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きみが未来を知らないなら  作者: 鷹雄アキル


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幕間:回声記録 #03 未来のない未来


 未来に希望や夢など存在しない。

 

 それは、人が自分の人生を意味あるものにしようとして勝手につけた名前、称号、しるしだ。


 事象の流れに意味はない。

 ただ在り、ただ並んでいるだけ。

 

 水が山から海へ流れ、海から空へ還るように。

 

 それだけのことだ。

 

 人が自らの意思で切り拓ける明日などない。

 私は誰よりも、その残酷な真実を知っている。


 視えた未来を固定し、寸分違わず再現する『凍結者』。


 その私自身が何よりの証拠だった。


 もし。


 そんな強固な運命を壊せる存在がいるのなら。

 一度だけでいい。見てみたかった。

 

 未来を凍結させるたび、胸のどこかが少しずつ擦り減っていく。


 その感覚の正体を、私は知らない。


 知ろうともしなかった。


 それがまさか――最も遠ざけたかった存在に託されることになるとは。

 

 本当に、悪趣味にもほどがある。

 

 誰が未来を紡いでいるのかは知らないが、そいつは最低で、不感症のクソ野郎だ。


 視界の先で、男が彼女の手を引いて走っていく。


 夜の向こうへ。


 未来の外側へ。


 その背中は、遠い昔に見失った誰かによく似ていた。

 

 私に似ていなくて、本当によかった。

 それだけは、感謝してやる。


 特異点となった二人が、あのままどこまで逃げ切れるのかなんて私には分からない。

 だが今回だけは、未来を手放しても、いつもの嫌な痛みは走らなかった。

 代わりに、ずっと冷え切っていたはずの奥底から、じんわりとした熱が滲んでくるのを感じている。


 ふと、頬を何かが伝い落ちた。

 アスファルトに落ちて微かな音を立てたそれは、酷く温かい。

 未来を凍らせる凍結者が涙を流すなんて、三流のジョークにもならない。


 ただ、思う。


 あの子が自分の足で走っていく。


 誰にも決められていない明日へ。


 その背中を、私はずっと見送っていた。


 願わくば。


 彼女の向かう未来に、夢と希望があることを。



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