3話:訓練の幕開け②
(……何か隊長って情熱的な人なんだね)
(あはは……)
小梅と椿が小声で話しながらも、空気は次第に引き締まっていく。
東雲が鋭い視線を向け、隊員たちが静かに背筋を伸ばした。
「さて……話はここまでだ。お前たちには早速、実戦形式の訓練に入ってもらう」
その言葉に、椿と小梅も自然と構えを正す。
「今回の訓練内容はシンプルだ。お前たち新人二人が【神威装甲】を装着し、模擬戦を行う」
「模擬戦……ですか?」
椿が確認すると、東雲は頷いた。
「そうだ。お前たちが本当に実戦に耐えうる力を持っているのかを確認するための訓練だ」
「対戦相手は……まさか、隊長とかじゃないですよね?」
小梅が不安げに問いかける。
隊長クラスとやり合うなんて、最初の訓練としては絶望的すぎる。
「そこまで無茶はさせんさ」
東雲が肩をすくめる。
「お前たちの相手は、鳴刀蓮華と嵐山飛鞠のペアだ」
「えっ……!? いきなり先輩たちと!?」
小梅が驚きの声を上げる。
蓮華は鋭く微笑み、飛鞠は柔らかく頷いた。
「安心して。いきなり本気は出さないよ?」
「それが逆に怖いんですけど!」
「まぁまぁ、小梅ちゃん、試しに一発やってみようよ」
椿が木刀を軽く回しながら、わくわくしたように微笑む。
戦いとなると、彼女は自然とスイッチが入る。
「もう……椿ちゃんは本当に戦うの好きだねぇ」
小梅はため息をつきながらも、気合を入れ直した。
「よし、全員準備しろ! 訓練開始は十分後だ!」
東雲の号令が響いた。
―――――
東雲の号令とともに、椿と小梅は装甲展開用の格納庫へ移動する。
隣にはすでに蓮華と飛鞠がスタンバイしていた。
二人は、それぞれ訓練機とはいえ装甲を扱った経験がある。
しかし、今から身にまとうのは正式な神威装甲。
それは”単なる装備”ではなく、ふたりの愛刀と完全にシンクロする、一心同体の武装だ。
二人はそれぞれの愛刀を抜き放った。
椿の手にあるのは、赤い陽光を宿した刃——【紅陽】。
小梅の手には、若葉の風を感じさせる青白い刀——【青葉】。
(……この感覚、訓練機とは全然違う)
刀を握った瞬間、装甲とシンクロするような鼓動が全身に伝わる。
それは単なる武装ではなく、まるで”自分の一部”が拡張されるような感覚だった。
「桃枝椿、神威装甲・紅陽、展開!!」
「狛坂小梅、神威装甲・青葉、展開!!」
次の瞬間——
紅陽が閃光を放つ。
その輝きとともに、装甲ユニットが起動し、天井のスリットが開く。
機械的なアームが降下し、装甲パーツが瞬時に組み上げられていく。
紅と黒の装甲が椿の身体を包み込み、装着と同時に全身が研ぎ澄まされる。
(……すごい、まるで刀と一体化したみたいだ)
一方、小梅の青葉も淡い光を纏い、青と白の装甲が降り注ぐように展開された。
装甲が装着された瞬間、風が吹き抜けるような感覚が小梅の身体を駆け巡る。
「やっぱり、すごいな……これが本物の神威装甲……!」
「さすが訓練機の経験者ですね。初めてでも、ちゃんと適応しています」
既に装甲を装着した飛鞠が感心したように微笑む。
「さて、訓練場に向かおうか……お手なみ拝見といこう」
蓮華が訓練用の槍を肩に担ぎながら、ゆっくりと構えた。
「……行くよ、小梅!」
「うん! やってやろう!」
そして——四人は訓練場へと向かっていった。
―――――
「よし、四人とも準備はいいな。それでは——模擬戦、開始!!」
東雲の号令が響いた瞬間、椿が一気に加速する。
神威装甲・紅陽の推進力を活かし、赤い閃光を描きながら蓮華へ接近。
「はぁっ!!」
踏み込んで、全力の一閃。
しかし——
「遅い」
蓮華が冷静にステップを踏み、椿の木刀を紙一重で回避。
(しまった——!)
すぐさま二撃目を繰り出そうとするが、蓮華の槍がカウンターで迫る。
「ッ!」
咄嗟にガードするも、衝撃が装甲全体に響く。
「いいね、勢いは悪くない。でも……」
蓮華がさらに追撃を繰り出す。
「まだまだ甘い!」
椿は瞬時に横へ跳び、辛うじて距離を取る。
(くそ……機動力は十分あるのに、動きが読まれてる!)
一方、小梅も飛鞠と対峙していた。
「あなたは、装甲の動きに慣れるところからですね」
「……はい!」
小梅は慎重に木刀を構え、青葉の機動力を活かして回り込むように動く。
「確かに、まだぎこちない……でも、私は負けたくない!」
「その意気です」
飛鞠が微笑みながら再び構える。
二人の装甲は、まだ本当の力を発揮していない。
でも、戦いの中で、確実に装甲と一体化しつつあった。
(……もう、負けない!!)
再び、二人は戦場へと駆け出した——。




