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第24話:お買い物と「市井の汚れ」

お読みいただきありがとうございます!

第24話は、フェイトとエルシアが離宮を飛び出し、活気あふれる街へと繰り出すお買い物編です。

「世間一般の清潔感」を学ぼうとするフェイトでしたが、やはり掃除屋としての本能を抑えることはできません。

市場に並ぶ日用品から、街を騒がせる意外な再会まで。フェイトの規格外な「お掃除魂」が、静かな離宮を離れて街全体を巻き込んでいく様子をお楽しみください!

「摩擦を掃除しすぎる」という失敗を深く反省したフェイトは、翌朝、エルシアを伴って久々に人里離れた離宮を出ることにした。

 目的は、日用品の買い出しと、何より「一般的な清潔感」の再確認である。自分の基準が世間からどれほど乖離してしまったのか、一度街を見て回る必要があると感じたのだ。


「いいですか、フェイト様。今日は『掃除』は我慢してくださいね。街の汚れを片っ端から分解して回ったら、また大騒動になってしまいますから」


「わかっている。今日はただの買い物だ。……それにしても、街というのはこんなに『ノイズ』に溢れていたか?」


 二人が訪れたのは、ダンジョンから最も近い活気ある商業都市。だが、フェイトの目には、街の至る所が「未分別のゴミ」に見えていた。

 道端に溜まった魔力の澱み、不適切に放置された屋台の煤、そして行き交う人々が放つ、整理されていない雑多な感情の波。フェイトの指先が、無意識に【概念分解】の予備動作でピクピクと動く。


「……フェイト様、指が動いています。深呼吸してください。あの時計塔を見ても『歯車の錆を一掃して時間の誤差をナノ秒単位で修正したい』なんて思わないでくださいね?」


「すまない、エルシア。努力はしているんだが、あんなに腐食していては、時空の刻みが不正確になるのが目に見えていて……。ああ、あそこの石畳の隙間に詰まった『数十年分の歴史(泥)』も、本来なら高圧洗浄で根こそぎ落とすべきなんだが」


 エルシアになだめられながら市場を歩くフェイトだったが、立ち寄った雑貨屋でさらに頭を抱えることになった。彼が手に取ったのは、安価な「魔法の洗剤」とされる粉末。店主は「王都の貴族も御用達、どんな汚れも一瞬で真っ白だ!」と豪語していたが、フェイトの【鑑定】を通せば、それはただの界面活性剤に粗末な光魔法を混ぜただけの代物だった。


「店主、これは『真っ白』にするんじゃない。『白い絵の具を上から塗って汚れを隠している』だけだ。これでは汚れの核が残留して、数年後には素材そのものを腐らせる。……少し失礼。成分を【再構築】して、根本から分解する構造に書き換えておいてやろう。ついでに、使用者の『掃除への情熱』を増幅する精神感応触媒も混ぜておいた」


「待って、フェイト様! 勝手にお店の商品を『真の洗剤』に作り替えないでください! その洗剤、使った瞬間に家が消えるほど綺麗になっちゃいます!」


 エルシアが止めるのも間に合わず、フェイトが袋に触れた瞬間、洗剤から眩いばかりの浄化の光が溢れ出した。驚いた店主が「神の啓示だ!」と叫んで腰を抜かす中、フェイトは「これでよし。これが本当の『掃除』だ」と満足げに頷く。


 その時だった。市場の喧騒を切り裂くように、数人の男たちが逃げ込んでくるのが見えた。それは、昨日フェイトの庭で植物たちに「洗浄」され、命からがら逃げ出したはずの隠密調査員たち。彼らは服こそボロボロだが、フェイトに磨き上げられたせいで、肌だけは異常なほどツヤツヤと陶器のように輝いていた。


「あ、あの離宮には化け物がいる! 木が! 草が、俺たちを洗おうとしてくるんだ! 爪の間の汚れまで執拗に追いかけてくるんだよ!」


 発狂気味に叫ぶ彼らの背後には、なんと、庭の植物の一節が「靴の裏に付着した泥」というターゲットを追って、街の中までタイルを這って伸びてきていた。


「……フェイト様。あれ、うちの『クリーニング・アイビー』ですよね? 飼い主に似て、一度決めた汚れは地獄の果てまで追いかける主義みたいです」


「おっと。どうやら、彼らが持ち出した『汚れ』がまだ残っていたみたいだな。アイツは未分別のゴミを見逃さないんだ。……仕方ない、街の衛生管理のためにも、ここで一気に『仕上げ』をしてやるか」


 街のど真ん中で、フェイトが本格的に腰を据えて、空間の澱みを拭き取るための「概念武装(雑巾)」を取り出した。彼にとっては親切心によるアフターケアだが、周囲の人間にとっては、世界を白く染め上げる「浄化の災厄」が始まったようにしか見えないのであった。

第24話をお読みいただきありがとうございました!

「汚れを隠すのは掃除ではない」というフェイトの熱いこだわりが、雑貨屋の安物洗剤を「神の浄化剤」へと進化させてしまいました。あの店主、明日からは普通の洗剤では満足できない体になってしまったことでしょう。

そして、まさかの「追跡する蔦」。フェイトの教育が行き届きすぎて、植物たちまで執念深く汚れを追いかけるようになってしまいましたね。


街のど真ん中で「概念雑巾」を取り出したフェイト。

果たしてこの街は、彼の「仕上げ」によってどれほどピカピカにされてしまうのでしょうか。

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