第32話:王国軍の「衛生査察」
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第32話は、ついに王国軍の正規騎士団が離宮へと押し寄せます。
「勇者奪還」という大義名分を掲げ、殺気立つ五百の兵たち。しかし、彼らを迎えたのは武装した兵士ではなく、完璧に「整った」エプロン姿の元勇者でした。
力と力がぶつかるはずの戦場が、フェイトの支配する「清掃領域」へと塗り替えられていく、シュールで爽快な制圧劇をお楽しみください!
離宮の正門前に、鉄の唸りを上げて王国軍の正規騎士団が整列した。その数、五百。指揮を執るのは、王国の重鎮である「鉄壁」のガウス将軍である。
彼らの目的は、離宮に軟禁されている(と信じられている)勇者ヴォルグ一行の奪還、および離宮の主・フェイトに対する反逆罪での拘束だ。
「フェイトよ! 貴様の暴挙もここまでだ! 勇者殿をエプロン姿で屋根に吊るし上げ、あろうことか宇宙の塵を掃除させるなどという辱め、王国が許さん!」
ガウス将軍が叫ぶ。しかし、その声に答えたのは、門を内側から「優雅に」開け放つ一人の男だった。
それは、真っ白なエプロンを完璧な結び目で締め、手に純銀のバケツを提げたヴォルグであった。その肌は、かつての戦場の泥など微塵も感じさせないほど、内側から発光するかのように白く輝いている。
「……静かにしてくれ、ガウス将軍。今、庭の小石たちが『日光浴』を楽しんでいる最中なんだ。君たちの軍靴が持ち込んだ泥が、この清浄な大気を汚しているのがわからないのか?」
「……ヴォ、ヴォルグ殿!? その格好は一体……! 毒を盛られたのか? それとも洗脳魔法を!?」
ガウスが後退りする。かつて狂犬のように吠え、略奪に近い戦い方を好んだ勇者の面影はどこにもない。今のヴォルグからは、深い慈愛と、徹底した「整理整頓」への執念が滲み出ていた。
「洗脳ではない。目覚めだ。……見てみろ、将軍。君の持つその剣、目に見えない怨念の煤がこびりついている。そんな不衛生なものを振り回すから、君の剣筋はいつも『曇って』いたんだ。フェイト師匠に教わって、ようやく理解できたよ」
ヴォルグは懐から一枚の布……フェイトが「概念分解」の余剰魔力で織り上げた『極細繊維の聖布』を取り出した。
彼は電光石火の動きでガウスの懐に潜り込むと、抜剣すら許さぬ速さで、鞘に収まったままの剣を布で一拭きした。
「なっ……!?」
次の瞬間、ガウスの剣から黒い煙のような「穢れ」が噴き出し、消滅した。
重苦しかった老将軍の肩が、不思議なほど軽くなる。長年の古傷の痛みまでが、剣の錆と共に洗い流されたかのような感覚。あまりの心地よさに、ガウスは思わず膝を突き、涙を流した。
「おお……。この……心洗われるような爽快感は……何だ……?」
「それが『清掃』の力だ。……フェイト師匠。不法投棄……もとい、不法侵入者の予備洗浄が完了しました。次は彼らの鎧を、丸ごと酸性洗剤のプールに沈めてもよろしいでしょうか?」
離宮の奥から、フェイトがのんびりと姿を現した。その手には、巨大な「高圧洗浄ノズル」が握られている。
「よくやった、ヴォルグ。……ちょうど、離宮の外壁を二度洗いしようと思っていたところだ。将軍たちも、そのドロドロの鎧を脱いで『洗濯カゴ』に入ってもらおうか。拒否権はない。清潔は、義務だからな」
五百の騎士団が、一人の掃除屋と、エプロン姿の元勇者によって「洗濯物」として扱われる。
王国最強の武力が、一滴の洗剤と圧倒的な掃除技術の前に屈服するまで、あと数分とかからなかったのである。
第32話をお読みいただきありがとうございました!
五百人の精鋭騎士団を「洗濯物」扱いしてしまうフェイトと、その一番弟子(?)として見事な拭き掃除を披露したヴォルグ。剣を抜く暇もなく「心の汚れ」まで落とされて骨抜きにされるガウス将軍の姿には、掃除の持つ恐るべきポテンシャルを感じますね。
「清潔は義務」というフェイトの言葉が、王国軍に新たなトラウマ(と爽快感)を刻みつけました。
さて、騎士団までもが「除菌」されてしまった今、王国はいよいよ引くに引けない状況です。
次は、この報告を聞いてパニックに陥った国王が、自ら「汚れの根源」として離宮に乗り込んでくるお話にしましょうか?それとも、ピカピカになった騎士団がそのまま離宮の「庭掃除ボランティア」として居着いてしまう展開にしましょうか?
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