月夜の告白(3)
「それがお前の抱える秘密か?」
平静さを装いながら、俺は自分でも驚くほど自然に言葉にすることができた。
そう問いかける俺に、天ノ目はすべての重荷を下ろすように、ゆっくりと語ってくれた。その不思議な名前とは裏腹の、残酷な病について。
月影症。
過度なストレスや免疫力の著しい低下を背景として発症する、極めて稀な眼疾患で――
ホテルのベッドの上。相部屋の生徒たちが寝静まった後も妙に寝付けず、彼女が語った病気についてもう一度調べてみようとスマホを眺めていたら、いつの間にか朝を迎えていた。
何度も何度も穴が開くほど読み返したおかげで、これまで天ノ目に抱いていた違和感のすべてに合点がいった。それと同時に、彼女の病気は治療法の確立していない不治の病であり、世界が白黒に見えるという不思議な病であり、やがて光を奪われることが分かっている残酷な病であるということ。それを痛いほど理解した。
「っ…まぶし……」
朝日がカーテンの隙間から差し込んで顔に当たる。その眩しさに耐えかねて、寝不足の目をこすりながら身体を起こして部屋の時計を確認すると、ちょうど午前六時を表示していた。朝食まで少し時間がある。けれど今さら寝ようとも寝られるとも思わなかったので、俺はまだ寝ている二人を起こさないようにそっと部屋を出て、立ち入りが禁止されていない非常用階段を見つけて外に出た。
「……にげえ」
引っ掴んできた缶コーヒーを一口飲みながら、その苦味と、「日の出はどこも似たようなもんだなあ」というつまらない感想で塗りつぶした。
あいつの目に、この空はどんな色に見えているのだろう。なんていう、心ない想念を。




