第27話:不法投棄された「王命」
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第27話では、離宮での平穏な掃除ライフに、かつてフェイトを切り捨てた王国の影が忍び寄ります。
自分たちが手放したものの価値にようやく気づき始めた人々。しかし、再会したフェイトの価値観は、すでに彼らの想像を絶する高みに到達していました。
権威や命令すらも「汚れ」として扱ってしまう、フェイト流の潔すぎる拒絶劇をお楽しみください!
離宮の丸洗いを終えた翌朝、フェイトは庭の片隅で、新しく開発した「概念のゴミ箱」の試運転を行っていた。
これは、単に物質を捨てるだけでなく、そこに付随する「意味」を分別し、有用なエネルギーへと変換する究極の廃棄物処理システムである。
「よし、これで『賞味期限切れの不安』や『二度と着ない服への未練』も、クリーンな熱源として再利用できるようになったな」
フェイトが満足げに頷いていると、離宮の神聖な静寂を破るように、騒がしい蹄の音が聞こえてきた。
現れたのは、かつてフェイトを「無能」と断じて追放した王国の、豪華な装飾を施した騎士団の一隊だった。彼らは街で起きた「奇跡の浄化」の噂を聞きつけ、それが自分たちが捨てた「ゴミ拾い」の仕業であるとは夢にも思わずに、その「聖者」を召喚しに来たのである。
「聖者様にお取次ぎ願いたい! 我らは王国の使者である!」
先頭に立つ騎士が叫ぶ。だが、彼らは門をくぐることすらできない。庭の『クリーニング・アイビー』が、彼らの鎧に付着した「傲慢」という名の泥汚れを検知し、猛然と威嚇を開始していたからだ。
「おい、フェイト様。あそこにいるの、あなたが以前いた国の騎士団じゃないですか?」
エルシアが呆れたように指を差す。フェイトは目を細めてその集団を眺めたが、彼の関心は彼らの身分ではなく、その足元に向けられていた。
「困ったな……。あんなにドロドロの負の感情を抱えて、さらに整備不良の馬車まで引き連れてくるなんて。あれはもはや『不法投棄』に近いぞ」
フェイトはため息をつくと、ゆっくりと門まで歩いていった。
騎士たちは、出てきたのが自分たちが追い出した「フェイト」であると気づいた瞬間、一様に間抜けな顔を晒した。
「な……フェイト!? なぜお前がこんな神聖な場所にいる!」
「掃除をしに来たんだ。ここは俺の家だからな。それより君たち、そこから動かないでくれ。君たちが持ち込んだ『王命』という名の書類、ひどくカビ臭いぞ。今すぐ【概念分解】で無害化して、裏紙として再構築してやるから」
「何を言っている! これは王の直筆による、お前への帰還命令だぞ! 勇者パーティがガタガタなのだ、今すぐ戻って……」
「断る。俺は今、この離宮を世界で一番綺麗な場所にすることに忙しいんだ」
フェイトが指をパチンと鳴らす。
すると、騎士が掲げていた豪華な羊皮紙の巻物が、一瞬にして真っ白な「最高級の雑巾」へと姿を変えた。王の署名も、仰々しい封蝋も、すべては「汚れ」として綺麗に拭い去られたのである。
「あ、俺の命令書が!? 貴様、王への反逆か!」
「反逆じゃない、清掃だ。そんな汚れた紙を持って歩くのは不衛生だろう? さあ、庭が君たちの『邪念』を掃除し始める前に、早く帰ってくれ。次は鎧ごと洗濯機に放り込むことになるぞ」
フェイトの背後から、食虫植物ならぬ『食ゴミ植物』たちが、獲物を狙うようにその葉を広げる。
かつての仲間たちがどれほど窮地に陥ろうとも、フェイトにとっては目の前の「不衛生な訪問者」を片付けることの方が、遥かに優先順位が高かったのである。
第27話をお読みいただきありがとうございました!
王様からの大事な命令書を「カビ臭い」の一言で雑巾に変えてしまうフェイト……。権力や名誉といった世俗的な価値観が、彼の【掃除】の前ではいかに無力であるかが描かれました。
「次は鎧ごと洗濯機に放り込む」という宣告は、騎士たちにとって死の宣告よりも恐ろしいものだったに違いありません。
王国の使者を追い返したフェイトですが、勇者パーティの崩壊は止まりそうにありません。
果たしてこのまま離宮の静寂は守られるのか、それともさらなる「特大の汚れ」がやってくるのか。
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次は、逆上した騎士団が援軍を連れてくるお話にしますか? それとも、ついに勇者ヴォルグ本人が泣きつきにやってくる展開にしますか?




