第35話:王都大清掃と「純白の行進」
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第35話は、離宮を飛び出し、ついに物語の舞台が国全体へと広がります。
「分別」を終えた国王と、最強の清掃集団と化した騎士団。彼らが向かうのは、長年の不摂生と腐敗が蓄積した王都です。
かつては武力で国を守った男たちが、今度は「バケツとモップ」を手に、どのような奇跡を起こすのか。
一粒の塵も許さない、空前絶後の「国家浄化作戦」が幕を開けます。ファンタジーの常識を洗い流す、圧倒的な爽快感をお楽しみください!
離宮の「概念のゴミ箱」を前に、崩れ落ちるようにして王家のマントを脱ぎ捨てたアルフレッド国王。彼が震える手でそれを穴へ投げ入れた瞬間、この国の歴史は決定的な転換点を迎えた。
純白の光に包まれ、物理的にも精神的にも「漂白」された国王は、数分後、これまでの肥満体形すらも「余分な老廃物」として削ぎ落とした、実に健康的な……いや、もはや別人のような爽やかな姿で這い出してきたのである。
「……フェイト殿。私は今まで、何を積み上げていたのでしょう。この軽やかな身のこなし。これこそが、民を導く王のあるべき姿だったのですね」
「ようやく分別が終わったようですね、陛下。ですが、陛下一人が綺麗になったところで、この国の『淀み』は消えません。見てください、あの水平線の向こうを」
フェイトが指差す先、王都の方向には、長年の重工業と腐敗した政治が吐き出す「不浄の雲」がどんよりと停滞していた。
フェイトは無造作に、背後のガウス将軍とヴォルグに合図を送る。
「ガウス、ヴォルグ。そして五百名の清掃騎士団よ。これより王都へ向け、第一次『国家規模特別清掃作戦』を開始する。目標は王都の全家屋、全道路、そして腐りかけた役人の根性だ。一粒の塵も残すな」
「「「「「了解!!」」」」」
地響きのような返声と共に、五百人のエプロン騎士団が動き出した。彼らはもはや馬には乗らない。磨き上げられた石畳を、摩擦を無視した独自の歩法「スライディング・ワイプ」で滑るように進み、一瞬にして離宮の坂を下っていく。
その先頭には、黄金のバケツと「聖なるモップ」を掲げたアルフレッド国王の姿があった。
王都の住人たちは、突如として地平線から迫りくる「純白の津波」に戦慄した。
当初は魔王軍の襲来かと恐れた市民たちだったが、彼らの前に現れたのは、凄まじい速度で壁を磨き、溝を浚い、窓ガラスを透明化させていく「世界一清潔な軍勢」だった。
「なんだ、この輝きは!? 隣の家の壁が鏡みたいになってるぞ!」
「見て! 川の底の石まで見える! 三十年ぶりに魚が戻ってきたわ!」
悲鳴は瞬く間に歓声へと変わっていった。
騎士たちは民家を襲う代わりに、玄関先の泥落としマットを最新魔法で除菌し、役所の不正書類をシュレッダーにかけて「再生紙」へと変えていく。
ヴォルグはといえば、王都で最も高い時計塔の頂上で、宇宙の塵を払ったあの技術を使い、空を覆う煤煙を巨大な魔法の掃除機で吸い込み始めていた。
「フェイト師匠……見ていてください! この空に、本当の青を取り戻してみせる!」
王都全域が泡と光に包まれ、物理的にも政治的にも「洗浄」されていく。
その光景を、離宮のテラスからお茶を飲みつつ眺めていたフェイトは、ふと手元のカップに映る自分の顔を見た。
「……少し、やりすぎたかな。まあいい、これでようやく『快適な生活』ができそうだ」
しかし、この「究極の浄化」が、汚れの中でしか生きられない魔王軍の残党や、不潔な取引で私腹を肥やしていた隣国の商人たちにとって、致命的な死の宣告となることに、王都の人々はまだ気づいていなかった。
第35話をお読みいただきありがとうございました!
ついに王都が物理的にも政治的にも「丸洗い」されてしまいました。
国王自らが黄金のバケツを持って先頭を走る姿や、摩擦を無視した独自の歩法「スライディング・ワイプ」で進撃する騎士団の姿は、もはや魔王軍より恐ろしい光景かもしれません。
ヴォルグも時計塔の頂上で「空を掃除する」という、勇者の才能をこれでもかと無駄使い(?)して覚醒しています。
さて、あまりにも綺麗になりすぎたこの国。
次は、この「清潔すぎる国」に耐えられなくなった魔王軍の残党が、不衛生な刺客を送り込んでくる「除菌vs汚染」の全面対決を描くか、あるいは隣国がこの輝きを「新兵器」と勘違いして宣戦布告してくる展開か……。
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