第33話:五百人の「人間洗濯機」
【前書き】
お読みいただきありがとうございます!
第33話は、五百人の騎士団が「洗濯物」と化したその後の、世にも奇妙な合宿(?)編です。
勇者奪還という使命を忘れ、雑巾を手に「清掃の快感」に目覚めていく精鋭たち。フェイトの合理主義が、王国最強の軍隊を世界最高の清掃ユニットへと作り替えていきます。
鉄の規律が「拭き掃除の規律」へと変わる、圧倒的な浄化の光景をお楽しみください!
離宮の広場には、前代未聞の光景が広がっていた。
王国最強と謳われた五百人の騎士たちが、自慢の鎧をすべて剥ぎ取られ、フェイト特製の「速乾性清掃着」に身を包んで整列していたのである。彼らの前には、巨大な泡の山と、見たこともない形状のブラシが山積みにされていた。
「ガウス将軍、納得してくれたようで何よりだ。君たちの鎧は今、地下の『超音波概念洗浄槽』で、長年染み付いた敗北の歴史ごと洗い流しているところだよ」
フェイトは高圧洗浄ノズルを肩に担ぎ、満足げに騎士たちを見渡した。
一方、将軍ガウスは、あまりの精神的爽快感に、もはや戦う意志など塵ほども残っていなかった。彼の瞳は、磨き上げられた鏡のように澄み渡っている。
「……フェイト殿。私は今まで、鉄の重さこそが騎士の誇りだと思っておった。だが、汚れを落とした後のこの『軽さ』……。これこそが、正義の真髄だったのですね」
「わかればいい。さて、君たちには今から、この離宮の外壁一万平方メートルを、手作業で磨いてもらう。……ヴォルグ、新人たちの指導を頼むぞ」
「了解しました、師匠! 全員、整列ッ! 雑巾の絞り方が甘い者は、バケツの水が透明になるまでスクワットだ!」
かつての勇者ヴォルグが、鬼教官のような顔で騎士たちを怒鳴りつける。
五百人の騎士による一斉清掃は、もはや一つの軍事演習だった。彼らが放つ統制された「拭き」の動作は、大気を振動させ、離宮周辺の魔力濃度を異常なまでに高めていく。
「……フェイト様。これでは王国軍が全滅したも同然ではありませんか? 城に帰る兵がいなくなってしまいますよ」
隣でエルシアが苦笑いしながら尋ねる。フェイトは、騎士たちが磨き上げた壁が日光を反射し、空を飛ぶ鳥が眩しさで進路を乱す様子を眺めながら、事も無げに答えた。
「問題ない。彼らは今、人生で最も有意義な時間を過ごしている。……それに見てくれ。五百人の『やる気』というエネルギーで稼働させたこのボイラーの出力を。これで離宮の全自動床磨きルンバたちが、あと三年は無給で動ける」
その頃、王国側では「五百の騎士団が離宮に吸い込まれたまま、一人も戻ってこない」という報告が入り、未曾有のパニックに陥っていた。
だが、離宮の門の内側では、世界で最も清潔で、世界で最もエプロンが似合う最強の「清掃軍団」が、静かに、そして確実に誕生しようとしていたのである。
第33話をお読みいただきありがとうございました!
「敗北の歴史ごと洗い流す」というフェイトのパワーワード。ガウス将軍がすっかり洗脳……もとい、洗身されてしまい、離宮がもはや軍事施設並みの統制された清掃現場になってしまいました。
ヴォルグの鬼教官ぶりも板についてきましたが、五百人の騎士による一斉拭き掃除は、もはや魔王軍も裸足で逃げ出すほどの威圧感(と清潔感)がありそうです。
一方で、戻ってこない騎士団にパニック状態の王国。
次は、しびれを切らした国王が、自ら「汚れの親玉」として、あるいは「究極のゴミ」として離宮へ乗り込んでくるお話にしましょうか?
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