終わりから得たもの
恥の多い人生を送って来た。
小さい頃、自分は特別な人間だと思っていた。
何の痛みも知らないくせに、強くなって、優しくなって、正しい人間になれると思っていた。そうすれば誰も傷つけることなく、大切な人を幸せに出来る。
そんなカッコいいヒーローにいつかきっとなるのだと、信じて疑わなかった。
いつからだろうか。テレビの中のヒーローを嘘くさいと感じ始めたのは。彼らに憧れを抱くことが、恥ずかしいことだと思い始めたのは。
それでも俺が剣道を始めたのは、きっと心のどこかで強い人間に憧れていたからだろう。
『っ……おにいちゃん……おにいちゃん』
ある日、桃華が泣いていた。学校で喧嘩したと言っていた。
その時、俺はよくある子供の喧嘩だと思って、早く仲直りするように言っただけだった。
剣道の大会で優勝した。
強くなれたと思った。
だからきっと、大切なものを守れると思った。
誰も傷つけることなく、幸せにできると思った。
中学三年の秋、両親が離婚した。その話を聞かされて、桃華が引きこもった。
桃華は学校でいじめを受けていた。髪や目の色をバカにされ、のけ者にされたそうだ。
身体がでかくなって強くなった。でもそれだけだった。俺は守れなかった。気づけなかった。……いや、本当は気づいていた。桃華の笑顔が、いつからか無理をしているように見えていたことは。
そうだ。きっと、気付いていたはずだ。
気づいていて、けれどどうしていいか分からなかった。だから無意識に見て見ぬふりをしていた。
そして知った。
俺は弱い人間だ。弱くて、臆病な人間だ。平凡で、とてもヒーローなんかにはなれない。
だからせめて、もう二度と桃華が傷つかなくて済むように、俺が桃華を幸せにすると誓った。桃華の幸せだけを考えて、そのために生きていこうと思った。
でも、どうしても目に入った理不尽や苦しみから、目を背けることができなかった。
いつもいつも中途半端に手を出して、結局何もできずに終わってしまう。それを菜月や天ノ目は『優しさ』と呼ぶが、そうじゃない。俺はただ臆病なだけだ。俺は自分の正しさが信じられないだけ。また目を背けて、取り返しのつかないことになるのが恐くて、どうしても目を逸らすことができない。そしてつい、己の弱さを忘れて手を出してしまう。
俺は、どうしようもない人間だ。




