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世界の色は一つでいい  作者: oqutopus
1章 世界の色は一つでいい
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月夜の告白(2)

 一色さんの目を見て、本心で言ってくれているのだと分かった。そしてほんの少しだけ、違和感の正体を明かそうという打算があるのだろうということも何となく分かった。やっぱり、最近私が彼を避けていたことは伝わってしまっていたようだ。


『私は、そんな答えが聞きたかったんじゃないよ……っ』


 一つは遊園地で菜月さんの気持ちを聞いたから。あの時私は、一色さんは友人だと言ったけれど、彼女はそんな私の答えを認めてはくれなかった。当然だと思う。だって私は彼女からしたら、同じ舞台に上がるのが怖くて逃げ出した、酷い女なのだから。それでも、あれからも変わらず親しくしてくれた彼女はやっぱりすごく優しくて、魅力的で。そんな彼女を見ていると、彼女の優しさにいつまでも甘えて、一色さんの傍から離れようとしない自分が、酷く醜く思えて辛かった。

 そしてもう一つの理由。それは――


「今日は月が綺麗ですね」

「? ああ、そうだな」

「知っていますか? 月にはウサギが住んでいるんですよ?」

「そうか。ウサギは寂しいと死ぬらしいぞ。うちのウサギがそうわめいていたから間違いない」

「それは大変ですね。月には一匹しか見えません」


 そんな冗談を投げかけあいながら、私たちは揃って夜空に浮かぶ月を見上げた。


「……月のかげ」


 ぽつりと無意識に言葉が漏れ出ていた。


「つきのかげ? どちらの意味だ?」

「ウサギの部分の方の話です」

「たしかに、今日みたいな満月だとよく見えるな。あれ、日本だとウサギだが、海外だとワニだったり犬だったりするらしいぞ?」

「そうなんですか? 一色さん、月がお好きなんですね?」

「まあ、日本人なら大抵みんな好きだとは思うが。お前も好きなのか?」


 月を見上げながらする何でもない会話。夜だからか、不思議とお互いの距離が普段より近く感じられる。

 久しぶりの彼との二人きりの時間が楽しくて、終わってほしくないと思えて。

 だから私はつい口走ってしまった。


「ええ。……月だけは、みんなと同じものを見られますから」


 言った瞬間、自分で気づいてしまった。きっともう、私は彼にすべてを打ち明けようと思っている。そう思えた理由には甘えだとか嫉妬だとか焦りだとか恐れだとか、信頼以外の感情もたくさんあって。やっぱり私は、彼と離れたくないのだと分かってしまった。


 一色さんはさっきまでと変わらず月を眺めている。それでも意識はこちらに向いていて、私の次の言葉を何も言わず待っていてくれているのだと、何となく思えた。

 だから私はもう何も恐れることなく、ずっと抱え込んでいた何かを吐き出すように、彼に告げた。


「実は私、色が見えないんです。そしてその色さえ、いつかは見えなくなるんです」


 彼はその真っすぐな目で、私の陰りを帯びた瞳を見つめながら、


「……それがお前の」


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