Catalyst (3)
今回は説明的な描写が多いので自信ないです...
気づいたら6000文字くらいいってました。(疲れた)
―――真夜中、もう夜もずいぶん遅くなった頃。とある病院の病室では、
まだ明かりがついていた
「...ん..っ...」
真由美の喉から小さな声が漏れた。
ゆっくりと瞼を持ち上げると、目に飛び込んできたのは、白い天井と
頬杖をつき、鼻提灯をだしながら椅子に座り、寝ている千尋だった。
「...ふぁ〜〜...先輩ぃ〜」
その時、千尋の鼻提灯が割れた
「ふぁ!......う〜んっ..ん?先輩?...先輩っ!、目が覚めたんですかぁ!」
「あ...千尋ちゃ――あ、ちょっとっ!」
「先輩ぃ〜〜!、心配したんですよぉ〜!先輩が誘拐されちゃってっ、
私もう心配でッ、心配でッ〜(泣)」
目覚めるなり千尋は鼻水を垂らしながら、
子供のように大泣きして真由美に抱きつく。
「あ..ちょっと、苦しい..千尋ちゃん...」
「ああっ、すみませんっ....でも私、本当に心配でぇ〜...
良かったですぅ〜(泣)先輩が生きててぇぇぇ〜...」
真由美の言葉で千尋はひとまず真由美から離れ、席に座り直す。
そうする千尋を見て、真由美も自分の状態に目を向けた。いつの間にか味気のない入院着に着替えさせられていて、頭には軽く包帯が巻かれており、ほどかれた長い髪がシーツに垂れている。
そして数分後、千尋がひとまず落ち着きを取り戻し始め、口を切る。
「...先輩、大丈夫ですか?...痛いところとかありませんか?」
「ああ..うん、大丈夫...ありがとう。」
「...お医者さんが言うには軽い打ち傷だけだからすぐに退院できるそうですよ...でも本当に良かったです。私だけじゃなく、管理官も心配で、さっきまで 居たんですよ」
「...お父さんが?」
千尋が言う管理官とは真由美の父で、管理官である近藤警視のことだ。
「でもお父さ――...管理官は、今は警護対象になってて、
出歩けないはずじゃ?」
「ああ、はいぃ...えっと、順番に説明しますね。」
そう言うと千尋は鼻水を拭き、姿勢を正して椅子に深く座り直した
「...先輩も知っての通り、殺害された被害者は全員、10年前の殺人未遂事件の捜査にあたっていた内の5名でした。そのことから、10年前の事件の犯人だった黒崎登矢が容疑者としてあがり。当時、現場で黒崎を逮捕した6人を狙ったものと推測されて、最後のターゲットと思しき、管理官を警護し、黒崎を逮捕するはずでした。」
「...うん、確かそう決まったわよね」
話し始めるやいなや、千尋はさきほどまでとは別人のように切り替え、冷静に 真由美に状況を説明し始める
「はい、ですが同時刻、先輩と急に連絡が取れなくなってですね、先輩は連絡も せず突然持ち場を離れるような人じゃないですし、...でも探しても見つからなくって。仕方ないので先輩と最後に会った場所から監視カメラの映像を辿ったんです。そしたら先輩が襲われて連れ去られるところを見て、それで急遽、
先輩の捜索が始まったんです。先輩は、襲われた時のこと覚えてますか?」
「..ええ、確か、道端に倒れてる人が居て...大丈夫ですかって、近くに行って 声をかけたら、後ろから誰かが凶器を持って襲いかかってきたの。咄嗟だったけどなんとか避けて、その一人は取り押さえたんだけど。どうやら倒れてた人も仲間だったみたいで、後ろから頭を殴られて...その後は...もうよく覚えてないんだけど...」
真由美が頭をそっと押さえ、そう語ると、千尋は深く頷いた
「なるほど...というか、先輩さらっと一人持ってってるんですね...」
「.....? 今なにか言った?」
「いえ、なにも!流石です先輩。」
真由美の相変わらずさに安堵しつつも千尋は続ける
「でも問題はその後なんです...先輩が拐われたと分かった後、
すぐに捜査が始まりましたが、犯人の手がかりは一切なく、正直...先輩の捜索は絶望的だったんですよ...」
千尋は愁いを含んだ顔で呟く
「...それじゃあ、どうやって私を見つけたの?」
真由美は首を傾げて、素朴な疑問を口にする
「その時に、一件の通報があったんです」
「通報?」
「はい、発信された場所は現場近くの公衆電話で、声は変声だったそうですので、通報者の手がかりは少ないんですが。警察官連続誘拐殺人の犯人を見つけたから、
来てくれって、そう、一言だけ通報があったんです。」
「見つけたからって、そんな...軽そうな言い方で?」
千尋の話を真面目に聞きつつも、真由美は思わず眉をひそめて、半信半疑になって問いかける。
「先輩と同じで、みんな最初はいたずらじゃないかって疑ったんですけど、管理官が他に手がかりもないからって、上に進言して、SATを動かしたんです。」
そう語る千尋の表情は先程よりも引き締まっており、真剣な表情でとても冗談を言いそうな顔ではない。
「その後に通報のあった場所に行くと...建物の中から銃声が聞こえてきて、すぐに突入したんですが...私たちが踏み込んだ時には、もうすべてが終わってたんです。」
「終わってた?」
「はいっ、突入した建物には黒崎も含めて、実行犯と思われるやつらが全員... ボコボコにされて倒れてたんですよ!」
思い出しても信じがたい出来事に千尋も思わず口調が素に戻ってしまい、
目を見開いて、真由美に顔を寄せる
「千尋ちゃん...近い!...近い!」
「あぁぁ...!すみませんっ!」
真由美がそっとなだめると、千尋もそっと表情を元に戻した
「うっ!ううん(咳払い)......凶器なども丁寧に、袋に入れて集められていて、先輩も無傷で寝かされてて、まるで嵐が通り過ぎたような光景でした。」
「それじゃ..誰かが、犯人達を倒して、私を助けてくれたってこと?一体誰が?」
「...それがわからないんです、一応いま、通報があった現場近くに
目撃者が居ないかと、付近の監視カメラの映像を確認しているんだそうです。」
改めて状況を整理してみても、信じがたいような出来事に二人は思わず顔を
見合わせて頷きあう。
「...本部もその話でもちきりなんですよ、影の自警団が動いてる〜とか、やめた警官が私的に動いているんじゃないのか〜とか、色々と根も葉もない話も立ち始めてるみたいですけど、でも、小耳に挟んだんですが、実は今までにも似たようなことが何回かあったって噂もあるらしいんですよ。あっ、そういえば、異能を持った人間の仕業なんじゃないかって、話もありましたね...」
「異能を持った人間...異能者ってこと?」
「はい、いや..もちろん、決まったわけじゃないんですが、黒崎たち犯人はそれなりに大勢でしたし、集められていた凶器からみて全員、武装していたものと思われます。それだけの人数を短時間で制圧するなんて、それ以上の人数と武器が無いと、とてもじゃないですが無理ですよ。」
「それは...確かにそうね。」
「それに変じゃないですか。もし犯人達を全員倒せたのなら、わざわざ凶器を集めるのも手間ですし、まるで先に凶器だけを奪い取ったみたいな...そんなふうに 思えちゃいました。それだけじゃありませんよ、現在も現場の検証が続いているんですが、銃声が聞こえたのに弾痕や薬莢は一切見つからなかったんです。おかしなところだらけですよっ。」
「本当ね...だから異能者が関わってるんじゃないかって?」
「はいっ、まあ..おそらくですが、先輩はどう思いますっ?」
千尋はもはや刑事らしい口調も半ば忘れつつ、喋り続ける
「...どうだろう...それだけで決めつける事はできないけど、凶器は犯人が 目覚めた時にまた取られないように集めたのかも知れないし、弾丸が見つからなかったってことは、たとえば..どこから仕入れたのか知りたくて、その誰かが持ち去ったとかなのかも。いやでも、それなら尚更、弾痕がないのはおかしいわよね?」
千尋と対象的に真由美は冷静に考えて意見を述べる。
「...それでもやっぱり、今の情報だけじゃ判断できないわね...」
「まあ..そのとおりだと思います、...それに今は誰の仕業かわかりませんが、 少なくとも上は黙っていないでしょうし...なにせ警察官連続殺害事件っていう、警察の威信をかけた大事件を、誰ともわからない第三者に解決されてしまった。と言うふうに考えるでしょうし、警察の面目は丸つぶれってと思うでしょうから。」
そう言う千尋とは対象的に、考え事をしているのか真由美は神妙そうな表情で黙り込む、
「面目..か。もし上層部がその誰かを捜索するって言ったら、その人も捕まえなきゃいけないのよね...私を助けてくれたけど、その人も少なからず法を破ってるでしょうし、警察からしたらその人も犯罪者...でも、その誰かが助けてくれなかったら、私は今頃ここに居なかったかも知れない...私個人としては、その人に感謝するべきなんでしょうね。はぁ… 自分でもちょっと複雑だわ...」
真由美は苦笑いを浮かべながら、そう溜め息を吐く。
「...別に..いえ、全然おかしくないと思いますよ!。先輩らしくていいと思いますっ。先輩は先輩ですから!」
ため息を吐く真由美を見て、千尋は元気いっぱいの笑みで、真由美を肯定する。
「...フフッ..ありがとう」
千尋の言葉に真由美も思わず笑みを浮かべる
「それに、もし仮に捜査が行われるなら、一課だけじゃなく、特務課と合同の捜査になるかも知れませんね。」
「...特務課って、確か、異能によって起こった犯罪を解決するために、少し前に作られた課よね?」
「はいっ、確か、そうでした。」
「出来たばかりで、よく知らないけど、どんな課だったかしら?」
「私もよく知らないですけど、10人くらいの小さな部署らしいですよ。」
「そうなの?てっきり、もっと大所帯なのかと...」
真由美は想像していた大きな、イメージ像よりも小さく感じられ、思わず目を丸くしてきょとんとした表情を浮かべる。
「なんでも、みなさん結構若いらしくて、私たちとあまり大差ないかも知れません。」
「もし本当に異能者の犯行のなら、私も特務課に事情聴取されるのかも知れないわね。」
「そうかも知れませんね、...そういえば先輩はその誰かに助けられた時のこと、何か覚えてたりします?」
「..私?...え〜と...」
千尋の言葉を聞いて真由美は必死に頭の奥から朧気な記憶をひねり出そうとするが、真由美としても起床直後ともあり、たった今千尋から聞いた事も含め、出来事の数々に、少々こんがらがってきてしまうのも無理はなく、困惑気味におどおどとしてしまう。
「ごめん、ちょっと今はまだ...」
「ああ..気にしないでくださいっ!きっと後で山程、事情聴取されるでしょうし...そのときに思い出せばいいですよ!」
「うん...ありがとう。」
千尋の質問に答えられず申し訳なさを感じながらも、真由美は薄く笑みを浮かべて答えた。
「...それに、色々とあったけど。これで事件はひとまずは終わりってことなのよね?犯人達も捕まったわけだし。」
「ああ..えっと..実は、先輩、話はまだ終わりじゃないんですよ。」
千尋は言葉に詰まり、小さく息を呑んだ。
「..?...まだ..ほかに、なにか?」
「その...実際に見たほうが早いと思います。」
そう言って千尋は病室に備えてある、テレビをつけた
(―――繰り返します、東京都内で起こっていた、警察官連続誘拐殺人事件に関して、先程、新たに『自分が首謀者』だと話す男が出頭してきたことが、警視庁への取材で分かりました。警察は犯人グループとの関係を調査し―――)
「..出頭!?..自首してきたっていうことっ?」
「はいっ、というのも、黒崎たちを捕まえて本庁に連行した後すぐ、
本庁に『御堂雄二』と名乗る男が自首してきたんです。私も一度姿を見たんですけど、全身真っ黒な服で、なんかよくわからない、芝居がかったことばかり言っててちょっと不気味でした...」
千尋は思い出してもまだ不気味なのか、顔に不快感を表す
「...首謀者ってことは、その人が今回の事件を指示していたってことよね?
...仲間が捕まって、自分も観念したのかしら..」
真由美は驚きはしたものの、すぐに冷静に疑問を口にする。
「だと思いますけど、...でも正直よくわからないです、ひと目見ただけですけど、罪悪感を感じて出頭した……って様子じゃなかったですし、なんでこのタイミングで自首してきたんでしょう?」
千尋も改めて、腑に落ちないと呟くが。二人は眉をひそめて頷きあうしかなかった。
「..警察官の連続殺人に..正体不明の第三者の介入..おまけに首謀者の自首...最後まで、独特な事件になったわね。」
「まったくです..でも、まあ..ただ、先輩の言う通り、これで一応事件も一段落したと思います。犯人も全員捕まって、首謀者も自首しましたし...これで..今度こそ終わりですねっ。先輩も無事でしたし!」
千尋は小さく、けれども明るく笑うと、あっ、看護師さんに、先輩が起きたって伝えてきますね!と言い席を立った。
「あぁ、うん..お願い。」
真由美も腑に落ちないと思いながらも小さく返事をするが、その表情は何処か暗い...主犯の黒崎は捕まり、事件の首謀者を名乗る御堂も自首した。事件は解決したはず...それなのに、胸の奥をざわつかせる、この冷たい違和感はなんなのだろう...
―――その時、ふと、真由美の脳裏に、ある記憶が蘇った。
...それは、霧のように微かな、...誰ともわからない記憶...だが段々と、頭の奥から溢れ出すように 記憶が湧き出してくる。
「..っ!....千尋ちゃん!..私、そういえばっ!、一度目が覚め――」
千尋に伝えようとすぐに声を上げるが、呼び止める間もなく、千尋はパタパタと小走りで病室を走り出て行ってしまう。
「..あぁ..行っちゃった...後で伝えないと...」
静寂に包まれた病室で、真由美は一人、記憶を思い起こしていく。
自分が見た、二人の人影、おそらく男性で..一人は手袋をしていた..そして、確か...手首に、滲んだ火傷のような痕があったはず...
「...私を..助けてくれた人......私が見つけなきゃ。」
次から、テュールたちの視点で動いていきます。
登場するキャラ多めかもしれません。
次の投稿は遅くなると思います。




