表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の色は一つでいい  作者: oqutopus
1章 世界の色は一つでいい
58/113

終わりから得たもの

 恥の多い人生を送って来た。


 小さい頃、自分は特別な人間だと思っていた。

 何の痛みも知らないくせに、強くなって、優しくなって、正しい人間になれると思っていた。そうすれば誰も傷つけることなく、大切な人を幸せに出来る。

 そんなカッコいいヒーローにいつかきっとなるのだと、信じて疑わなかった。


 いつからだろうか。テレビの中のヒーローを嘘くさいと感じ始めたのは。彼らに憧れを抱くことが、恥ずかしいことだと思い始めたのは。

 それでも俺が剣道を始めたのは、きっと心のどこかで強い人間(ヒーロー)に憧れていたからだろう。


『っ……おにいちゃん……おにいちゃん』


 ある日、桃華が泣いていた。学校で喧嘩したと言っていた。

 その時、俺はよくある子供の喧嘩だと思って、早く仲直りするように言っただけだった。


 剣道の大会で優勝した。

 強くなれたと思った。

 だからきっと、大切なものを守れると思った。

 誰も傷つけることなく、幸せにできると思った。


 中学三年の秋、両親が離婚した。その話を聞かされて、桃華が引きこもった。

 桃華は学校でいじめを受けていた。髪や目の色をバカにされ、のけ者にされたそうだ。


 身体がでかくなって強くなった。でもそれだけだった。俺は守れなかった。気づけなかった。……いや、本当は気づいていた。桃華の笑顔が、いつからか無理をしているように見えていたことは。

 そうだ。きっと、気付いていたはずだ。

 気づいていて、けれどどうしていいか分からなかった。だから無意識に見て見ぬふりをしていた。


 そして知った。


 俺は弱い人間だ。弱くて、臆病な人間だ。平凡で、とてもヒーローなんかにはなれない。

 だからせめて、もう二度と桃華が傷つかなくて済むように、俺が桃華を幸せにすると誓った。桃華の幸せだけを考えて、そのために生きていこうと思った。


 でも、どうしても目に入った理不尽や苦しみから、目を背けることができなかった。

 いつもいつも中途半端に手を出して、結局何もできずに終わってしまう。それを菜月や天ノ目は『優しさ』と呼ぶが、そうじゃない。俺はただ臆病なだけだ。俺は自分の正しさが信じられないだけ。また目を背けて、取り返しのつかないことになるのが恐くて、どうしても目を逸らすことができない。そしてつい、己の弱さを忘れて手を出してしまう。


 俺は、どうしようもない人間だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ