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4話:見回りも立派なお仕事。⑥



―― 商業街・聞き込み調査 ――


「それで、鬼みたいなやつを見たって人はいませんか?」


 椿は商店の店主や客に聞き込みをしていた。

 だが、誰もはっきりとした証言をしてくれない。


「騒ぎは聞いたが、私は見ていないな……」


「見たとしても、すぐに逃げたからなぁ」


「やっぱり変だよね……?」


 小梅がぼそっと呟く。


「これだけの騒ぎだったのに、はっきり見たっていう人がほとんどいないの?」


 椿も同じ違和感を抱いていた。


(みんな、何かを隠しているの……?)


 そのとき——


「お嬢ちゃんたち、鬼のことを聞いて回ってるのかい?」


 椿たちの背後から、低い声がした。


 振り向くと、そこには年老いた男性が立っていた。

 彼は薄汚れた作業服を着ており、どこか怯えたような表情をしている。


「おじいさん、鬼のことを知ってるんですか?」


 椿が慎重に尋ねると、老人は周囲を警戒するように見回した後、小さな声で答えた。


「……見たよ。でも、お前さんたちも深入りしないほうがいい」


「なぜですか?」


「…… ‘あいつら’ に消されるからさ」


「あいつら?」


 椿が問い詰めようとしたそのとき——


「やめとけ、おじいさん」


 突然、横から別の男が割り込んできた。

 彼は浅黒い肌に鋭い目を持ち、どこか荒事に慣れている雰囲気だった。


「そんなことを喋るべきじゃないんだよ」


「……!」


 老人は一瞬、怯えたように黙り込む。


「お前たちも ‘余計な詮索はするな’」


 男はそれだけ言うと、老人の肩を叩き、そのまま連れ去っていった。


 椿と小梅は、それをただ見送るしかなかった。


「……ねぇ、小梅」


「うん……これ、絶対裏あるよね」


 二人は顔を見合わせた。


(何かがおかしい……)


 事件そのものも、消えた鬼も。

 そして、それを隠そうとしている何者かがいる——。



―― 駐屯所・食堂 ――


 調査を終え、椿たちは駐屯所に戻っていた。

 食堂で遅めの昼食を取っていると、誠吾が声をかけてきた。


「おかえり。何か分かった?」


「うーん……事件の詳細は分かってきたけど、まだ 犯人が誰なのか分からないんだよね」


「そう……」


 誠吾は少し考え込むように頷いた。


「でも、鬼は忽然と姿を消したんでしょ?」


「うん。足跡もないし、血痕もない。普通に考えたら誰かが回収したんじゃないかって話になってる」


「ふぅん……」


 誠吾は静かにお茶を注ぎながら、ぼそりと呟く。


「なら、多分裏路地の倉庫街に行ってみるといいかもね」


「えっ?」


 椿と小梅が驚いて顔を上げる。


「……でも、まだどこに逃げたかって話は出てないはずだけど?」


 椿が疑問をぶつけるが、誠吾は穏やかに微笑んだ。


「いや、なんとなくそんな気がするだけだよ」


「……また勘?」


「勘って、大事だよ?」


 誠吾はお茶をすすりながら、どこか意味深に微笑んだ。


 椿は、そんな彼の表情を見つめながら、胸の奥に妙な違和感を抱いていた。


(……せいちゃん、本当に勘で言ってるのかな?)


 事件はまだ終わっていない。

 それどころか、さらに深まる謎が椿たちを待ち受けていた——。



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