第42話:運命の黒ずみと「未来の拭き取り」
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第42話は、ついに「世界の寿命」という名の、避けることのできない絶対的なルールにフェイトが挑みます。
美しくなりすぎたがゆえに、システムによって「掃除」の対象に選ばれてしまった世界。迫りくる真っ白な虚無の壁は、触れるものすべてを無に帰す究極の消しゴムです。
絶望的な状況下で、フェイトが取り出したのは一枚の「ボロ布」。
「運命が書き込まれた予定なら、拭き消せばいい」
そんな清掃屋としてのあまりにも斬新で無謀な理論が、世界の理を真っ向から否定します。手に汗握る、運命への「拭き掃除」が今、始まります!
世界の「設計図」に薄く美装のワックスをかけ、人々に平穏な視界を戻したフェイト。しかし、彼の鋭い眼光は、世界の根幹に刻まれた一行の記述——「第4444期、文明の蓄積過多による全消去」という冷徹な予定表を見逃してはなかった。
それは、世界を管理する高次元のシステムが、定期的に「溜まった文明のゴミ」を掃除するために実行する、絶対的な破壊のプログラムである。
「……ふむ。神々の怠慢を掃除したと思えば、今度は世界そのものが『定期的な一掃』をプログラムされているとはな。だが、これは掃除じゃない。ただの『一括消去』だ」
フェイトは離宮の書斎で、宙に浮かせた設計図の文字を睨みつけていた。彼にとって、丁寧な分別もせず、使えるものまで無差別に消し去る「リセット」は、清掃屋としてのプライドが最も許さない「愚行」であった。
「師匠! 王都の北に、見たこともない巨大な『消しゴム』のような、真っ白な虚無の壁が出現しました! 触れた建物が、塵一つ残さず消失しています!」
ヴォルグが息を切らせて飛び込んできた。その後ろからは、愛用のバケツを盾のように構えたガウス将軍も続く。
二人の表情は悲痛だった。彼らが丹精込めて磨き上げ、ようやく手に入れた「清潔な日常」が、理不尽なシステムの都合で消されようとしているのだ。
「全消去が始まったか。予定より少し早いが……俺が世界を綺麗にしすぎたせいで、システムが『もう消してもいいほど整った』と勘違いしたのかもしれん」
「そんな……! 綺麗にしたから消されるなんて、あんまりです! 師匠、どうにかできないんですか!?」
フェイトは静かに立ち上がり、クローゼットの奥から一束の布を取り出した。それは、彼がこの世界に転生した際、最初に「ゴミ」として分別されかけていた、何の変哲もない古びたボロ布だった。だが、今のフェイトの手にあるそれは、あらゆる概念を「拭き取る」ために鍛え上げられた究極の魔導雑巾——『万象消却の布』へと進化していた。
「ヴォルグ、ガウス。これまでは『汚れ』を落としてきたが、これからは『運命』を落とすぞ。……あの虚無の壁は、いわば世界の表面に付いた『予定という名の書き込み』だ。書かれているなら、消せばいい」
フェイトは離宮を飛び出し、王都へと迫る真っ白な虚無の壁の前に立った。
その壁は、山をも飲み込む巨大な「世界の終わり」。触れれば魂ごと消滅する絶対の消去プログラムである。しかしフェイトは、その絶望的な白壁に対し、バケツの水をひしゃくで無造作に浴びせた。
「……乾拭きでは落ちんな。少し『潤い』が必要だ」
フェイトは魔導雑巾を固く絞り、虚無の壁へと手を伸ばした。
ジュゥゥゥッ! という、空間そのものが悲鳴を上げるような音が響く。フェイトの雑巾が壁に触れた瞬間、そこから「真っ黒なインク」のような液体が滴り落ちた。
「な、なんてことだ……! あの『消去の壁』を、ただの壁の落書きみたいに扱い始めたぞ!」
ガウス将軍が驚愕する中、フェイトはリズミカルに手を動かし始めた。
上から下へ、そして左から右へ。
フェイトが雑巾で拭った場所から、白く無機質な「虚無」が剥がれ落ち、その下から元の美しい青空と街並みが再出現していく。彼は「世界の終わり」という確定した未来を、物理的に『拭き消して』いた。
「これだ……この手応え。運命というやつは、意外としつこい油汚れに似ているな。放置すれば固まるが、熱意(熱魔法)と適切な溶剤(魔力)があれば、必ず落とせる」
虚無の壁の向こう側で、世界の管理者たちが慌てふためく気配がした。彼らにとって、自分たちが書き込んだ「終了」の文字を雑巾で消されるなど、想定外を通り越した神への反逆であった。
だが、フェイトに迷いはない。
「勝手に世界を終わらせるな。ここは俺の、そして俺の弟子たちが磨き上げた『大切な家』だ。ゴミ一つない未来は、俺たちが自分で描く。……ヴォルグ! 仕上げを手伝え! この『運命の黒ずみ』、一滴も残さず拭き取るぞ!」
「はいッ! 師匠! 俺の全魔力、この一拭きに捧げます!」
二人の清掃員の輝きが、世界を飲み込もうとした白き虚無を圧倒していく。
運命という名のしつこい汚れとの、最後の「ガチンコ大掃除」が加速していった。
第42話をお読みいただきありがとうございました!
ついに「世界の終わり」を「壁の落書き」扱いして掃除し始めたフェイト。
「運命はしつこい油汚れに似ている」という名言(?)まで飛び出し、もはや彼に拭けないものはこの世に存在しないのではないかと思わせてくれますね。
ヴォルグも師匠の背中を見て、ついに「運命を拭き取る勇者」へと覚醒しつつあります。
神々や管理者たちがパニックになる中で、淡々と「効率的な拭き方」を実践するフェイトの姿は、ある意味でどんな魔王よりも恐ろしいかもしれません。
物語はいよいよクライマックス。このまま運命をすべて拭き取った先に、どのような「汚れなき未来」が待っているのか。
完結まであと数話、ぜひ【☆☆☆☆☆】の評価で、フェイトたちが使う「究極の洗剤」へのエネルギーを支援していただけると嬉しいです!




