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世界の色は一つでいい  作者: oqutopus
1章 世界の色は一つでいい
61/113

いつか終わりがあるのなら(1)

「マジかよ! じゃあ、カツアゲしてたってのは?」

「それはたぶん、カツアゲされていた奴の金を取り返していたところを、たまたま見られていたんだと思う」

「じゃ、じゃあ他校の生徒と喧嘩をしてたってのは?」

「まあ、それ以外にもいろいろ前科はあるが。たぶんそれは、オヤジ狩りしようとしていた不良と揉めた時の――」


 天ノ目のストーカー任務を仰せつかって、そろそろ本格的に印象改善に取り掛かろうと思い立ち古谷に相談したところ、思いのほか大ごとになってしまった。

 昼休み。クラスメイト達が一斉に俺の席周辺に押しかけてきて、質問攻めにあっている。転校してきた当初の天ノ目と似た状況だ。


「ねねっ、変なナンパから古谷さんを助けたって本当⁉」

「いや、逆だな。変なナンパ野郎は俺の方で」

「ばっ、バカなの⁉ 何で一々そんなことまで言うの⁉」

「いや、なんとなくむずむずして」

「あはは、さっすが薫ちゃん! 人に誤解されることに関してはもうプロ級だね!」

「あはは……。みなさん、一色さんは皆さんの思っている三倍くらい不器用な人です。基本その行動にも言動にも何かしらの意味があるはずなので、頭を柔らかくして聞いてあげてください」


 なんだその取扱いの面倒くさい奴は。いや俺のことか。というか、そんな奴だと思われていたのか。


 驚くほど簡単なことだった。

 クラスメイト達に尋ねられるまま絡みに絡みまくった誤解を一つ一つ解いていくと、思っていたよりもずっと簡単に打ち解けることができた。


「ねえねえ、それじゃあ何で髪赤くしてたの⁈」

「っ、それは」

「こおーら。……べつに何でもいいでしょ、そんなこと。にし……西村さんだってピアスしてるじゃない」


 もちろん、それは菜月たちのおかげだ。俺一人だったら、きっとどうにもならなかっただろう。古谷なんて、人見知りのくせに、俺と一緒にクラスメイトの名前を覚えるのに付き合ってくれた。……まあ、俺よりよっぽど苦労していたが。


「ああー……そうだね。ごめんね、無神経だった」

「ああいや、……かまわない。悪いな」


 皆、いい奴らだった。俺が勝手に過去の痛みを引きずって、意固地になっていただけだった。意固地になって、意地を張って、誰も理解してくれないと勝手に決めつけていた。


「なんか、こうして話してみると全然印象違うな。もっと怖い奴だと思ってた」

「あっ、オレもオレも」

「私もー」

「あはは、俺も始めそう思ってたわ。でも修学旅行で――」


 ……本当に、いい奴らだな。


「あれ~? どうしたの、薫ちゃん。もしかして、泣いてるの~?」

「っば、ちげえ……っ」


 まさかな。まさか俺がこんなことで泣くわけがない。俺のメンタルは並じゃないぞ。


「マジか⁉ 泣き顔怖すぎだろ! どんな目つきだよ。そりゃ勘違いするわ!」

「うっせえぞ! 泣いてないって言ってんだろ!」


 やけくそ気味に叫ぶと、アホ共がどっと笑った。


「っ、こいつら……」

「まあまあ一色さん。みんな、あなたのことを知れて嬉しいんですよ」


 歯ぎしりしながら睨みつけていると、天ノ目がそう言って俺の頭に手をやって、笑いかけてきた。


「ふふ、そうだね。薫ちゃんは普通の子で、こんなに可愛いってことが皆にバレちゃったね」

「……バカにしてんだろ?」


 天ノ目の手の上に自分の手をかぶせて、俺の頭をぐりぐりと強引に撫でまわしながら菜月が言う。

 そんな俺達を見て、一人の女子生徒が言った。


「なになにっ⁉ やっぱり、どっちかと付き合ってるの?」

「ちょっと!」

「あ、……ごめん」


 …………。


「「………」」


 古谷が制してくれたけれど、彼女の疑問は当然で、一度形になった言葉は誰の耳からも消えることは無くて。

 らしくもなく目を伏せる菜月や、困ったように顔を逸らす天ノ目。そんな二人を見て、俺は――……


 分かっている。俺は妹一人守れなかった最低な人間だ。弱くて臆病な人間だ。

 分かっている。何度も何度も戒めた。いつの間にかそれが癖になって、いつからか受け入れていた。でも、


『好きだよ、薫ちゃん』

『私の自慢の友人です』

『本当にありがとう』


 何度も何度も、その度に伝えてくれた。

 嬉しかった。でも思い上がりそうになる自分がどうしても許せなくて、必死に戒めてきた。


 ――好きだよ。

 ――大好き。


 ……もう、信じてみてもいいのかもしれない。俺ではなく、こんな俺を信じてくれたみんなを。


「菜月、天ノ目。……クリスマス、家でパーティーやらないか?」


『っ⁉』


 何かが爆発したように、クラスメイト達の絶叫が校舎に響き渡った。



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