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世界の色は一つでいい  作者: oqutopus
1章 世界の色は一つでいい
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修学旅行 三日目(2)

 困った。


「ど、どうするの? どうすれば――」


 古谷が泣きそうな顔で繋がらない電話を見て、不安げな声を漏らす。


「落ち着け。とりあえず、手分けして探そう。古谷は……いや、女子一人でいるのは危ないか。古谷と田中はこの場所で待っていてくれ。俺が菜月を探すから、中谷はさっき菜月がいないことに気づいた場所で、あいつが帰ってこないか見ていてくれ」


 いろいろと京都を観光してまわった俺達だが、清水寺に行く途中で菜月とはぐれてしまった。

 昼時で想像以上に混んでいたバスの車内。二駅ほど前のバス停で人ごみに流されて押し出されるブラウンヘアーのちっこいのが見えたので、おそらくそれだろう。似ているなとは思ったが、俺も立っているのでやっとだったうえ、一瞬しか見えなかったため、まさか本当にあいつだとは思わなかった。

 スマホを握りしめ焦っている古谷には悪いが、あいつに電話が繋がらないのは、ここに来るまでの間に買った大量の土産ごと菜月のバッグを俺が預かっているからだ。さっきからカバンの中からプープー聞こえている。


 一旦人気のない場所に移動して、二重遭難にならないよう待機場所を確認した俺は、古谷と田中にスマホと財布以外の荷物を預け、菜月のアホを探しに走る。


 こういったトラブル時は冷静な思考が特に重要だが、安桜先生に緊急事態の報告を忘れるくらいには、俺も焦っていた。



 **



「ねえ、古谷さん。ぶっちゃけあいつってどんな奴なの? 髪とか目つきとかすごい柄悪いしろくな噂聞かないけど、話してみたら意外と普通っぽいし」


 一色君が菜月を探しに行ったあと、一緒に待っている田中くん?……がそう言って話しかけて来た。


「どうって、見ての通りの男よ」

「見ての通りって言うと……」

「見ての通り、校則違反の髪で、愛想の欠片もない目つきで、ぶっきらぼうな口調で」


 そこで一旦言葉を区切って、ここ数週間見てきた彼のことを思い出す。


「……ふふ、見ての通り、ビックリするくらい不器用な、ただの同級生よ」


 私の言葉を聞いて、首を傾げて不思議そうな顔をする田中君。きっと彼にはまだ、私の言葉の意味は分からないだろう。

 ……でもきっと、すぐに分かる。一度でも深く触れ合ってしまったら、もう二度と、彼を怖いなんて言えなくなる。

 そしてきっとすぐに知ることになる。


 ……自分の小ささと、稚拙さを。



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