実力と、機転と、特殊な交渉術で、とうとうこの女を俺のモノにしてやったぜ。
本当はもう一回、着せて脱がせたいんだけど、怒られそうだから我慢する。やれやれ、ハードボイルドだぜ。俺は苦味走った顔で灯りを消した。
裸の女にただのし掛かるだけの人は小説を書く必要があるのかどうか。柔術好きの俺にはパクるなとは言えないけれど、パクるだけなら何も書かなければ良いように思うのは人情の自然だろう。裸の女とそのまま寝て、だから何だって言うんだ?
むくか、むかないか。小説を書くための根本適性と申せましょう。




