↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境界線の商人  作者: カミツキ
三章 銀貨開戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/83

第68話 続けるために

 王都の役所では、廊下を行き来する職員が、扉の脇で待つ者を順に部屋へ呼んでいた。セレスティーヌが案内された先には、王国の担当官とレヴィンがいた。席に着くと、担当官が支部の維持費を記した書類を差し出した。


 共同事業と、保証金の支援を確約できない理由について説明を終えると、レヴィンから、農場の次の討伐が直接契約になったことも告げられた。担当官はその話を追わず、給与と救助費の欄を示した。


「こちらの費用については、話を聞くと伺っている」

「はい。この支部で今月末までに必要な追加費用は、ブーケ家で負担いたします。示された額であれば、今日のうちに本部へ届けられます」

「来月も、同じように出せるのか」

「来月の負担額までは、今お約束できません。ですが、今月の給与や救助手配を、次の話がつくまで待たせるつもりもありません」


 担当官はレヴィンに尋ねた。


「これで、今月の支部は回せるな」

「ええ。すでに確保している分と合わせれば、受付と救助は続けられます」

「では、今月分はその形で受ける」


 セレスティーヌは、手元の書類に記された支部名を確かめた。クリストフには、募集を続けられるという返事も届けたい。


「もう一つ、お願いがあります。支部で商業ギルドの募集を案内することを、今月末まで認めていただけませんか」

 レヴィンが鞄から募集案内を出し、担当官へ渡した。

「先月、クリストフさんに認めたものです。期限は月末まで。続けるなら、支部の維持費についてもお話しいただくことになっていました」

「追加負担だけで運営を続けることを、王国が望んでいないのは伺っています。その上で、今月の費用を引き受け、案内の延長をお願いしています」


 担当官は案内を読み、机の端に置いた。


「延長は認めない。期限を区切っても、こちらの受付から外の契約へ人を送る仕事は続けさせない」


 セレスティーヌはレヴィンに尋ねた。


「直接頼まれた討伐を受けられるか、その確認まで断ることにはなりませんね」

「そちらは続けますよ。資格や受注条件を確かめずに行かれては困りますから。正式な依頼の受付も、救助手配も変えません」


 担当官はレヴィンへ指示した。


「支部に伝えてくれ。先月限りの募集案内は、延長しない」

「オレから今日中に出します」


 クリストフは、今日も仕事を探しに来る者を迎えているはずだった。


「追加費用については、このまま受けてよいのか」


 担当官に問われ、セレスティーヌはすぐには答えられなかった。


 今ここで負担を断れば、受付と救助を続ける金を、二人はほかから用意しなければならない。案内の延長を条件に、もう一度交渉できるかもしれなかった。


 商業ギルドで会った男は、今日の金が要ると言って護衛を引き受けていた。あの男に待てとは言えず、働ける場所を作るよう頼んだ。そのために今度は、支部の職員への給与を止めるのか。


 受付に来る者は、こちらの交渉が済むまで怪我をせずにいてくれるわけでもない。


「はい。今日中に届けます」

「案内の延長は認めない。その上での負担だ」

「そのご判断には賛成できません。ですが、支部で依頼を受けた方の救助まで、待たせる理由にはなりません」


 セレスティーヌは費用の書類をレヴィンへ渡した。受け取った彼は、支部へ届ける手配をすると告げた。


「リール商会との事業は、お伝えした条件で続けます」

「それについての返答も、受け取った」


 担当官が廊下の職員を呼ぶと、セレスティーヌは共同事業について記した自分の控えを鞄へ収め、席を立った。


 * * *


 午後、セレスティーヌはギルド本部で、従者が運んできた金を会計の職員へ渡した。入金を済ませてレヴィンの執務室へ入ると、机にはクリストフ宛ての封書が置かれていた。


 レヴィンが職員を呼び、封書を渡した。


「支部へ送る金と一緒に頼みます。今日中に出してください」

「承知しました」


 職員が退出すると、セレスティーヌは会計から受け取った控えを鞄へしまった。クリストフには、自分からも返事をしなければならない。維持費を用意できたことだけを、先に知らせるわけにはいかなかった。


 本部の入口で従者を待っていると、支部へ向かう荷車が通用口から出てきた。レヴィンの封書を受け取った職員も、荷台に乗っていた。


 セレスティーヌは荷車が門を出るまで見送り、従者と通りへ歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。