第29話:洗浄された勇者と「余熱」の活用
【前書き】
お読みいただきありがとうございます!
第29話は、すべてを失い「究極の清潔」を手に入れた元勇者一行の、その後の物語です。
装備もプライドも剥ぎ取られた彼らに、フェイトが提案(宣告)した意外な再利用方法。
掃除屋としての冷徹さと、どこか抜けた合理主義が光るフェイトの采配により、勇者たちの人生が劇的に、そして衛生的に書き換えられていく様子をお楽しみください!
「勇者のプライド」という名の黒い砂を塵取りに収めたフェイトは、玄関先で呆然と自らのツルツルな肌を見つめているヴォルグたちを一瞥した。
かつての仲間たちは、装備という名の「汚れ」を剥ぎ取られたことで、防御力も攻撃力も、そして何より人としての威厳もすべてが【還元】され、清々しいほどに無力な存在へと変わっていた。
「フェイト……お前、なんてことを……。俺の、俺の伝説の聖鎧が……ただの鉄板に戻って……」
「戻ったんじゃない、ヴォルグ。不純な魔力を吸いすぎて腐っていたから、本来の純粋な物質の状態に戻してあげたんだ。感謝してほしいくらいだよ。今の君たちは、この離宮周辺で最も『清潔な哺乳類』だ」
フェイトは淡々と語りながら、塵取りの中の黒い砂を、離宮の地下へと続くエネルギー循環パイプの投入口へと流し込んだ。
途端、離宮全体を包む空気の温度がわずかに上昇し、心地よい暖かさが広がっていく。勇者の傲慢さから抽出されたエネルギーは、意外にも高火力で安定した熱源となったのである。
「見てくれ、エルシア。ヴォルグの『選民思想』はなかなか良い燃焼効率だ。これで今夜の風呂の湯加減は最高になるぞ」
「それは良かったです、フェイト様。……ですが、あちらで震えている方々はどうされますか? 流石にそのままだと、次の『掃除』の対象になってしまいそうですが」
エルシアが指差した先では、庭の植物たちが、全裸同然で立ち尽くすミレーヌやヴォルグを「磨き足りない置物」と認識し、仕上げのワックスがけをしようと艶やかな葉を伸ばしていた。
「待て! 来るな! 洗うな! もう俺には何も残ってないんだ!」
ヴォルグが悲鳴を上げて逃げ惑う。しかし、摩擦係数を極限まで下げられた地面の上では、一歩踏み出すたびに足が滑り、滑稽なダンスを踊るように転倒を繰り返す。
フェイトはそれを見ながら、ふと思いついたように指を鳴らした。
「そうだ。せっかく綺麗になったんだ。君たちには新しい『仕事』を与えよう。……エルシア、倉庫にある予備の清掃用エプロンを持ってきてくれ」
「……まさか、フェイト様。彼らを雇うおつもりですか?」
「雇う? いや、これは『社会の浄化』の一環だよ。彼らは自分たちの手で世界を汚した。ならば、自分たちの手でそれを拭い去る責任がある。……ヴォルグ、君は今日からこの離宮の『雑巾絞り係』兼『排水溝のヌメリ監視員』だ。ミレーヌ、君は魔法で水流を作り、泡の粒子を整える『撹拌担当』になってもらう」
「ふ、ざけるな! 俺は勇者だぞ! なぜ掃除なんて……!」
「拒否してもいいが、その場合は庭の植物たちが、君を『分解可能な有機ゴミ』として堆肥にするまで追いかけ続けることになるけど、どうする?」
フェイトの背後で、巨大なハエトリグサのような形状に変異した『除菌プラント』が、ガチガチと音を立てて獲物を求めていた。
ヴォルグは顔を真っ青にしながら、震える手で渡されたエプロンをひったくった。
こうして、世界を救うはずだった勇者パーティは、フェイトの離宮で「掃除の見習い」という最も過酷で、最も清潔な修行を強制されることになったのである。
第29話をお読みいただきありがとうございました!
勇者のプライドを「暖房の燃料」として活用するフェイト。その無駄のないリサイクル精神には、エルシアも驚きを隠せなかったようです。
かつて世界を救うと豪語していた勇者たちが、今や「排水溝のヌメリ監視員」としてエプロンを締める姿には、因果応報を感じざるを得ません。
こうして離宮に新たな「清掃スタッフ(?)」が加わりましたが、果たしてヴォルグたちはフェイトの過酷な掃除修行に耐えられるのでしょうか。
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次は、修行中にヴォルグが「掃除の真理」に目覚めてしまう話にしますか? それとも、彼らを追ってきた王国の増援が、エプロン姿の勇者を見て固まる展開にしますか?




