第21話:勇者パーティの「焦土」とフェイトの「新芽」
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第21話では、フェイトを追放した元パーティの「その後」と、フェイトが手掛けた庭の「その後」が対比して描かれます。
フェイトがいなくなったことでゴミ溜めと化した勇者たちの道中に対し、ゴミ(怨念)を肥料に変えた離宮はさらなる進化を遂げます。
あまりに極端な「格差」と、意思を持ち始めた庭の植物たちのシュールな光景をお楽しみください!
フェイトが黄金に輝く「概念の肥料」を庭に撒き、穏やかな眠りについていた頃。ダンジョンの中層付近では、かつて彼を追放したSランクパーティ『勝利の栄光』が、かつてない窮地に立たされていた。
「くそっ、何なんだよこの状況は! 魔物の湧きが異常だぞ!」
リーダーのヴォルグが、自慢の聖剣を振り回しながら怒鳴り散らす。
彼らが今戦っているのは、本来ならこの階層には出現しないはずの『混沌の汚泥』の群れだった。それは、かつてフェイトが「掃除」として密かに処理していた、ダンジョンの老廃物が具現化した魔物である。
「ヴォルグ、ポーションがもう底をついたわ! それに、装備が……装備がボロボロなのよ!」
魔導師のミレーヌが悲鳴を上げる。
フェイトという「掃除屋兼荷物持ち」を失った彼らのパーティは、今や崩壊寸前だった。以前はフェイトが移動中に装備を【分解・再構築】してメンテナンスし、拾ったゴミを即座に最高級の消耗品へ作り替えていた。だが、今の彼らには予備の武器も、まともな回復薬も、そして「安全な休息場所」すら存在しない。フェイトが去った後の通路は、瞬く間に魔力の澱みが溜まり、魔物の巣窟と化していたのだ。
「あいつだ……あの無能なゴミ拾いが、何か細工をして逃げたに決まってる! あいつがいなくなってから、ダンジョンが急に不衛生になりやがって!」
自分たちの無知を棚に上げ、ヴォルグは逃げ惑いながら毒づく。彼らはまだ気づいていない。自分たちがSランクとして輝けていたのは、フェイトという存在が、世界の「不浄」をすべて背負い、片付け続けていたからだということに。
一方、そんな罵詈雑言など届かぬ離宮の庭では、フェイトが撒いた「黄金の肥料」が、奇跡のような光景を作り出していた。
翌朝、エルシアが目を覚ましてカーテンを開けると、そこには昨日までの「庭」という概念を超越した、エデンの園のような神域が広がっていた。特使たちの「執着」や「恐怖」を反転・浄化して作られた肥料は、植物たちに爆発的な進化をもたらしたのである。
「……フェイト様。これ、もう『庭』じゃなくて『新世界』になっていませんか?」
庭に降り立ったエルシアが、自身の身長ほどもある巨大な花を見上げて呟く。その花びらからは、吸い込むだけで寿命が百年延びそうなほど純粋な魔素が溢れ出し、周囲の空間そのものをクリスタルのように凝固させていた。
「ん? ああ、やっぱり肥料が効きすぎたか。特使たちの『未練』が意外と栄養豊富だったんだろうな。見てみろ、あっちの雑草なんて、勝手に意思を持って庭の砂利を並べ替えてるぞ」
フェイトが指さした先では、肥料を吸って進化した草たちが、健気に触手のような葉を動かして、歩道の石をミリ単位で整列させていた。
「……植物まで『掃除』を始めたんですか?」
「家主が掃除好きだと、家もそれに応えるもんだ。これなら俺が掃除をサボっても、庭のメンテナンスはこいつらがやってくれるな。いいリサイクルになった」
フェイトは満足げに頷くと、進化した薬草の一角を「朝食の彩り」として無造作に摘み取った。
元パーティが泥にまみれて絶望の淵を彷徨っているとは露知らず、フェイトは進化した植物たちに「そこ、もう少し右を高くしてくれ」と掃除の指示を出しながら、清々しい朝の空気を胸いっぱいに吸い込むのだった。
第21話をお読みいただきありがとうございました!
かつての仲間たちが泥沼で苦しんでいる一方で、フェイトは植物たちに「掃除の教育」を施すという悠々自適な生活を送っています。
人間の負の感情すらも、適切に処理すれば「自律型掃除植物」のエネルギー源にしてしまう。フェイトの合理的な美学は、ついに生態系まで変え始めてしまったようです。
勇者たちの自業自得な末路と、さらに神々しくなる離宮の日常。
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