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COIL  作者: Tyr (テュール)


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3/4

Catalyst(2)

立ち並ぶビルの隙間、街灯(がいとう)がかろうじて届く静かな路地裏で、二人はようやく足を止めた。遠くでパトカーのサイレンが重なり合い、夜の空気を震わせている。



「ひとまず、ここまで来りゃあいいか...これから騒がしくなりそうだな」


夜の冷たい空気を吸い込みながら、壁にもたれかかり、光はそう呟いた



「だろうな、今頃、警察や報道連中は大慌てだろうぜ」


テュールはそう応じて、上着のポケットから先程回収した紙を取り、指先から  小さな炎を出し。照らしながら、改めて中身を見る


「……で、俺が拾ってやったその、お土産、 少しは読めそうか? 少なくとも、

遠回しなラブレターとかじゃ、ないと思うぞ」


「まあ、愛の告白じゃなさそうだな」





  ●            

               

    ●   ●     ●





「...暗号に見えなくもないが、この点は一体なんだろうな?ただの落書きなら 良いんだが」


「さあな...犯行の方法を暗号でやり取りをしていたとかか?」


「無くはなさそうだが、それなら電話か、普通に会って話せば済む話だろ」


光のごもっともな指摘にテュールも頷く。


「それは、そうだよな、...まあこれが解けたとしても逃げたやつの手がかりになるのか、わかんねえし。解くだけ無駄かもな」


「携帯の方はどうだ?」


「...見たところ、ほぼ新品みたいだな、」


「どうして分かる、真新しい機種だからか?」



「それもあるが、この携帯の充電口には充電器を差し損ねた時につく傷が一つもない、使い始めて2、3週間もすりゃ嫌でもつくのにな。それに内部やキーパッドの(ふち)に埃も溜まってない...着信履歴については数件あるが、すべて非通知だ。名前どころか電話番号すら無いな」


「...ふん、これといった手がかりにはならない、か...」


「...いや、そうでもねえさ。言ったろ、ほぼ新品だって。購入されてから日が浅い可能性が高いってことだ、この機種の直近の購入者を調べればあるいは、な...」


「...冗談言うな、販売されてる場所は一つじゃねえだろ。本人以外や宅配で買った可能性も無いとは言い切れない...結局のところ容疑者が数百人に減るだけだ。」


「その通り...まあ、だからお前の言う通り、大した手がかりにはならな―――」



その言葉が夜風に消えるよりも早く、掌の中で、先ほどまで沈黙していた携帯が 震え出した。




「...非通知だ」


二人は視線を交わすと、迷わず電話を取った。



「もしもし?」


テュールがそう声を掛ける



「...やあ、こんばんは、...それとも、はじめましてのほうが良いかな?」



そう言い携帯から聞こえたのは、低く、深みのあり、どこか掴みどころのない声。男性で、おそらく30代から40代あたりと思われる。


「お名前を聞こうか」



「...名前、ねぇ?「COIL」と、言えばわかるか?」


その言葉を聞くと電話越しの相手が僅かに高揚した気がする


「...おやおや、かの有名な探偵殿のご登場とは、光栄だね。楽しかったかい? 私の足跡を必死になぞる時間は?」


こちらの素性を察するやいなや、相手は、挑発的な言葉を投げかけてくる。


「ふむ...声からして...どうやら、君は、私が思っていたより若いようだ..」



「...はて、さっきから何の話だ?」


それに対してテュールはなにか試すように、しらばっくれた態度で男に問いかける



「...とぼける必要はない、少し前まで、君が倒した者達と共に私も居たんだ...もっとも衣装のせいで顔は見えなかっただろうがね」




「ほう?あれが普段着ならセンスを見直したほうがいいぞ。」


「ご心配どうも、だがあれは舞台衣装だよ、君という予期せぬ、乱入者のお陰で 今宵の演目は狂ってしまったがね..」


(...こいつ、俺が見た黒装束なのか?)


「.....よく言うぜ、あんた、最初から俺をおびき出すつもりだったんだろう?」


テュールは呆れたような口調でそう吐き捨てる



「なんのことかな?」


「とぼけるなよ、今までの5件の殺人の手口は非常に巧妙だったが、今回の事件はお粗末だった...まるでどうぞ、見つけてくださいと言っているようだった。」


テュールの発言になぜだか、相手の高揚はさらに一段と跳ね上がった気がした。



「長ったらしいのは嫌いだ、用があるならさっさと言え」



「……フ、ハァァ…ハハハ…ハハハッ……………いや、これは失敬、どうやら君にして正解だったようだよ、COIL君...君こそ私の観客にふさわしい...」


「あ?」


テュールどこか不愉快そうに反応する



「なあに...そう警戒する必要はない、...私の名は御堂雄二(みどうゆうじ)、君には私が試練を 乗り越える姿を見る、観客になってもらいたいのさ...」


電話越しの相手は隠そうともせず堂々と名前を言ってきた


「試練?」


「ああ、悪魔の試練だよッ」

電話越しの相手の声がさらに深く、激しく高ぶった



「私と君は..新たな世界に旅に出るのさ...理屈や法則が通じない混沌とした、 暗闇の世界へとね..今までの世界は、瓦解し、()()()()()()...君は気づくだろう、君が見ている世界は、私が許した範囲でしかないことに..君のこれまでの人生はこの瞬間、私に巡り合うための長い前奏曲に過ぎなかったと。そして君は――」




一方、二人は御堂の言葉を聞く半面、(何いってんだこいつ?)と言う感じの、  なんとも言えない顔で見つめ合っている



「...随分と、まあ、素敵なポエムだな。でも、そういうのは思春期の思い出と 一緒に卒業したほうが良いぞ?」


「...私の忍耐を試すのは構わない。だが、その結末に耐えられる器が君にあるかな?」


こちらの言葉で少しでも沈黙か動揺でもすると思ったが、御堂は際限なく返事をする



「まだ人は()()。だが、君には止められない」



「.....なんだと?」


これまで多少、適当にあしらっていたテュールだったが、その言葉で声が鋭くなった。


「言っただろう?君は観客だと。私の舞台をただ眺めているだけのね...」


御堂は淡々とそう告げる


「だが、舞台がただシナリオ通りに進むのも面白くない...僭越(せんえつ)ながら君のためにいくつかヒントを用意しておいたよ...ヒントを()()合わせば、謎は解けるだろう。」



御堂の見下した発言の数々にテュールも異を唱える


「...もっと早くに、お前のくだらないお遊びを止めさせるべきだったな、

そうすれば、罪のない5人が救われた」


そう吐き捨てるテュールの声は先程よりも低く、拳には無意識に力が込められていた。


「必要な犠牲だったさ。」


御堂の言葉には後ろめたさなどまるで無く、当然のことのように呟く。



「ほう?そうか...だが生憎(あいにく)と、俺は大人しく舞台を眺めてるような

観客じゃないんでね。」



「君に私は止められない...君にこの事件()は解けない。」




 『いや、それは間違っているぞ。』


向こう側とこちら側。姿は見えずとも、今この時に両者には殺意に似た、確かな 境界が生まれた



通話終了を告げる無機質な携帯の電子音と。遠くで鳴っているパトカーのサイレンがより一層大きく、夜に響いている...



「.........」


「随分と熱烈な招待だな、胸焼けしそうだ。」


光が沈黙を破りそう尋ねると、かさついた風が、二人の頬を撫でた。


「どうする?相棒。」



「......新鮮な空気を吸いに行こう」


神妙でいて、どこか吹っ切れたような表情を浮かべて、テュールはそう呟いた―――









まさか前回の投稿から一月以上も経ってしまうとは夢にも...割と思っていました。いやもちろんこんなつもりではなかったんですが。最初の5日間くらいはただ単純に書けないていうのが続いてですね...でもその後すぐに半分近くは書き上げていたんです。が、そのあと体調を崩してしまい発熱などで物理的に書けなくなってしまい、さらになぜか症状がぶり返して再熱するっていう...コンボを食らってました。何回も書き直していくうちに思ったんですが、一つ一つにこだわりすぎてたなって思い...これを機にこれからは一旦もうちょっとシンプルに書こうと思います。長々とすいません。

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