黒猫を追って
「そのクエスト、あたしも参加させてほしいにゃあ」
猫探しを手伝ってくれると言ってくれたネムルだったが、細工屋のクエストと知ると、クエストの参加を申し出てきた。その申し出にケイディア達は顔を見合わせる。
「まあ、手伝ってくれるってんなら、断る理由も無いが……構わないか?」
「わたしはいいよー」
「俺も構いませんけど、クエストの途中参加ってできるんですか?」
「……どうだろうな」
言い出したネムルのほうを見やるが、ネムルも首をかしげている。
「なんなら、クエストの発生条件とかなら教えられるが」
「聞けばいいんじゃない?ヘルプ、クエストの途中参加について」
『本クエストは途中参加可能です』
『クエスト進行中にパーティメンバーの変更があった場合、クエストクリア時点で参加しているメンバーに報酬が支払われます。注意点として、途中参加の場合もクリア扱いになり、一部のクエストには再度受けることができないものがあるため、クエストの一部を見る機会を失う場合があります』
フローデの声に呼応してヘルプのアナウンスが表示された。
「えーっと?クエストの冒頭が見えない場合があるってことかな?」
「まあ、いけるってことだな。それでいいなら」
「いいにゃ。それじゃあ、よろしくにゃ」
ネムルがそう言うと、ケイディア達の前に『ネムルがパーティに参加しました』とポップアップが表示された。
ランドクリエイトオンラインでは、ある程度共に行動したり、会話内容から自動的にパーティが形成される。
「にゃあ、前の町でクリアしたんにゃけど、にゃぜかこっちではできにゃかったにゃ」
「合言葉が違ったのかもね。……あれ?でも」
「ネムルさんは猫探しは発生しなかったんですね」
「別の合言葉ならオウカのじいさんが話しかけてくるのかと思ったが、そうでもないのか」
オウカのじいさんと知り合いなのがフラグなのかもな、というカマセーヌに、ケイディアも同意して頷いた。
少しの間にゃあにゃあと鳴き続ける猫から話を聞いていたネムルだったが、有力な情報を得たようで、ケイディア達に振り向き、この子が知ってるみたいだと、抱きかかえた一匹の三毛猫を指して言う。
ネムルの膝上に乗っていた三毛猫は地面に下りると空き地の奥に向かって歩き出した。
「ついて来いって言ってるにゃ」
猫の後について空き地の奥に歩いていった4人だが、見る限り何も無い。
その三毛猫はケイディア達が見ている前で、ヒョイと塀に飛び乗り、そこから軽々と2階建ての建物の屋根の上まで駆け上がった。
そしてネムルもそのあとを追い軽々と屋根の上まで登ったかと思うと、カマセーヌもその巨体に見合わぬ動きでヒョイヒョイと屋根の上まで登って行った。
ケイディアも後に続こうと塀に手をかけ登ろうとするが、
「よっ、と……あ、ダメだ」
カマセーヌほど体が上がらない。もともと圭馬は運動が得意なほうではない。自分の背丈ほどある塀によじ登ることは叶わなかった。
「……無理そうなら魔法使えよ」
上から様子を見ていたカマセーヌがそう声をかけてくる。
フローデのほうを見ると、自分より高い壁を魔法無しで登る気はないらしく、魔道具である本をすでに構えていた。
「そうします……。『ハイジャンプ』」
「『ウイングブーツ』」
『ハイジャンプ』の魔法でケイディアは一気に跳び上がり屋根の上に着地する。
一方のフローデは、魔法を使い能力を向上させたようで、カマセーヌ達と同じルートをピョンピョンと軽快に跳んで追いついてきた。
「先輩、今のも風属性魔法ですか?」
「『ウイングブーツ』は『フェザーステップ』と『ハイジャンプ』の合成……みたいなものかな」
正確にはちょっと違うけどね、とフローデは説明する。
『ハイジャンプ』が一回きりの跳躍なのに対し、『ウイングブーツ』は一定時間の移動速度と跳躍力を上昇させる魔法である。おまけに落下速度と落下ダメージを軽減させる効果もついてくる。
フローデの説明を聞き終えると、ケイディアの視界に『ウイングブーツ』を習得したことが表示された。
「覚えた?なら多分使っておいた方がいいと思うよ」
「そうですね。『ウイングブーツ』」
登った先、先導する三毛猫は並ぶ建物の屋根の上を移動するつもりらしい。4人とも屋根の上に上がってきたことを確認するとピョンピョンと身軽に走っていく。
建物が密集しているが隙間がないわけではない。フローデのアドバイス通りにケイディアは『ウイングブーツ』を発動させた。
「お二人もいりますか?」
「……いや、感覚が変わるほうが手間そうだ」
「あたしも必要ないにゃ。……準備できたかにゃ?じゃあ行くにゃ」
ネムルを先頭に、ケイディア達は三毛猫のあとを追いかけ始めた。




