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世界の色は一つでいい  作者: oqutopus
1章 世界の色は一つでいい
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修学旅行 二日目(2)

「上手だね、杉原さん。料理とかよくするの?」


 学校の家庭科室みたいな部屋で、三人くらいの班に分かれて作業する。

 生地を作ったりそれを三角形の見慣れたあの形に上手く折ったり、講師の人がゆっくり前でお手本を見せてくれるから、同じようにやれば特に苦労することなく美味しそうな八ツ橋を作ることができた。けれど苦手な人もいるみたいで、形が不ぞろいだったり生地を破いてしまったりして、なかなか綺麗に出来ない人も意外といた。


「そうかな。料理は結構好きだから、こういうの慣れてるのかも」

「すげえっ。俺のこんななっちゃったのに」


 同じ班の男子の一人がそう言って、破れた生地の中からあんこが出てきてしまっている失敗作を見せて来る。


「もう少し力加減に気を付けた方がいいかも。ほら、肩の力ぬこ」

「う、うん。すう……はあ」


 肩をまわしながらそう提案すると、彼は素直に私の真似をしてくるくる肩をまわしながら、おまけに深呼吸までしていた。その仕草がなんだか可笑しくて、思わず笑ってしまった。


「そそ、それでもう少し生地を薄くして――」


 男の子らしい大きな手でちまちま八ツ橋を作る仕草は、ちょっと可愛く見える。


「あの、菜月さん……どうでしょう」


 彼のお手伝いをしていたら、もう一人の班員であるメメちゃんが、両手の上に作った八ツ橋を載せて差し出してくる。


「ふむふむ……むむっ! ……これもう商品でいいんじゃない?」


 小姑のように隅々まであら捜ししてみたけど、生地の厚さからあんこの量まで、どこにも欠点が見つからなかった。もう今すぐ実戦力なんじゃないかな?

 素直な感想を伝えると、メメちゃんは嬉しそうに「えへへ」と笑った。


 ……かっわいいなあもうっ。嫁にしたいわ~~~!


 心の中で大海原に叫んだ。


「今頃、どんなことしてるんだろうね?」

「二人とも楽しんでいるといいですね」


 修学旅行が始まる前からすっごく嫌そうにしていた薫ちゃんと、今朝からすっごく緊張していたトモちゃんの顔を思い浮かべる。たぶんメメちゃんも同じような二人の顔を思い浮かべていると思う。


「あの二人が一緒に染め物してるところとか、想像つかないよね」

「たしかに……」

「ちょっと見て見たかったね」

「はい。少し残念ですね」


 どんなことを話しているのか全然想像つかない二人のことを思い浮かべて、


「……仲良くしてくれてるといいね」

「……ですね」


 困ったような顔をしているメメちゃんが、やっぱり可愛かった。



 **



「ひっさしぶり~、二人とも! 朝ぶりだね!」


 昼食は全員でお寺に集まって精進料理を食べることになっている。

 先に到着していた俺たちは先に席に着いていたのだが、やっぱり俺の周りの席だけびっくりするくらい人が来ず、何をすることもなく二人の分の席を確保していた。

 全員が揃ったところで、お寺の人から一通り精進料理の説明を受ける。細かいことは難しくてよく分からなかったが、とりあえず肉や魚を使わない料理のことのようだ。


「この後は伏見稲荷だっけ? 鳥居がたくさんあるところだよね?」

「ああ、千本鳥居ってやつだな」


 この後はクラスごとにバスに乗って伏見稲荷大社で商売繁盛を祈願する。俺たちみんな学生なので、祈願するなら学業成就だろと思うが、とにかくそういう予定だとパンフレットに書いてあった。絶対しおり作ったやつの願望だろ。


「そういえば、桃華ちゃんに私たちの楽しんでいる写真をたくさん撮って来てねと頼まれていました。……どうしましょう。まだ八ツ橋と京都駅の写真しか」


 ふと思い出したように言った天ノ目はスマホの写真を確認して、焦ったように言う。


「よしお前らっ。全力で修学旅行を楽しむぞ!」


 昨日までの修学旅行への憂鬱やら気だるさをまるっと捨て去って、俺は全力で宣言した。


「さっすが薫ちゃん。モモちゃんのためだったら噓だって本当にして見せるよね!」


 そんな菜月の皮肉交じりのよいしょに、天ノ目も古谷もどこか呆れ混じりの目で同意していた。

 ……頼むからそのどうしようもないシスコンを見る目はやめてくれ。


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