4話:見回りも立派なお仕事。
「昨日はお疲れさまだったね。体は大丈夫?」
駐屯所に少し早めに到着した椿と小梅。
すると、正門前には誠吾が立っていた。
「せ……鬼切さん、おはようございます! 私は大丈夫ですよ。ただ……」
「う……うぉ……死んじゃうよ……」
椿が元気そうに挨拶する一方で、小梅は愛刀を杖代わりにして、身体を引きずるように歩いていた。
明らかに昨日の疲れが抜けていない。
「あー、【神威装甲】は訓練用の装甲と違って負担がすごいらしいからね……狛坂さん、大丈夫?」
「大丈夫じゃないです……身体中悲鳴をあげてて、疲労感半端ないです……」
「おっ、今日は早いじゃん! おはよー!」
同時に蓮華が姿を見せた。
「鳴刀さん、おはようございます!」
「蓮華でいいよ。椿は訓練初日だったのに元気そうだね」
「私は……死にそうですよ……」
「まぁまぁ、椿ちゃんは昔から剣を振ってたからね。ちょっとの訓練じゃ、死にかけることはないと思うよ」
誠吾が笑いながら言うと、蓮華が興味深そうに目を細める。
「へぇー、やっぱり誠吾が椿の彼氏って噂はホントなのか」
「ち、違いますよ!! せいちゃんはまだ私の彼氏じゃ……」
「椿…ちゃん、まだとか言ってるよ……」
「しかも《せいちゃん》呼びになってるしな。愛しのせいちゃんってか?」
「ーーーーっ!!!!」
椿は顔を真っ赤に染め、誠吾は終始苦笑いをしていた。
「こら、正門前で何してるの? 早く中に入りなさい!」
後からやって来た百合に叱られ、一行は駐屯所へと入っていった。
―― 駐屯所・食堂 ――
「もう……蓮華さん、朝からからかいすぎです……」
椿は朝食のトレーを持ちながら、ぶつぶつと文句を言う。
椿と小梅は朝食を済ませる為に食堂にやって来た。
蓮華も朝食は食べて来たらしいが、また食べる為に付いて来た。
「いいじゃん、ちょっとぐらい。仲がいい証拠ってことでさ~」
蓮華は軽く肩をすくめながら、料理をトレーに乗せていく。
「鬼切さん、今日のおすすめは?」
「今日は魚の塩焼きとお味噌汁だよ」
「あ、それいいですねぇ~」
小梅が少し元気を取り戻しながらトレーを受け取る。
「昨日、二人とも頑張ったし、ちゃんと栄養つけてね」
誠吾が笑顔で差し出した味噌汁の湯気が、食堂の温かい空気と混ざり合う。
「誠吾さん、ありがとうございます!」
「ありがたくいただきます!」
三人は食堂の窓際の席に座り、朝食を取り始めた。
「それにしても、昨日の訓練は本当にキツかったなぁ……」
小梅がぼやきながら、ご飯を口に運ぶ。
「まぁ、最初はキツイよ。でも、嫌でも慣れるから大丈夫だ!」
蓮華が優しくフォロー(?)する。
「そうですよね……私も早く装甲をもっと使いこなせるようになりたい。昨日の訓練で、一矢報いることはできたけど、やっぱりまだまだだなって実感しました」
椿が箸を置き、真剣な表情で言う。
「ふふ、椿さんは向上心があっていいですね」
声の主は、静かに近づいてきた飛鞠だった。
「あっ、飛鞠さん!」
「おはようございます」
「おはよう、二人とも。昨日の訓練、お疲れ様でした」
「ありがとうございます……でも、まだまだですよね」
椿が悔しそうに眉を寄せると、飛鞠は優しく微笑む。
「焦る必要はないですよ。神威装甲を完全に使いこなすまでには時間がかかりますよ」
「そうですよね……」
「今日は訓練はないですけど、巡回がありますよ」
「えっ、見回り?」
小梅が驚いて聞き返すと、飛鞠は頷いた。
「ええ。今日は市街地の巡回任務があります」
「えぇぇ……昨日の訓練の次の日に、もう外に出るんですか!?」
「私たちは実戦部隊だからね。基礎はもう学んでるし、あとは現場で覚えるのが一番なのよ」
「うう……不安になってきた……」
「まぁまぁ、大丈夫ですよ。街の雰囲気を知るのも大事なことだから」
飛鞠が安心させるように笑い、小梅は少しだけ気を取り直す。
「……確かに、どういう場所を守るのか知るのは大事ですね」
椿も納得したように頷く。
「それじゃ、朝食を食べたら作戦会議室に集合ですよ。多分、隊長も来ているはずです」
「はいっ!」
こうして、椿と小梅の初めての巡回 が始まるのだった——。




