タピオカミルクティーとはなんぞや
俺、アレックス・ドラナヴァクは異世界の勇者だ。
【魔王レイド】によって絶望の危機に瀕していた世界【フィルネスタ】を救うために、俺は魔王討伐隊――通称【勇者パーティー】を結成。魔王討伐の旅の中で5人の優秀な仲間を俺は勇者パーティーにスカウトした。
規格外の魔力をその身に有する魔女 レーナ・ストライゼ。
強靭な肉体と鋼の精神を持つ大男 マウンタ・アッシュ
桁外れの治癒魔法を行使し死者蘇生すらも可能とする聖女 サリィ・マリトーワ
人並外れた瞬発力と動体視力を有する双剣使い マークス・ロードアウト
森の賢者の異名を持つエルフの少女(3000歳) エルフィ・エメラルド
その5人の仲間とともに旅を続けて6年。
ついに魔王城にたどり着いた俺たちは魔王レイドと壮絶な戦いを繰り広げた。
勝利まであと一歩というところで魔王は転移魔術を使って別世界へと逃走した。
なんと、その際に俺たち5人も魔王の転移魔術に巻き込まれて別世界へ転送されてしまった。
同一世界ではあるもののパーティ全員が異なる地域に転送され、勇者パーティーは一時的に解散という形に。
日本という国に転送された俺は世界中に散った仲間たちを集めるため、Yautubeと呼ばれる有名動画投稿サイトにて、ダンジョン攻略やモンスター討伐をメインとするチャンネル【ゆうしゃちゃんねる】を作った。人気Yatuberになって俺の名を仲間たちに知ってもらうために。
だが、現実はそう甘くない……
「この3000円、何に使うべきか」
俺、アレックス・ドラナヴァクは日雇いのバイトで得た千円札3枚を握りしめながら、夕暮れに染まる渋谷の通りを1人でほっつき歩いていた。何のあてもなくフラフラと。さながら墓場を彷徨う不死者のように。
「……」
移動販売車の中にいる若い女性店員が俺の顔をチラチラと覗いている。
俺の顔に何かついてるのだろうか。
それとも俺が異国の人間だからと警戒しているのだろうか。
日本の人間たちは俺の祖国の人間と顔の作りが若干異なる。
俺の故郷の国の人間と比べて日本人の顔は平坦でのっぺりしている。
髪の色も黒がほとんどで、俺と同じ金髪の人間はほとんどいない。
俺がこの国で浮いてしまうのも仕方ないか。
「……」
この店員、まだ俺をジロジロと見ているな。正直しつこい。
気になった俺はその女性に視線を向ける。
すると目が合った。瞬間、女性店員の顔が紅潮する。
「どうした? 俺の顔に何かついているのか」
「あっ、いえいえ! 別に何もついてませんよ」
「そうか。ではなぜ俺の顔をジロジロと見つめていた?」
「……えっ、えーっと、そのぅ、あの……」
女性店員は何やら慌てているようだ。
この国の女性は俺に見つめられると決まってこうなる。
で、食事やカラオケに誘われるのだ。本当にめんどくさい。
「……なんのお店なんだここは?」
「タピオカドリンクのお店ですが……」
「すまん。ドリンクは分かるのだが、タピオカとはなんだ? 何を意味する?」
「もちもちとした黒くて小さい粒状の食べ物です」
タピオカ。もちもちとした黒くて小さい粒状の食べ物……か。
どういう味がするのか非常に気になるな。
一度でもいいからぜひとも食してみたい。
「うむ」
どうやらこの3000円の使い道は決まったようだ。




