第34話:国王の親征と「究極のゴミ箱」
お読みいただきありがとうございます!
第34話は、物語がいよいよ一国の頂点へと到達します。
行方不明となった騎士団を奪還すべく、自ら離宮へと乗り込んできたアルフレッド国王。しかし、そこで彼を待ち受けていたのは、武力による抵抗ではなく、想像を絶する「清浄なる空間」でした。
王の権威や歴史すらも「蓄積した不純物」として扱うフェイトの冷徹な合理主義と、かつての忠臣たちの変わり果てた姿。
一国の王が「世界の掃除屋」と対峙したとき、その価値観はどのように塗り替えられていくのか。緊迫と爆笑の「親征編」、ぜひお楽しみください!
「騎士団五百名が消息を絶った」という、建国以来の異常事態に揺れる王国。その混乱の渦中、ついに王国の最高権力者であるアルフレッド国王が自ら重い腰を上げた。黄金の装飾が施された豪華な馬車を連ね、残存する近衛騎士たちを動員した「親征」である。
彼らが離宮の境界線へと辿り着いた時、国王は自分の目を疑った。そこには、変わり果てた王国軍の姿があったからだ。
「フェイトよ! 我が国の誇る騎士団を誘拐し、得体の知れない白い服を着せて奉公させるとは何事か! 今すぐ彼らを解放し、その不潔な……いや、不可解な魔法を解け!」
国王は馬車から降り立ち、怒りに震える指で離宮を指差した。しかし、彼の怒声はすぐに困惑へと変わる。目の前に広がる光景が、あまりにも眩しすぎた。
離宮の外壁は、五百人の騎士たちが一丸となって「全力研磨」を施した結果、もはや石材の質感を通り越し、空の色を完璧に映し出す巨大な鏡と化していた。反射した日光が国王の目を焼き、さらに足元の石畳は「摩擦係数ゼロ」の極限まで磨き上げられている。一歩踏み出した国王の足は氷の上のように泳ぎ、威厳も何もなく不格好にたたらを踏んだ。
「おっと、陛下。あまり動かない方がいい。今の陛下は、その豪華な王冠の隙間に溜まった『権力への固執』という名の煤のせいで、重心が著しく汚れています。そのままでは自分の心の重みで転倒してしまいますよ」
離宮の奥から悠然と姿を現したのは、銀色の塵取りを小脇に抱えたフェイトだった。その後ろには、もはや騎士というより「高潔な清掃僧」のような静かなオーラを纏ったガウス将軍と、エプロンの結び目一つにまで魔力を込めるヴォルグが、左右を固めるように控えていた。
「ガ、ガウス……! 貴様、その姿は何だ! なぜ盾ではなくバケツを持っている! それにヴォルグ、お前まで……! 王国最強の勇者が、なぜ雑巾を絞っているのだ!」
国王の絶叫に、ガウス将軍は慈愛に満ちた微笑みで応えた。
「陛下……。盾は敵を防ぐものですが、バケツは世界を救うものでした。私は今、かつてない心の平穏の中にあります。血生臭い戦場では決して得られなかった、この『磨き抜かれた静寂』。さあ陛下、その重苦しいマントをお脱ぎください。それは三代分の『傲慢』と『怠惰』が染み付いて、もはや雑巾にするにも忍びない、実に不衛生な汚れ方です」
「な……何を言っている! これは我が王家の象徴、代々受け継がれた……」
「陛下」
フェイトが静かに、しかし抗い難い威圧感を持って国王の言葉を遮った。
「俺の離宮には、ゴミを持ち込ませないと言ったはずです。その古臭い価値観も、民を顧みない利権まみれの政策も、俺の目には巨大な『不燃ゴミ』にしか見えません。汚れたままの王に、この門をくぐる資格はない」
フェイトが指を天にかざすと、地響きと共に庭の地面が左右に割れた。そこから現れたのは、底が見えないほど深く、全てを吸い込むような純白の光を放つ穴——フェイトが空間魔法を応用して作り上げた「概念のゴミ箱」だった。
「今ここで、その『汚れた王権』を捨てて身軽になるか。それとも、陛下自身が『分別の不可能な粗大ゴミ』としてこの穴に飛び込むか。……さあ、選別の時間です。汚れたまま滅びるか、洗われて再生するか」
国王の背後で、かつての部下であった五百人の騎士たちが、一斉にブラシを構えて一歩踏み出した。彼らの瞳には迷いも憎しみもなく、ただ「目の前の汚れを落としたい」という純粋な、そして狂気的なまでの使命感だけが宿っていた。
「綺麗にしましょう、陛下。中身まで徹底的に」
五百人の合唱が、逃げ場のない清浄なプレッシャーとなって国王を包み込んでいった。
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第34話は、物語がいよいよ一国の頂点へと到達します。
行方不明となった騎士団を奪還すべく、自ら離宮へと乗り込んできたアルフレッド国王。しかし、そこで彼を待ち受けていたのは、武力による抵抗ではなく、想像を絶する「清浄なる空間」でした。
王の権威や歴史すらも「蓄積した不純物」として扱うフェイトの冷徹な合理主義と、かつての忠臣たちの変わり果てた姿。
一国の王が「世界の掃除屋」と対峙したとき、その価値観はどのように塗り替えられていくのか。緊迫と爆笑の「親征編」、ぜひお楽しみください!




