表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の色は一つでいい  作者: oqutopus
3章 残した色は一つじゃない
106/113

プロローグ 『終わりなき痛み』

 なぜ、人は生きるのだと思う?


 この問いかけに真っすぐに答えられる人は、果たして世の中にどのくらいいるのだろう。 

 たくさんいるかもしれないし、少ししかいないかもしれない。


 例えば、ある人はこう答えるかもしれない。

『私は家族のために生きている。家族のみんなが笑っていてくれれば、それが私の生きる意味だ』


 また、ある人はこんな答えを持つかもしれない。

『俺は欲望を満たすために生きている。快楽主義こそが正義だ、ヒャッハー!』


 更には、こんな人もいるだろう。

『それを見つけるために、その答えを得るために、私は今を生きています』


 どれもが誰かの答えに成り得るし、どれもが誰の答えにもなり得ないかもしれない。

 千差万別、人の数だけ答えがあって、明確な正解なんてきっとない。


 ただ、誰しもが共通するところは、誰もが誰かの幸せを願っているということだろう。

 自分自身の幸せを願う人もいるし、誰か大切な人の幸せを願う人もいる。この世界全ての人々の幸福を……なんて、スケールの大きい人もいるかもしれない。


 ここで、もう一つ問いかけたい。

 誰かの幸せを願いながら、自分の幸せを望む。そんな器用なことが、誰にでもできるのだろうか?


 幸せになってほしかった。


 何で?――なんて、考えたこともなかった。

 大切な人には幸せになってほしい。

 そのためなら、自分ができる限りのことをする。

 俺にとって、それは考えるまでもなく、当たり前のことだった。そう思えないことの方が気持ち悪くて、どうしてもそんな考えを受け入れられなかった。


 苦しんでいる人に気づいてしまったら、どうしても見て見ぬふりができなかった。

 目を逸らす――なんて、一瞬でも考える自分が許せなかった。

 苦しんでいたり、痛みを抱えている人がいれば、何とかしてそれを解消しようと手を伸ばす。

 俺にとって、それは考えるまでもなく、当たり前のことだった。そこに一瞬でも憐れみや満足感を抱く自分が酷く醜く思えて、否定しなければ吐き気がした。そんな自分を受け入れるなんて、どうしてもできなかった。


 俺は多分、どこまで行ってもそういう人間なのだと思う。

 弱さばかりの、間違いだらけの、どうしようもない人間だ。

 最愛の妹を守れず、ずっと助けてもらった幼馴染を傷つけ続け、残酷な運命を背負う、妹のような友人との約束を守り抜けず、こんな俺と仲良くなってくれたクラスメイトに、拭い難い罪の意識を残してしまった。


 俺はそういう人間だ。

 あの胡散臭い似非神様のおかげで、みんなの気持ちを知って、幸せを望んでもらえていたことを知って、菜月のようなヒーローに憧れるべきだったと思った。死んで初めてそれに気づいた。

 それでも、俺は俺をどうしたって肯定できない。



 自分を大切にする。

 自分の幸せを望む。

 その上で、人の幸せを願う。


 俺のような人間には、荷が重い難題だ。

 考えれば考えるほど、頭が痛くなってくる。

 とてもじゃないが、答えなんて出ない。


 ああ、なんで人は――


 ……ん?

 そういや俺、もう人じゃなかったな。


「ワン!」


 ……なぜ、犬は生きるのだと思う?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ