第25話:都市全域「一斉清掃」の衝撃
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第25話では、街へ繰り出したフェイトの「ついでのお掃除」が、ついに都市規模の異変へと発展します。
本来の目的は買い出しだったはずが、ひとたび「汚れ」を見つけてしまった掃除屋のサガは抑えられません。
一人の男のこだわりが、街の景色だけでなく、そこに住む人々の運命までをも「洗浄」していく圧倒的なスケール感をお楽しみください!
フェイトが「概念武装(雑巾)」を構え、軽く一振りした瞬間、街の空気が物理的に震えた。彼にとってそれは、こびりついた汚れを浮かせるための「予備洗浄」に過ぎなかったが、常人からすればそれは、空間そのものを洗浄液に浸すような神聖な圧力だった。
「フェイト様、ストップです! 周りを見てください、みんな拝み始めています!」
エルシアの叫び通り、街の人々はフェイトから放たれる圧倒的な浄化の輝きに、伝説の聖者の再臨を確信して跪いていた。だが、フェイトの関心はそこにはない。彼の鋭い視線は、街の中核に鎮座する、あの薄汚れた時計塔に固定されていた。
「エルシア、見てみろ。あの歯車に溜まった百年分の『時の澱み』が、街全体の運命をわずかに遅らせている。あれを放置するのは、掃除屋の看板に関わる」
フェイトは地面を這ってきた『クリーニング・アイビー』の蔦を片手で掴むと、それに自らの魔力を流し込み、巨大なモップのように再構成した。
彼はそのまま、重力を無視して時計塔の壁を駆け上がる。蔦が壁面をなでるたびに、こびりついていた煤や錆、さらには「街の不況」や「病の種」といった負の概念までもが、シュワシュワという心地よい音を立てて消滅していった。
塔の頂上に到達したフェイトは、中心部の巨大な歯車に手を触れる。
「【分解】、そして【超純度洗浄】」
金属疲労という「不純物」を排除し、摩耗した箇所を【再構築】で補填する。一瞬にして時計塔は、造られた直後よりも遥かに精密で、神々しい白銀の輝きを放つ「聖なる遺物」へと変貌した。
その直後、街中に鳴り響いた鐘の音は、これまでの重苦しい音色とは一線を画す、魂の深層まで洗い流すような澄み切った響きだった。その音波が街全体に広がると同時に、路地裏のゴミ箱からは悪臭が消え、住人たちの顔からは長年の疲れという「くすみ」が剥がれ落ちていく。
「ふぅ……ようやく、街の解像度が上がったな。これでこそ『買い物』にふさわしい空間だ」
塔から降りてきたフェイトは、爽やかな笑顔でそう言った。だが、その足元には、蔦によって「徹底的に磨き上げられた」せいで、もはや皮膚が透き通るほど清潔になった隠密調査員たちが、魂が抜けたような顔で転がっていた。
「……フェイト様。これ、もはや買い出しどころじゃありませんよ。ほら、街の衛兵たちが『伝説の浄化士様』を確保……いえ、保護しようと集まってきています」
遠くから鎧の鳴る音が聞こえてくる。フェイトは少し困ったように頭を掻いた。
「困ったな。俺はただ、靴の裏の汚れを追いかけてきたうちの植物を回収しに来ただけなんだが。……エルシア、予定を変更して、早めに『帰還の掃除(瞬間移動)』で引き上げるか」
フェイトが指を鳴らした瞬間、二人の姿は一筋の清涼な風となって消えた。
後に残されたのは、かつてないほど美しく、摩擦係数が限りなくゼロに近い、滑りやすすぎるほどピカピカな広場と、あまりの清潔さに戸惑い、一歩も動けなくなった数万の市民たちだけだったのである。
第25話をお読みいただきありがとうございました!
時計塔を磨き上げた結果、街全体の運命の遅れまで解消してしまうとは……。フェイトの「掃除」は、もはや物理的な清掃の域を完全に超え、世界の理を整える神事に近づいていますね。
あまりに綺麗になりすぎて、市民たちが一歩踏み出すのを躊躇してしまうほどの「究極の街」が爆誕してしまいました。
嵐のように街を浄化して去っていったフェイト。
離宮に戻った彼を待ち受けているのは、安らぎのひとときか、あるいは街での騒動を聞きつけた新たな来訪者か。
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