5話:Shall we デート?④
―――遊園地・エントランス―――
賑やかな音楽と楽しげな歓声が響く中、誠吾と椿は遊園地のゲートをくぐった。色とりどりの風船が空に舞い、子供たちの笑顔があちこちに溢れている。まるで別世界に来たような光景に、誠吾は目を丸くした。
「おぉ……これが遊園地……!」
彼は目の前に広がる光景にしばし見惚れる。メリーゴーランドの優雅な回転、ジェットコースターの疾走、観覧車のゆったりとした動き……どこを見ても楽しそうな雰囲気が漂っていた。
「せいちゃんは遊園地って初めてなんだっけ?」
「うん。なんとなく知識では知っていたけれど、実際に来るのは初めてだよ」
「そっか。私は昔、両親に連れてきてもらったことがあるんだ。懐かしいな……」
椿は少し遠くを見つめながら微笑んだ。遊園地の思い出は、彼女にとって大切なものだったのかもしれない。その表情に、誠吾はふと胸が温かくなるのを感じた。
「じゃあ、今日は椿ちゃんが案内してくれる?」
「任せて。楽しいところ、いっぱい回ろう!」
椿は嬉しそうに笑い、誠吾の腕を引いた。
―――メリーゴーランド前―――
「せっかくだし、最初はこれに乗ろうよ!」
椿が指差したのは、優雅に回るメリーゴーランドだった。白馬やライオン、ファンタジーな装飾が施された乗り物が回転するその光景は、どこか幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「へー、こういうのがあるんだ?」
「もちろん! これは外せないよ」
「そっか……じゃあ、乗ってみようか」
二人は並んで白馬にまたがる。誠吾は少し照れくさそうだったが、椿はどこか楽しげに誠吾を見つめた。
「ふふっ、せいちゃん、ちょっと緊張してる?」
「いや……ちょっと、どうすればいいのか分からなくて」
「大丈夫、ただ座っていればいいんだよ」
メリーゴーランドがゆっくりと動き出す。軽やかなオルゴールの音色が流れ、二人を優しく包み込む。風が心地よく、まるで時間がゆっくりと流れているようだった。
隣で椿が微笑んでいる。その無邪気な笑顔に、誠吾の頬が少し熱くなる。
(なんだろう……こういうのも、悪くないかな)
ほんのりとした幸せを噛み締めながら、誠吾はメリーゴーランドのゆったりとした揺れに身を任せた。
―――ジェットコースター前―――
「次はこれ!」
「……絶対に言うと思ったよ」
誠吾が視線を向けた先には、空高くそびえるジェットコースターがあった。急降下する瞬間の悲鳴が響き渡り、それを見上げた誠吾は、思わずため息をつく。
「大丈夫! めちゃくちゃ楽しいから!」
「……乗る前から楽しいって言えるの、すごいよね」
そうは言ったものの、椿の楽しそうな笑顔を見ていると、断る理由もなくなってしまう。誠吾は諦めたように肩をすくめ、列に並んだ。
そして、いよいよスタートの瞬間が訪れる。
「わぁぁぁぁぁぁっ!!」
椿は歓喜の声を上げ、誠吾は無言のまま必死に耐える。風を切る音と重力に引っ張られる感覚、急旋回と急降下の連続に、彼はなんとか冷静さを保とうとしたが――
「くっ……これは……!」
遊園地初心者には少しハードな選択だったかもしれない。
「せいちゃん、顔真っ青だよ!」
「……椿ちゃんは元気だね……」
終わった後、椿が大笑いする中、誠吾はぐったりと肩を落とした。
―――観覧車―――
少し休憩しようということで、二人は観覧車に乗ることにした。静かに上昇していくゴンドラの中、二人は並んで座り、街の景色を眺めていた。
「……こうしてると、色々忘れられるね」
椿がぽつりと呟く。
「うん、そうだね」
「こういう時間、大切にしたいな」
椿は小さく笑い、誠吾を見つめた。ゆっくりと近づく二人の距離――。
しかし――
突然、地響きのような振動が遊園地に響き渡った。
観覧車のゴンドラがわずかに揺れ、遠くの方から悲鳴が聞こえてくる。
「……誠吾?」
椿が不安げに彼を見つめる。
誠吾はすぐに立ち上がり、ゴンドラの窓から下を見た。遊園地の一角で、煙が立ち上り、人々が逃げ惑っているのが見える。
「……何か、起きたみたいだね」
「行こう!」
椿は迷いなく誠吾の手を取った。
楽しい時間は、一瞬で終わりを告げた。
遊園地に忍び寄る異変――。
二人のデートは、思いもよらぬ方向へと進んでいく。




